「最近、電気代が少し落ち着いてきた」
そう感じている企業も多いのではないでしょうか。
ところが、2026年11月から電気料金を取り巻く環境が再び大きく変わります。
北海道、東北、東京、中部、関西、中国、四国、九州、沖縄。
北陸を除く9つのエリアで、送配電網の利用料金である「託送料金」が見直され、それを受けて大手電力各社が相次いで電気料金の見直しを発表しています。
しかも今回は、それだけではありません。
国の高圧電力向け料金支援も、今回公表されている対象期間は2026年9月使用分までです。
つまり今秋は、
という2つの変化を確認したいタイミングです。請求額への反映時期や値上げ幅は、電力会社・料金メニュー・契約更新時期によって異なります。
工場、スーパー、ドラッグストア、病院、ホテル、物流施設、オフィスビルなど、高圧電力を利用する企業にとっては、一度現在の契約を確認しておきたいタイミングです。
結論:関西電力だけではない。全国規模の料金見直しです

今回の動きを「関西電力が値上げするらしい」と認識している方もいるかもしれません。
しかし、実際にはもっと広い話です。
2026年11月1日から、北陸を除く多数の送配電エリアで託送料金が見直されます。
それを受け、旧一般電気事業者も料金への反映を次々に発表しています。
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北海道:低圧・高圧・特別高圧を11月1日から見直し。北海道電力の案内
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東北・東京・中部・関西・中国・四国・九州:11月1日の託送料金見直しの対象。対象エリアの案内
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沖縄:11月1日から電気料金を見直し。沖縄電力の案内
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北陸:今回の託送料金見直しの対象外。
北海道電力は、低圧だけでなく高圧・特別高圧も2026年11月1日から見直すと明記しています。
東京電力エナジーパートナーも、高圧・特別高圧について託送料金の見直し内容を11月1日から電気料金へ反映します。
中部電力ミライズも、2026年11月1日からすべての料金メニューについて基本料金単価・電力量料金単価を見直します。
中国電力も託送料金変更に伴う料金見直しを案内しています。
九州電力も、すべての顧客を対象に託送料金の見直しを反映します。さらに高圧・特別高圧では、燃料費調整単価の算定方法まで変更されます。
各社の具体的な内容は、東京電力エナジーパートナー、中部電力ミライズ、中国電力、九州電力の公式案内で確認できます。
要するに、今回は一地域、一電力会社だけの話ではありません。
全国規模で「電気を届けるコスト」の見直しが起きているのです。
そもそも「託送料金」って何?

「託送料金」と聞いても、電力業界以外の人にはほとんど馴染みがないでしょう。
簡単に言えば、
電気を送るための“高速道路料金”
のようなものです。
電力会社を東京電力から新電力へ変更したとしても、東京にある工場へ電気を届けるには、東京電力パワーグリッドの送電線や変電所、電柱などを利用します。
そのネットワーク利用料を、小売電気事業者が送配電会社へ支払います。
これが託送料金です。
つまり、
東京電力と契約しているから払う料金ではありません。
新電力であっても送配電網を利用する以上、原則として負担するコストです。
そのため今回の託送料金上昇は、旧一電だけではなく、新電力各社のコストにも影響します。託送料金の説明(四国電力)
では、どれくらい上がるのか?

ここが一番気になるところでしょう。以下は高圧の平均託送料金(税抜)の例です。
例えば北海道電力ネットワークでは、高圧の平均託送料金が、
4.69円/kWh → 5.51円/kWh
となり、平均で0.82円/kWh上昇します。
中部電力パワーグリッドでも、
3.49円/kWh → 3.93円/kWh
と、平均で0.44円/kWh上昇します。
図には中国(4.62→4.96円/kWh)、関西(4.34→4.87円/kWh)、九州(4.19→4.79円/kWh)の例も掲載しています。
出典:北海道電力ネットワーク、中部電力パワーグリッド、中国電力ネットワーク、関西電力送配電、九州電力送配電。
ここで注意が必要です。
「年間1,000万kWh使っているから、0.82円を掛ければ820万円値上がりする」
と単純計算することはできません。
公表されているのはあくまで託送料金の平均単価です。
実際の請求額は、
契約電力、使用量、負荷率、基本料金、電力量料金、燃料費調整、市場価格調整、各電力会社の料金メニューなどによって変わります。
したがって、企業ごとの影響額を見るためには、実際の契約条件で試算する必要があります。
実は「託送料金」より見逃してはいけないものがある

