
補助金の申請は、公募要領の読み込みから事業計画の作成、採択後の実績報告まで手間がかかるため、外部の専門家やコンサルティング会社に依頼する企業も少なくありません。この記事では、外部に依頼するときの一般的な報酬の形と、契約前に確かめておくべき点を、公募要領や法令の記載をもとに中立的に整理します。
外部に依頼できる業務の範囲
補助金の手続きは、大きく次の段階に分かれます。依頼先によってどこまで引き受けるかが異なるため、見積を比べる前に、範囲をそろえておくことが重要です。
- 制度の選定使える制度と要件の確認、スケジュールの作成
- 申請書類の作成支援事業計画・省エネ計算・見積の整理
- 採択後の手続き交付申請、計画変更、中間報告
- 実績報告・額の確定証憑の整理、事務局からの照会対応
- 事業化・成果報告数年間の報告義務への対応
採択されて終わりではなく、交付決定後の手続きや実績報告で書類の不備があると、補助金が減額されたり支払われなかったりします。依頼範囲が「申請まで」なのか「実績報告まで」なのかは、費用の比較で最も差が出る部分です。
報酬の一般的な形
補助金申請の支援の報酬は、事業者ごとに自由に設定されており、公的な基準額はありません。一般的には次のような組み合わせが見られます。
- 着手金:契約時や作業開始時に支払う固定額。不採択でも返金されないことが多い費用です。
- 成功報酬:採択(または交付決定・補助金の入金)を条件に支払う費用。補助金額に対する割合で定めることが一般的です。
- 実績報告などの事後の手続き費用:採択後の交付申請や実績報告の支援を別料金とするか、成功報酬に含めるかは依頼先によって異なります。
- 顧問契約・月額:複数の制度を継続的に支援する場合に、月額で契約する形もあります。
注意したいのは、補助金の対象経費の扱いです。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領では、事業計画書の作成支援者に対する経費は専門家経費の対象外とされています。申請支援の報酬は補助金で賄えず、自己負担になると考えておくのが安全です。
依頼先の種類と特徴
補助金の申請を支援する主体には、いくつかの種類があります。どの主体にも長所と注意点があるため、依頼したい範囲に合わせて選びます。
- 行政書士:官公署に提出する書類の作成を業として行える国家資格者です。書類作成を有償で依頼する場合の基本的な依頼先になります。
- 認定経営革新等支援機関:中小企業の経営を支援する機関として国が認定した税理士、中小企業診断士、金融機関などです。事業計画の策定支援を受けられます。
- 設備メーカー・販売店・工事会社:設備の仕様や省エネ効果の計算に詳しい一方、制度によっては支援者からの見積・発注が認められない場合があります。
- 公的な支援機関:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領は、会社全体の事業計画の策定支援について、よろず支援拠点などの公的支援機関の相談窓口の利用を勧めています。
公募要領が注意を促していること
中小機構が公表した「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の公募要領(第1回、公募期間は令和8年6月29日から10月30日まで)には、外部支援者を活用する際の注意が具体的に書かれています。
- 外部支援者の助言を受けることは差し支えないが、事業計画は申請者自身で作成すること。作成自体を申請者以外が行った場合は、不採択・採択取消・交付決定取消となる。
- 事業計画作成支援者がいる場合は、電子申請システムに支援者名、支援内容、報酬(予定)額、契約期間を記載すること。記載がない場合は不採択や取消の対象になる。
- 口頭審査には申請事業者自身が対応し、支援者やコンサルタントの同席は認められない。
- GビズIDとパスワードを外部支援者に開示することは、GビズID利用規約に反する。
同じ公募要領では、不適切な行為の例として、サービス内容とかけ離れた高額な成功報酬の請求、金額や条件が不透明な契約、強引な働きかけ、経費の水増しなど虚偽記載の教唆、支援者名を記載しないよう求めることなどが挙げられています。支援者が認定経営革新等支援機関(国が認定する中小企業の支援機関)である場合は、機関名の公表や認定取消に至る可能性があるとされています。
行政書士法の改正と書類作成の依頼
報酬を得て官公署に提出する書類を作成する業務は、行政書士法で行政書士の業務と定められています。令和8年1月1日に施行された改正行政書士法では、行政書士でない者の業務の制限について「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が加えられ、その趣旨が明確化されました。違反に対する両罰規定も整備されています。
コンサルティング料や成功報酬といった名目であっても、書類の作成を有償で代行してもらう場合は、依頼先がどの資格に基づいて業務を行うのかを確認しておくことが望まれます。個別の業務が該当するかどうかは、依頼先や行政書士会に確認してください。
契約前に確かめるべきこと
見積額だけで比べず、次の項目を契約書や見積書で確認することをおすすめします。
- 不採択のときの扱い:着手金は返金されるか、次回公募での再申請に追加費用がかかるか。
- 「成功」の定義:成功報酬の発生時点が採択なのか、交付決定なのか、補助金の入金なのか。採択後に辞退や減額が起きた場合の扱い。
- 報酬の計算の基準:申請額に対する割合か、確定した補助金額に対する割合か。実績報告で減額された場合に報酬も減るか。
- 実績報告まで含むか:交付申請、計画変更、実績報告、事業化状況報告などの支援が含まれるか、別料金か。
- 認定支援機関の要否:申請する制度で認定支援機関や金融機関の確認書が必要か。必要な場合、誰が手配するか。
- 工事・設備の発注先との関係:支援者が設備の販売や工事も手がける場合、制度によっては支援者からの見積・発注が認められないことがある(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、事業計画作成支援者やそのみなし同一事業者への発注・見積は認められません)。
まとめ
補助金申請を外部に依頼する場合は、報酬額だけでなく、依頼範囲、不採択時の扱い、成功報酬の発生条件を契約書で明確にすることが大切です。また、事業計画の内容に責任を持つのは申請者自身であり、制度によっては支援者の情報や報酬額の申告が求められます。公募要領の注意事項を読んだうえで、信頼できる依頼先を選んでください。
タンソーマンGXでは、省エネ・再エネ設備の補助金について、制度の選定から申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- 中小機構 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)
- 衆議院 行政書士法の一部を改正する法律案要綱(第217回国会 衆法36)
- 総務省 行政書士制度
- SII 設備単位型 公募要領(令和7年度補正・4次公募用)
- GビズID
本記事の内容は2026年10月21日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



