
重油や灯油のボイラをヒートポンプや電気ボイラに替える、石油からガスへ燃料を切り替えるといった「電化」「燃料転換」の設備更新には、省エネ・非化石転換補助金の「電化・脱炭素燃転型」が使えます。この記事では、令和7年度補正予算(4次公募)の公募要領に沿って、対象となる事業と設備、補助率と上限額、申請者に求められるGX要件を解説します。
電化・脱炭素燃転型とは
電化・脱炭素燃転型は、SIIが公表した指定設備を用いて、化石燃料から電気への転換や、より低炭素な燃料への転換を伴う設備更新などを支援する区分です。GX経済移行債を財源とする補助金で、申請窓口は設備単位型と同じです。対象となる事業は次の3つです。
- 電化:石炭・石油・ガスなどの化石燃料を使う設備から、電気を使う設備へ更新する事業
- 脱炭素を目的とした燃料転換:石炭・石油などを使う設備から、より低炭素なガスなどの燃料を使う設備へ更新する事業
- 水素燃料の利用を目的とした改造:既存設備を、水素を専焼または混焼できる仕様に改造する事業
令和7年度補正では、新たに事業活動を始める事業所などで水素燃料を活用できる設備を新設する事業も対象に加わりました。
電化
- 化石燃料の設備から電気の設備へ
- 例:温水ボイラをヒートポンプに
- 上限額5億円
燃料転換
- 石炭・石油からガスなどへ
- 例:重油ボイラをガスボイラに
- 上限額3億円
水素対応
- 改造または新設
- 10%以上の混焼率で実稼働
- 上限額3億円
令和7年度補正予算 設備単位型 公募要領<4次公募用>より。補助率は更新・改造1/2以内、新設1/5以内。
対象となる設備
補助対象は、指定設備のうち次の5区分です。いずれにも該当しない設備でも、SIIが電化・脱炭素燃転に資するとして指定した「その他SIIが認めた高性能な設備」は対象になります。設備単位型の一部の枠と異なり、GX要件を満たしたメーカーの設備である必要はありません。
- 産業ヒートポンプ
- 業務用ヒートポンプ給湯器
- 高性能ボイラ
- 高効率コージェネレーション
- 低炭素工業炉
温水や熱を供給する設備のうち、一般的なヒートポンプで対応できる低温域は、電化のみが対象です(高効率コージェネレーションを除く)。低温の温水ボイラを別の燃料のボイラに替えるだけでは対象にならない点に注意が必要です。
公募要領には事業例として、石油などを燃料とする温水ボイラをヒートポンプに替える事業(低温域)、蒸気ボイラを電気ボイラに替える事業(中温域)、コークスを燃料とする溶解炉を誘導加熱式の電気炉に替える事業(高温域)が示されています。
既存設備との併用
電化や燃料転換のうち、プロセス全体のエネルギー使用量を減らす目的で、既存のボイラなどと併用して産業ヒートポンプ、高効率コージェネレーション、水素対応設備を新たに追加設置する事業も対象です。ただし、既存設備を予備機として残すことは認められず、併用期間もプロセス全体で省エネ効果を維持する必要があります。
補助率・上限額と対象経費
- 更新・改造:補助率1/2以内(中小企業者等、大企業・その他とも)。上限額3億円(電化する事業は5億円)、下限額30万円
- 水素対応設備の新設:補助率1/5以内。上限額3億円、下限額30万円
補助対象経費は設備費で、付帯設備も含まれます(2次公募から、ガスへの燃料転換の場合も付帯設備が対象になりました)。工事費は中小企業者等の事業、または水素燃料の利用を目的とした改造に限り対象です。設計費、既存設備の撤去費、建屋や外構の工事費は対象外です。
高性能ボイラの場合、公募要領の基準表では、電化・脱炭素燃転型に限って次の範囲も補助対象に含めると示されています。
- ガスなどへ燃料転換する蒸気ボイラの専用ガス貯槽設備(貯槽タンク、払出ポンプ、ベーパーライザー)
- 電気ボイラに更新する場合の専用受変電設備
- 水素対応設備で専用する、水素利用に不可欠な付帯設備(圧縮機、混合装置、バッファータンク、供給配管など)。水電解装置や改質器などの水素を製造する設備は対象外
省エネ要件
原油換算で次のいずれかを満たす必要があります。省エネ量は申請者が独自に計算します。
- 省エネ率+非化石転換率:10%以上
- 省エネ量+非化石使用量:1kl以上
- 経費当たりの省エネ量・非化石使用量:1kl/千万円以上
水素燃料を使う場合は、体積ベースで10%以上の混焼率で実際に稼働させることが求められます。
申請者に求められるGX要件
電化・脱炭素燃転型の申請者(会社法上の会社に該当する民間企業)は、SIIが公表するフォーマットでGX推進への取組の意思を表明する必要があります。内容は、温室効果ガスの排出削減目標の設定と第三者検証を経た報告・公表(CO2排出量20万t未満の企業や中小企業は、省エネ計画の提出で代替可)、企業の成長につながる方針の策定、継続的な賃上げなど人材確保に向けた取組です。
さらに、ガスなどの低炭素な化石燃料へ転換する事業や、化石燃料を使い続ける事業では、将来の水素・アンモニア・合成メタンなどへの転換を検討し、技術的・経済的に可能な範囲で実施することへのコミットメントも求められます。省エネ法の特定事業者等は、その旨を中長期計画書に記載します。
スケジュールと検討の進め方
令和7年度補正予算の4次公募は、2026年10月5日から10月30日17時必着、交付決定は12月下旬の予定です。単年度事業は2027年1月31日までの完了が必要で、ボイラや工業炉の更新は納期と工事期間が長くなりやすいため、複数年度事業(最大2年)も含めて工程を組みます。
電化では、受電設備の容量や電気の契約電力が増えることがあります。燃料費と電気代の両方で運転コストを比較し、省エネ効果とあわせて判断することが大切です。ボイラ更新全般の補助金の選び方は「ボイラー更新・燃料転換に使える補助金」で解説しています。区分や要件は年度ごとに見直されるため、申請する回の公募要領で確認してください。
タンソーマンGXでは、電化・燃料転換の制度選定から、運転コストと省エネ量の試算、GX要件の表明書類を含む申請書類の作成、実績報告までを支援しています。
参考資料
本記事の内容は2026年10月21日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