今回、特に高圧電力を契約する企業に知っていただきたいのが、国の電気料金支援の終了です。
2026年夏、政府は高圧電力について、
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7月使用分:1.8円/kWh
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8月使用分:2.3円/kWh
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9月使用分:1.8円/kWh
の料金支援を実施しました。
資源エネルギー庁の公表内容では、今回の対象期間は9月使用分までです。「使用月」と「請求月」は同じとは限りません。請求書への反映時期は契約・検針日によって異なります。なお、特別高圧はこの国の支援の対象外です。
例えば、毎月100万kWhを使用する高圧施設で考えてみましょう。
9月使用分に適用されていた1.8円/kWhの支援だけでも180万円相当です。
年間1,000万kWh、5,000万kWhと使用する企業になれば、無視できる金額ではありません。
そのため、秋以降に請求書を見て、
「急に電気料金が上がった。電力会社が値上げしたのか?」
と思ったとしても、原因を分解して見る必要があります。
託送料金の変更なのか。
国の補助金終了なのか。
燃料費調整なのか。
市場価格調整なのか。
ここを分けて考えなければ、正しく比較できません。
例えば九州電力の2026年11月分の公表資料では、前月分の高圧の燃料費等調整単価には国の支援による1.8円/kWhの値引きが含まれていると説明されています。支援終了と燃料費の変動を分けて見ることが大切です。
つまり、
「11月に料金が上がった=全部、電力会社の値上げ」ではない。
ここは非常に重要です。
関西電力は少し話が違う
関西エリアの法人は特に注意が必要です。
関西電力は2026年11月1日から、高圧・特別高圧の標準メニューについて、
託送料金・発電側課金の変動を反映して基本料金・電力量料金等を改定
します。
さらに、燃料費調整、市場価格調整の前提諸元も見直します。関西電力の公式案内では、物価上昇等を反映した見直し後の単価等は、2026年11月1日以降に現在の契約が満了した後の新たな契約から適用するとしています。自社の契約がいつ更新され、どの改定がいつ適用されるかを確認してください。
したがって関西電力と契約している法人は、「託送料金がいくら上がったか」だけを見るのでは不十分です。
契約更新後の基本料金・従量料金・燃調・市場調整まで含めた総額比較を行う必要があります。
新電力も影響を受ける。でも、一律に同じ値上げではない
ここまで読むと、
「だったら旧一電をやめて新電力に変えればいいのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、託送料金については、電力会社を変更しただけでは基本的に逃れられません。
送配電ネットワークは同じものを使うからです。
だからこそ、電力会社を比較するときは、
“値上げする会社”と“値上げしない会社”を探す
という考え方ではなく、
「託送料金など共通して上がるコストを含めたうえで、最終的にどの会社・料金プランが安いのか」
を見る必要があります。
実際、デジタルグリッドは託送料金の変更を2026年11月1日から反映すると案内しています。一方、PinTは掲載した対象プランについて2027年1月請求分から料金を見直すとしています。新電力が同じ時期・同じ幅で値上げするわけではありません。対象プランと契約条項を確認しましょう。
ここを間違えると、営業担当者から
「うちは○円安いです」
と言われても、本当に年間総額が安いのか判断できません。
値上げへの対策は、4つを順番に確認する
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改定後の年間総額で相見積もりを取る。同じ使用実績を使い、基本料金・電力量料金・燃料費調整・市場価格調整・再エネ賦課金・その他費用を含めて比較します。託送料金が料金に含まれる場合は二重計上を避けます。
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固定型と市場連動型を、価格変動のリスクまで比較する。「固定」でも燃料費等の調整が別に動くことがあります。何が固定され、上限や価格改定条項があるかを確認してください。
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最大需要電力と使用量を減らせるかを見る。設備の同時稼働をずらす、省エネ運用を進めるなど、自社で改善できる余地を確認します。基本料金への効果は契約条件により異なります。
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自家消費型太陽光などの設備対策も採算で検討する。日中の使用量、屋根条件、設備費、保守費、契約期間を含めて試算します。導入すれば必ず安くなるという前提では判断しません。
高圧電力では「1円」が、とにかく大きい
以下は、比較したプランの年間使用量に対する実効的な単価差が1円/kWhだった場合の計算例です。公表された平均託送料金の差を、そのまま請求額へ当てはめたものではありません。
一般家庭なら1kWhあたり数十銭の差は、それほど大きく感じないかもしれません。
しかし、法人では話が変わります。
年間1,000万kWh使用する企業なら、
1円/kWhの差=年間1,000万円。
年間5,000万kWhなら、
1円/kWhの差=年間5,000万円。
だからこそ、大口需要家では「現在の電力会社を何となく継続する」という判断が、年間数百万円、場合によっては数千万円の差につながることがあります。
電気は同じです。
コンセントから出てくる電気の品質が、契約する小売電気事業者によって変わるわけではありません。
それでも、契約条件によって支払額には大きな差が出る。
これが法人電力の特徴です。
2027年4月更新の企業は、むしろ今が重要
そして今回、私たちが最も注目しているのが2027年4月更新の企業です。
2027年4月に契約更新を迎える企業は、見積もり取得や社内検討に必要な時間を見込んで準備を始めましょう。
11月の料金改定を見てから動き始めるのではなく、
現在の契約条件
↓
2026年11月以降の料金
↓
2027年度の更新見積
↓
他社の固定・市場連動型プラン
を並べて比較しておくことが重要です。
そしてもう一つ。
電力価格が上昇すると、
「今すぐ市場連動型に変えるべき」
「いや、固定価格の方が安全」
という議論が必ず出てきます。
しかし、これにも万人共通の正解はありません。
年間使用量、負荷率、使用時間帯、リスク許容度によって、適した料金プランは変わります。
重要なのは、営業トークではなく数字で比較することです。
まず、電気料金の請求書を見てみてください

