
この記事では、補助金を使ってEV充電器を設置し、充電サービスとして収益を得ようとするときに、なぜ収支が赤字になりやすいのかを整理します。補助金が対象とする費用と対象外の費用、電気の基本料金の仕組み、国の指針が示す稼働率と料金制度の課題を、公的資料をもとに説明します。
補助金が対象とするのは「設備と工事」
国の充電インフラ補助金(令和7年度補正)の補助対象経費は、充電設備の購入費と設置工事費です。手引きでは、充電設備は既存の駐車スペースを活用することとされ、駐車スペースが舗装されていない場合でも舗装費用は補助対象外です。また、申請者は設置する土地の使用権限を持っている必要があり、借地の場合は土地所有者が5年間の設置を許諾したことを証する書類が求められます。
つまり、充電器を置くための土地を取得する費用は補助の対象に含まれていません。設備と工事の負担が補助で大きく減っても、土地を買って充電事業を始める場合は、その取得費を充電料金の収入で回収しなければなりません。設置後は5年間の保有義務もあり、採算が合わないからといってすぐに撤去することもできません。
充電事業のお金の流れ
補助金は導入時の設備費・工事費に充てられ、毎月の電気料金・保守費・通信費は事業者の負担として残る。
収入は利用者が支払う充電料金だけで、利用回数に比例します。一方、支出には電気料金(基本料金と使った量に応じた従量料金)、保守費、通信・決済システムの費用、土地代などがあり、その多くは利用が少なくても毎月かかります。この構造が、稼働率の低い場所で赤字になりやすい理由です。
基本料金が重くなる仕組み
高圧で電気を受ける事業所の契約電力は、多くの場合「実量制」で決まります。東京電力エナジーパートナーの説明では、契約電力は当月を含む過去1年間の各月の最大需要電力(30分ごとの平均使用電力のうち月間で最も大きい値)のうち最も大きい値です。
急速充電器は出力が大きく、令和7年度補正の国の補助金の第2期では、急速充電の申請1件当たりの平均出力は84.24kWでした。こうした設備を同時に使うと最大需要電力が上がり、その値が以後1年間の基本料金の基準になります。利用が少ない月でも、一度上がった基本料金は下がりません。
経済産業省の「充電インフラ整備促進に向けた指針」(2023年10月)も、充電器の高出力化に伴い電気料金の基本料金の負担が増加していると指摘し、エネルギーマネジメントの促進や蓄電池付き充電器の導入支援などの対策を挙げています。
稼働率と料金制度の課題
指針は、2030年までに急速充電器3万口を含む充電インフラ30万口の整備を目指すとともに、急速充電器の平均出力を80kWまで引き上げる方向を示しています。高出力化は利用者の利便性を高める一方、事業者にとっては基本料金の負担が増える方向に働きます。
同じ指針では、高速道路であっても稼働率が高い充電器はごく一部で、大半は稼働率が10%に満たない状況だとしています。高速道路ですらそうである以上、一般の店舗や駐車場に置く充電器の稼働率は、立地によって大きくばらつくと考えるべきです。
料金制度については、充電した電力量(kWh)に応じた従量制課金について、2025年度からのサービス実現を目指すとされ、場所によっては時間制課金や両者の組み合わせが適しているとして、課金方法は事業者の方針を尊重するとされています。指針はまた、無料や電気料金より割安な価格で提供されている充電器について、補助金による支援が必要か精査が必要だとしており、補助金で設置する充電器でも利用者に適正なコスト負担を求める考え方が示されています。
自治体の運営費支援も「補てん」にとどまる
東京都は令和8年度、商業施設や宿泊施設の公共用充電設備を対象に運営費を支援しています。超急速・急速充電設備の保守費(上限40万円、最大3年)、電気の基本料金(超急速は上限334万円、急速は上限66万円、最大8年)、出力6kW以上の設備の土地使用料(上限62万円、最大8年)などです。基本料金の助成のうち半分は、再エネ電力の割合に応じて決まります。
基本料金や土地使用料が助成の対象になっていること自体が、これらが充電事業の大きな負担であることを示しています。ただし、これは期間と上限のある支援で、土地の取得費を対象とするものではありません。
赤字を小さくするための考え方
- 立地と稼働率滞在時間が長い目的地か、通過する経路か
- 出力と台数必要以上の高出力は基本料金を押し上げる
- 電力の制御デマンド制御や出力制限で最大需要電力を抑える
- 土地の確保購入ではなく既存の駐車場や賃借を活用
- 自社利用との兼用社用車の充電と組み合わせて稼働を確保
国の補助金では、契約電力を超えないようデマンドを監視・制御する機器の設置工事も補助対象の工事項目に含まれています。社用車の充電を主目的とし、空いている時間帯を来客や地域に開放するといった計画は、充電サービス単独より稼働を確保しやすくなります。設置場所の考え方は充電器の設置場所の選び方をご覧ください。急速充電器が本当に必要か、普通充電器で足りるかを、社用車の走行距離と駐車時間から確かめることも、基本料金を抑える第一歩です。
まとめ
充電器の補助金は設備と工事の負担を大きく減らしますが、土地の取得費は対象外で、毎月の基本料金や保守費は事業者に残ります。高出力の充電器は最大需要電力を押し上げ、利用の少ない月にも基本料金がかかり続けます。補助金の額ではなく、稼働率と基本料金を前提にした収支で判断することが重要です。条件は年度ごとに変わるため、最新の公募要領も確認してください。
タンソーマンGXでは、充電設備の補助金について、収支の前提整理と制度選定から申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- 次世代自動車振興センター 令和7年度補正 申請の手引き 充電設備(第1期・第2期)
- 次世代自動車振興センター 充電設備導入補助金R7年度補正予算第2期募集結果の公表(2026年9月29日)
- 経済産業省「充電インフラ整備促進に向けた指針」(2023年10月)
- 東京都 令和8年度充電設備普及促進事業 報道発表(2026年3月30日)
- 東京電力エナジーパートナー 契約電力の決定方法(実量制)
本記事の内容は2026年10月21日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



