
この記事では、補助金の採択・交付決定を受けたあとに必要となる「実績報告」と「額の確定」の手続きを整理します。事業の完了とはいつか、報告の期限、確定検査で確認される内容、補助金の入金後も続く義務について、令和7年度補正・令和8年度の公募要領をもとに解説します。
実績報告と額の確定とは
補助金の手続きは、交付決定を受けて終わりではありません。「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(以下、補助金適正化法)第14条は、補助事業が完了したときに、事業の成果を記載した実績報告書を提出することを求めています。
これを受けて、国や事務局は書類の審査と必要に応じた現地調査を行い、事業の成果が交付決定の内容と条件に適合するかを確認したうえで、交付すべき補助金の額を確定し、事業者に通知します(第15条)。この確定した額に基づいて補助金が支払われます。交付決定で示された金額は上限であり、実際に受け取る額は額の確定で決まります。
交付決定から入金までの全体像
- 事業完了設置・検収・支払いが完了
- 実績報告完了日から30日以内など
- 確定検査書類検査と現地調査
- 確定通知・請求確定通知書を受け精算払請求
- 入金と成果報告入金後も報告が続く
SII 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)4次公募の公募要領をもとに作成。
中小機構の「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」でも、実績報告、確定検査(交付額の確定)、補助金の請求、補助金の支払、事業化状況報告という順番が示されています。名称は制度によって異なりますが、流れはおおむね共通しています。
「事業完了」の時点と報告の期限
実績報告の期限は、事業の完了日から数えることが多いため、何をもって完了とするかを正確に押さえておく必要があります。
- 省エネ・非化石転換補助金(令和7年度補正):導入した補助対象設備の検収と、補助対象経費の支払いが完了する日を事業完了日とします。4次公募の単年度事業は原則2027年1月31日までに完了させ、実績報告は事業完了日から30日以内または2027年2月5日のいずれか早い日までに提出します。既存設備は原則として事業完了日までに撤去することとされています。
- 新事業進出・ものづくり補助金(令和8年度 第1回):補助事業実施期間内に契約、納入、検収、支払等のすべての手続きを完了する必要があります。補助事業を完了したときは、その日から起算して30日を経過した日または補助事業完了期限日のいずれか早い日までに実績報告書を提出しなければならず、期限までに提出されなかった場合は交付決定が取り消されます。
完了期限の直前に支払いを終えると、実績報告までの準備期間がほとんど残らないことがあります。書類は事業期間中から少しずつ整えておくのが現実的です。
実績報告で確認される主な内容
実績報告では、交付決定どおりに事業を行い、経費を適正に支払ったことを証拠書類で示します。公募要領に示された主な確認事項は次のとおりです。
- 支払いの証拠:新事業進出・ものづくり補助金では、補助対象経費の支払いは銀行振込の実績で確認され、現金払い、相殺、手形、ファクタリングなどによる支払いは対象外です。
- 取得財産と帳簿:同補助金では、取得財産や帳簿類が確認できない場合、その財産に係る金額は補助対象になりません。
- 経費の内容を示す資料:100万円(税抜き)以上のシステム構築費を計上する場合は要件定義書などの提出が、広告宣伝・販売促進費は成果物の写真等の提出が求められます。
- 保険・共済への加入:同補助金では、取得した建物や設備に自然災害の損害を補償する保険または共済をかけ、実績報告時に加入を示す書類を提出する必要があります。
- 着工前の状態:SIIの省エネ・非化石転換補助金では、事業の途中で着工前写真の提出や口座登録などの中間報告が求められます。
確定検査で額が減る主なケース
額の確定では、報告された経費のうち補助対象と認められるものだけが計算の基礎になります。公募要領の記載から、減額につながりやすい場面を整理すると次のとおりです。
- 期間外の契約・支払い交付決定前の発注、事業期間後の支払い、期間内に終わらない分割払い
- 確認できない経費証拠書類や帳簿、現物で確認できないもの
- 認められない支払方法現金、相殺、手形など制度が認めない方法での支払い
- 交付決定と異なる内容承認を受けずに行った経費配分や内容の変更
報告内容が交付決定の条件に適合しない場合、補助金適正化法第16条により、適合させるための措置を命じられることもあります。交付決定後に内容を変える必要が生じたときは、事前に事務局の承認を受けることが前提です。新事業進出・ものづくり補助金の公募要領でも、経費の配分や内容の変更、事業の中止・廃止には事前承認が必要とされています。
実績報告の前後には、原則として事務局による実地検査が行われます。同補助金では、正当な理由なく検査への協力を拒否した場合は交付決定を取り消すとしています。
入金後も続く義務
補助金が支払われたあとも、いくつかの義務が続きます。
- 事業化状況の報告:新事業進出・ものづくり補助金では、補助事業を完了した年度の終了後を初回として、以降5年間にわたり計6回、事業化等の状況を報告する必要があります。報告がない場合や虚偽の場合は交付決定の取消しと返還の対象になり、賃上げ要件などの未達が認められた場合も返還を求められます。
- 成果報告:SIIの省エネ・非化石転換補助金でも、補助金の支払い後に事業の成果報告が求められます。
- 書類の保存:両制度とも、証拠書類などを一定期間(補助事業の完了または補助金受給の年度終了後5年間)保存することが求められています。
- 処分制限:取得した設備は法定耐用年数の間、承認なく売却・転用などができません。詳しくは補助金で取得した設備の処分制限をご覧ください。
同補助金の公募要領では、補助金の支払い以降も会計検査院や事務局が抜き打ちで実地検査に入ることがあるとしています。報告の期限や様式は制度・年度ごとに異なるため、必ず交付規程と最新の手引きで確認してください。
タンソーマンGXでは、交付決定後の発注管理から実績報告書の作成、確定検査への対応、その後の成果報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- e-Gov法令検索 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律
- SII 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)公募要領(4次公募)
- 中小機構 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)
本記事の内容は2026年10月21日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