今回の11月改定をきっかけに、まずやっていただきたいことがあります。
難しいことではありません。
直近の電気料金請求書を確認してください。
そして、
「契約電力はいくらか」
「年間何kWh使っているか」
「基本料金はいくらか」
「電力量料金はいくらか」
「燃料費調整はどうなっているか」
「現在の契約は固定なのか、市場連動なのか」
を確認してみてください。
年間使用量は直近1か月の請求書だけでは分かりません。直近12か月の請求書・使用実績と契約書をそろえると、比較の精度が上がります。図の請求書は説明用のイメージです。
まとめ:2026年11月は「電気契約を見直す日」と考えていい
今回の話をまとめると、非常にシンプルです。
2026年11月から、北陸を除く9エリアで託送料金の見直しが進み、大手電力各社が料金へ反映します。
また、今回の高圧向け支援対象期間は9月使用分までで、9月は1.8円/kWhの値引きがありました。使用月と請求月の違いも含めて確認しましょう。
だからこそ、今後の請求額を見るときには単純に、
「電気代が上がった」
で終わらせず、
なぜ上がったのか。
現在の契約を継続するのが本当に適切なのか。
まで確認することが重要です。
株式会社タンソーマンGXが運営する法人向け電力比較サービス「デンキチェック」では、現在の請求書・契約条件・使用実績をもとに、複数の電力会社の料金を比較しています。
特に高圧電力の場合、年間使用量が大きいため、わずかな単価差でも年間では大きな金額になります。
2027年度の契約更新を迎える企業は、電力会社から更新案内が届いてから動くのではなく、今のうちから比較を始めることをおすすめします。
まずは電気料金の請求書を確認する。
それだけでも、十分な第一歩です。
※本記事は2026年10月4日時点で、経済産業省、一般送配電事業者、各小売電気事業者が公表している情報をもとに作成しています。実際の料金改定内容・影響額は、契約する電力会社、料金メニュー、契約電力、電力使用量、検針日等によって異なります。
※本記事は、株式会社タンソーマンGXの公式note(2026年10月4日掲載)からの転載です。noteで読む
