
これから低圧系統用蓄電池の案件を探すなら、東京・東北・九州を優先候補に入れることをおすすめします。東北に用地や施工会社とのつながりがあるなら、東北から検討してよいと考えます。
東京では複数社の開発・実証事業、東北の候補である福島県内では施工会社と運用会社が連携する100カ所の計画、九州では開発から運用までをまとめる500拠点規模の計画が確認できます。相談先と事業体制が具体的に見えることが、この3エリアを優先して比較する理由です。
中部は比較候補。関西は増強不要の地点に絞って検討。沖縄は需給調整市場を主な収入源とする事業の候補から外す。 全国10エリアを調べたうえでの当社の判断は、ここにあります。
本記事のおすすめは、公開資料で確認できる案件形成と施工・運用体制をもとにした「新規参入時に優先して比較する候補」です。東京・東北・九州の間に、一律の順位は付けません。地域別の実際の手取り収益は確認できていません。購入する案件は、接続工期、工事費、運用条件を揃えて判断します。
高圧・特別高圧については、前回記事「系統用蓄電池を全国10エリアで比較」で整理しました。今回は、PCS出力49.5kWや49.9kWの独立した低圧系統用蓄電所を中心に、どこから案件を探すべきかを説明します。
東京:複数の開発・実証体制を比較したい場合の候補
東京を優先候補に入れる理由は、案件を組成する動きと、運用までの役割分担を公表した事業が、複数確認できることです。
イーゲートは2026年9月10日、東京電力PG管内で400区画・約19.8MWの発電量調整供給契約を申し込んでいると発表しました。用地開発を進め、アグリゲーターや共同開発パートナーを募集しています。イーゲートの公式発表
GATESは、同じ東京電力管轄で28カ所、各PCS49.5kW・蓄電容量200kWhの実証事業を案内しています。加瀬倉庫の用地を使い、開発・申請、施工・保守、機器供給、アグリゲーションを分担する体制を示しています。GATES・低圧系統用蓄電池実証事業
東京で優先したいのは、接続先が定まり、施工と運用の担当者まで決まっている案件です。 初めて参入するなら、このように全体の体制を確認できる案件から見積もりを取るのがよいと考えます。ここでいう東京エリアは、東京都内に限らず東京電力PGの供給区域です。
400区画は申込数で、28カ所は実証事業の計画です。これらは、全件が稼働済みであることや、東京の利益が他地域より高いことを示していません。東京でも、個別地点の連系予定日と費用を確認することが選定条件になります。
九州:一括提供の案件を具体的に検討できる
九州を優先候補に入れる理由は、土地、機器、制御、市場運用、保守をまとめた事業の提案が公表されていることです。各分野を自社だけで手配することが難しい参入者には、比較する価値があります。
RENON POWERは2026年6月18日、九州で500拠点規模の低圧系統用蓄電池プロジェクトを始動したと発表しました。PCS49.9kW、容量157〜200kWhを採用し、土地開発・EMS・アグリゲーション・機器供給・O&Mを統合した体制を案内しています。100拠点相当は販売先との契約締結済み、連系開始は2027年初旬の予定です。RENON POWERの公式発表
九州は、東京の案件と「総投資額・連系予定日・運用受託料」を比較する候補にします。 500拠点の構想だけで購入を決めず、自分が取得する区画の接続手続きと工事工程まで確認します。100拠点という数字も販売契約であり、系統接続の完了数ではありません。
技術条件も選定に入ります。九州電力送配電は、系統へ逆潮流する低圧蓄電設備について、充放電時の出力変化速度の設定やPCS仕様の提出等を求めています。送配電会社の条件を満たし、参加する市場商品にも対応できる機器・制御構成かを運用事業者に確認します。九州電力送配電・契約申込案内
中部:地元の用地や施工体制があるなら比較候補
中部は、すでに用地や地域の施工事業者との関係がある場合に、東京・東北・九州と並べて見積もりを取る候補です。地元で用地・保守を確保できれば、その条件を総費用に反映させて比較できます。
中部では、Joe Allianceが2026年8月時点で、関与する低圧案件の系統連系申込提出済み概数を約40件と公表しています。具体的な申込事例はありますが、この一社の数字から中部全体の接続しやすさや競争の少なさまでは判断できません。Joe Alliance・低圧案件の進行状況
東北:地元の用地・施工体制があるなら、ここから検討する
東北も優先検討に入れるべきエリアです。特に用地や施工・保守の体制が東北にあるなら、東京や九州より先に具体的な見積もりを取ることをおすすめします。 地元で確保できる条件を活かし、接続予定日と総費用を確認できる案件から絞ります。
公開情報で注目するのは、福島県内の開発です。ふくしまエナジーとデジタルグリッドは、2026年9月8日に連携した低圧系統用蓄電所の受電開始を公表し、今後福島県内100カ所を束ねて運用する構想を示しました。施工と運用の担当が明確な点を、案件選びの判断材料にできます。デジタルグリッドの公式発表
ただし、最初に受電した地点の所在地・接続先は、この発表には明記されていません。100カ所も今後の計画です。県名だけで電力エリアを決めず、候補地の接続先と、その案件の進捗を確認します。
東北電力ネットワークは、低圧の系統連系と発電量調整供給契約について、それぞれの申込手続きを案内しています。販売会社には、放電側の連系手続き、充電側の供給契約、市場運用の受託がどこまで進んでいるかを確認します。東北電力ネットワーク・系統連系等の申込案内
東北を東京・九州より下位に置く根拠は、今回の資料では得られていません。 一方、福島県内の一つの開発体制から、東北全域の接続の容易さや収益の高さまで一般化することも避けます。
福島県内でも自治体ごとの条件が加わります。いわき市は、蓄電所導入のガイドラインで住民説明、騒音・低周波音、火災・災害対策、維持管理等への留意を求めています。用地価格の比較に加え、こうした対応の費用と期間も見積もりに入れます。いわき市・系統用蓄電事業者の皆様へ
関西:早期稼働を狙うなら、増強が必要な地点を外す
