
この記事では、補助金で取得した設備や建物に課される「処分制限」について、対象となる財産と期間、処分にあたる行為、処分するときの手続きと納付の考え方を整理します。売却、他事業への転用、担保設定など、導入後の経営判断に関わる注意点を、法律と令和7年度補正・令和8年度の公募要領をもとに解説します。
処分制限とは何か
補助金で取得した財産は、受け取った事業者の資産になりますが、自由に扱えるわけではありません。「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(以下、補助金適正化法)第22条は、補助事業により取得し、または効用の増加した政令で定める財産を、承認を受けないで補助金の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、または担保に供してはならないと定めています。
同法施行令第13条は、対象となる財産として、不動産、船舶・航空機など、それらの従物、機械および重要な器具で各省各庁の長などが定めるもの、その他特に必要があるとして定めるものを挙げています。施行令第14条では、補助金の全額に相当する金額を納付した場合や、財産の耐用年数などを勘案して定める期間を経過した場合には、制限が適用されないとしています。
実際の対象財産と期間は、各補助金の交付規程と公募要領で具体的に定められます。
対象となる財産と制限期間
代表的な制度の定めを見ると、次のとおりです。
新事業進出・ものづくり補助金(令和8年度 第1回)
- 取得価格または効用の増加価格が単価50万円(税抜き)以上の機械・器具・その他の財産
- 期間は耐用年数省令を準用
- 事業計画期間の終了後も、法定耐用年数を経過するまで制限が続く
省エネ・非化石転換補助金(令和7年度補正)
- 補助金で取得または効用の増加した財産
- 処分制限期間は導入した機器等の法定耐用年数
- 処分前にSIIの承認が必要
法定耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で資産の種類ごとに定められています。
注意したいのは、処分制限期間が補助事業の報告期間より長いことが多い点です。新事業進出・ものづくり補助金の公募要領では、事業計画期間の終了後であっても、法定耐用年数を経過するまでは処分に制限が課されると明記されています。
「処分」にあたる行為
処分というと売却を思い浮かべがちですが、対象はもっと広く定められています。SIIの公募要領では、処分を「補助金の交付目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、廃棄し、又は担保に供すること」としています。
新事業進出・ものづくり補助金では、取得財産は原則として「専ら補助事業に使用」する必要があり、既存事業など補助事業以外で用いた場合は目的外使用と判断されるとしています。補助事業で取得した建物を不動産賃貸などに転用することは一切認められないとも明記されています。また、事業計画期間中に、補助対象外となる事業者や大企業へ事業承継することも目的外使用に該当するとされています。
処分するときの手続きと納付
やむを得ず処分制限期間内に処分する場合は、事前に事務局の承認を受ける必要があります。
- 事務局に相談処分の内容と理由を整理
- 承認申請処分の前に申請する
- 承認納付額などの条件が示される
- 処分と納付条件に従い処分・納付する
新事業進出・ものづくり補助金の公募要領では、処分する場合は、残存簿価相当額または譲渡額等により、当該処分制限財産に係る補助金額を限度に納付しなければならないとしています。SIIの公募要領も、処分の際に補助金の返還が発生する場合があるとしています。承認を受けずに処分した場合は、交付決定の取消しと返還の対象になり得ます。
担保設定に関する注意
金融機関から融資を受ける際に、補助金で取得した建物や設備を担保に入れたいという場面があります。新事業進出・ものづくり補助金の公募要領では、処分制限財産である建物等に抵当権などの担保権を設定することは「担保に供する処分」に該当し、原則として認められないとしています。
ただし、補助事業の遂行に必要な資金調達をする場合に限り、担保権実行時に納付することを条件に認められ、その場合も事前に事務局の承認が必要です。根抵当権の設定は認められず、仮登記や登記留保も本登記と同様に扱われます。融資の条件を金融機関と協議する前に、これらの制約を確認しておく必要があります。
導入後に起こりやすい場面
- 工場や店舗の移転・閉鎖で設備を移設・売却したい
- 故障や性能向上のため、耐用年数内に新しい機器へ入れ替えたい
- 補助事業で導入した設備を既存事業にも使いたい
- 関係会社やグループ内で設備を移したい
- 事業譲渡やM&Aで設備ごと事業を引き継ぐ
いずれも処分や目的外使用にあたる可能性があります。判断に迷う場合は、行動する前に事務局へ相談することが大切です。補助事業の資料は、SIIの公募要領では事業完了の年度終了後5年間の保存が求められており、処分の相談時にも必要になります。
処分制限の内容は制度・年度ごとに定められます。必ず交付規程と最新の公募要領で確認してください。
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参考資料
- e-Gov法令検索 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律
- e-Gov法令検索 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令
- 中小機構 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)
- SII 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)公募要領(4次公募)
- e-Gov法令検索 減価償却資産の耐用年数等に関する省令
本記事の内容は2026年10月21日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



