
この記事では、補助金の「補助率」から実際の自己負担額(手出し)を見積もる考え方を整理します。補助率をそのまま総額に掛けると、手出しを小さく見積もりがちです。補助対象経費の範囲、上限額、消費税、支払いの時期という4つの点から、令和8年度に公募中・公募済みの制度の公募要領に沿って説明します。
補助率は「補助対象経費」に掛ける割合
補助率とは、補助対象経費のうち補助金で賄われる割合のことです。「補助率1/2」は、工事や購入にかかった総額の半分ではなく、公募要領で対象と認められた経費の半分という意味です。
したがって、補助金額は次の順に絞り込まれます。
- 支払総額見積書の税込合計
- 補助対象経費対象外の経費と消費税を除く
- 補助率を掛ける1/2、1/3など制度と企業規模で異なる
- 上限・下限と比べる上限を超えた分は出ない
- 確定検査で精査実績に基づき最終額が決まる
手出しは「支払総額−補助金額」です。最初の段階で対象外になる経費が多いほど、補助率が同じでも手出しは大きくなります。
制度ごとの補助率の違い
補助率は制度、申請枠、企業規模によって異なります。代表的な制度の公募要領に示された補助率を並べると次のとおりです。
中小機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」公募要領(第1回)、同「中小企業省力化投資補助事業(一般型)」公募要領(第8回)、SII「令和7年度補正 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)」公募要領(4次公募)より作成。特例の適用で補助率が上がる場合があります。
中小機構の2制度では、最低賃金の引上げに関する特例を受けると、中小企業の補助率が1/2から2/3に上がる仕組みがあります。一方、省エネ補助金の設備単位型(従来枠)は、中小企業も大企業も1/3以内です。補助率は年度や公募回で見直されることがあるため、申請する回の公募要領で必ず確かめてください。
補助対象経費から外れる費用
手出しを見積もるうえで最も影響が大きいのが、補助対象にならない経費です。詳しくは補助対象経費の範囲で解説していますが、自己負担の計算では次の点を押さえておきます。
- 工事費が対象外の制度がある:SIIの設備単位型(従来枠)は、補助対象経費を「設備費」のみとしています。設計費、運搬費、撤去・廃棄費、据付費・工事費、配線・配管などの材料費は対象外です。
- 消費税は対象外:中小機構の2制度もSIIも、消費税・地方消費税を補助対象経費から除いて算定するよう定めています。
- 交付決定前の経費は対象外:事前調査費や交付決定前の契約・発注に係る経費は対象になりません。
- 最低価格が上限:SIIは原則3者以上の価格競争等による最低価格を補助対象経費の上限とします。
同じ「設備更新」でも、工事費の比率が高い案件ほど、総額に対する補助金の割合は小さくなります。
計算例で見る実際の手出し
ここでは仮の例として、中小企業がSIIの設備単位型(従来枠)で設備を更新する場合を考えます。金額は説明用の数字です。
- 設備費 900万円補助対象。補助率1/3以内で補助金は最大300万円
- 工事費 400万円この制度では対象外。全額を自社で負担
- 消費税 130万円対象外。課税事業者は仕入税額控除で取り戻せる
金額は仮定です。補助金額は確定検査の結果で決まります。
この例では、補助金は最大300万円です。支払総額1,430万円から差し引くと、手出しは1,130万円になります。課税事業者であれば消費税分は消費税の申告で控除できるため、実質的な負担は税抜の1,300万円から300万円を引いた1,000万円です。「補助率1/3なら負担は3分の2」と考えると、税抜総額の3分の2(約867万円)と見込んでしまい、130万円以上ずれます。
中小機構の制度では、従業員数に応じた補助上限額も効きます。たとえば新事業進出・ものづくり補助金の革新的新製品・サービス枠では、従業員6〜20人の上限額は1,000万円(特例適用時1,250万円)です。補助対象経費が3,000万円で補助率1/2なら計算上は1,500万円ですが、受け取れるのは上限の1,000万円までです。
見落としやすい3つの調整
1. 交付申請や確定検査での減額
新事業進出・ものづくり補助金の公募要領は、補助対象経費の精査は交付申請時に行い、採択されても計上した経費がすべて対象になるとは限らないと明記しています。実績報告後の確定検査でも、帳簿や取得財産が確認できない経費は対象外になります。資金計画では、申請額どおり受け取れない場合も想定しておきます。
2. 補助金を受け取るまでの立替え
補助金は事業完了後の後払いです。手出しの金額とは別に、いったん支払総額の全額を用意する必要があります。資金の組み立ては補助金は後払い つなぎ資金と資金繰りの組み立て方をご覧ください。
3. 自己負担を実質的に減らす販売方法の禁止
省力化投資補助金(一般型)の公募要領は、販売店などが補助事業者の自己負担額を減額・無償にするような販売方法(実質的な還元)を、補助金交付の目的に反する行為として扱うとしています。「手出しゼロ」をうたう提案には注意が必要です。
まとめ
実際の手出しは、補助率だけでは決まりません。補助対象経費の範囲、上限額、消費税、減額の可能性を一つずつ当てはめ、支払総額から補助金額を差し引いて見積もります。工事費が対象外の制度や上限額に届く大型案件では、補助率から受ける印象より負担が大きくなる点に注意してください。
タンソーマンGXでは、省エネ設備や太陽光・蓄電池の投資について、使える制度の選定と補助金額・自己負担額の試算から、申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- 中小機構 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回・1.3版)
- 中小機構 中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回)
- SII 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)公募要領(4次公募)
本記事の内容は2026年10月22日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