関西にも案件形成の動きはあります。Joe Allianceは2026年8月時点の関与案件の申込提出済み概数として、関西約240件を公表しています。これは施工完了数・稼働数ではありません。Joe Alliance・低圧案件の進行状況
一方、関西電力送配電は、低圧の系統用蓄電池でも、系統増強が必要なエリアでは工事完了まで4〜10年程度と案内しています。関西電力送配電・系統用蓄電池のお申込みについて
この条件に当たる地点は、早期に運用を始めたい事業の候補から外すのが妥当です。設備が小さく、土地が安くても、収入を得られる時期が数年先になれば事業計画が変わります。
関西で探すなら、増強不要で、個別の連系予定日と工事費を確認できる案件に絞ります。 関西全域が4〜10年待ちという意味ではありません。エリア名よりも、候補地点にこの条件がかかるかを先に確認します。
北海道・北陸・中国・四国:運用を引き受ける相手から確認する
この4エリアは、今回確認した公開資料だけでは、東京・東北・九州より先に勧める根拠が揃いませんでした。地元に用地がある場合は、低圧の独立型蓄電所を実際に受託する運用事業者と、具体的な接続案件を確保してから検討します。
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北海道: 北海道電力の低圧VPPにShizen Connectが採用された事例は、家庭用蓄電池等を活用する取り組みです。独立型低圧蓄電所の運用体制と実績を、別に確認する必要があります。Shizen Connectの公式発表
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北陸: GREEN CHORDは2027年1月以降の受付開始を案内しています。同社を使うなら、この受付時期を事業工程に入れます。他社を使う場合は現在の受託可否を確認します。GREEN CHORDのサービス案内
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中国: JTKによる中国5県の用地募集は確認できました。取得を検討する際は、募集された土地が接続・施工・市場運用のどの段階に進んでいるかを確認します。JTK・低圧系統用蓄電池の用地募集
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四国: GREEN CHORDの受付は北陸と同じく2027年1月以降です。徳島県に本社を置くワイヤーエナジーは低圧事業への参入を公表していますが、その情報だけでは四国内の独立型低圧蓄電所の稼働状況は分かりません。GREEN CHORD、ワイヤーエナジー・会社情報
サービス受付の予定は一事業者の都合です。地域全体の市場参加開始日とは区別して、使う事業者の条件を確認します。
沖縄:需給調整市場を主な収入源にするなら候補から外す
EPRXの需給調整市場は、沖縄電力の供給区域を対象外としています。EPRX・需給調整市場とは
したがって、他の9エリア向けの需給調整市場収入を前提にした独立型低圧蓄電所を検討する場合、沖縄は候補から外します。沖縄で事業化するには、別の契約・用途による収入源を先に定める必要があります。
収益は、各案件の接続条件と費用を揃えて比較する
本記事では、公開情報から相談先と事業体制を確認できる東京・東北・九州を優先候補としました。収益を評価する段階では、地域名に加えて、アグリゲーターの運用方法と費用条件が必要です。
EPRXは、需給調整市場では全国大で経済的な約定を行い、約定エリアを指定した入札は認めないと説明しています。連系線の空容量も約定に関係します。設置地域の電力需要や再エネ量だけで、手取り収益の順位を決めることはできません。EPRX・よくあるご質問
また、EPRXは商品ごとの上限価格と適用期間を公表し、2026年にも更新しています。長期間同じ単価で全量が約定する前提の試算は、その前提を見直して比較します。EPRX・上限価格
候補案件を比較する際は、最低限、次の3点を揃えます。
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接続条件: 個別地点の連系予定日、増強の要否、工事費負担金。
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運用条件: 運用事業者の受託可否、市場運用の開始予定日、参加商品、受託料と制御・通信の費用。
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手取り収支: 充電電力費、土地代、保守費等を差し引いた収支。約定量や単価が下がった場合の試算も用意する。
例えば、東京の案件に長い増強待ちと高額な工事費があり、中部の案件は接続工程が確定し総費用も低いなら、中部の案件を選びます。優先候補に入ることは、個別案件の条件を飛ばして購入する理由にはなりません。
結論:東京・東北・九州を比較し、地元の条件を活かす
低圧系統用蓄電池の案件探しは、東京・東北・九州を優先候補にします。東北に用地・施工・保守の体制があるなら東北から、複数社の開発・実証体制を比較したいなら東京から、一括提供の案件を検討したいなら九州から、見積もりを取ることをおすすめします。 中部に自前の用地や施工体制がある場合は、その条件を反映させた案件も加えます。
関西は増強不要の地点を選び、北海道・北陸・中国・四国は運用受託と接続案件を具体化してから検討します。需給調整市場を主な収入源に置く場合、沖縄は候補から外します。
そのうえで、最後は「いつ接続でき、いつ市場運用を始められ、費用を引いた後にいくら残るか」で決めます。これが、地域の動きから実際の案件選びにつなげる判断です。
調査基準日:2026年10月4日。企業発表の数字は、各発表時点の申込・計画を含みます。優先候補とする判断は公開情報をもとにした当社の見解です。地域別の実運用収支、個別地点の工事費・工期は今回の調査では取得していません。
※本記事は、株式会社タンソーマンGXの公式note(2026年10月4日掲載)からの転載です。noteで読む
