
この記事では、省エネ補助金の申請書で求められる「省エネルギー量」と「省エネルギー率」の出し方を解説します。令和7年度補正予算の省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)の公募要領を例に、原油換算の手順、具体的な計算例、申請時に気をつける点が分かります。
申請書で求められる「削減量」とは
省エネ設備の更新を支援する補助金の多くは、導入によってどれだけエネルギーが減るかを数字で示すことを求めます。経済産業省の省エネ補助金では、この数字を「計画省エネルギー量」「計画省エネルギー率」と呼びます。
令和7年度補正予算の省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)では、原油換算量ベースで次のいずれかを満たすことが申請の要件です。
- 計画省エネルギー率:10%以上
- 計画省エネルギー量:1kl以上
- 経費あたりの計画省エネルギー量:1kl/千万円以上
また、省エネルギー量は審査の評価項目にもなるため、要件を満たすかどうかだけでなく、根拠のある数字を示せるかが採択に影響します。一方、環境省の補助事業では、エネルギー量ではなくCO2の削減量(t-CO2)を求めるものが多くあります。どちらを求められているかを公募要領で最初に確認してください。
原油換算とは
工場や事業所では、電気、都市ガス、重油、LPGなど種類の違うエネルギーを使っています。単位がkWh、m3、klとばらばらなので、そのままでは合計や比較ができません。そこで、すべてのエネルギーを一度「熱量(GJ:ギガジュール)」に換算し、さらに原油の量(kl)に置き換えて比べます。これを原油換算といいます。
令和7年度補正予算の設備単位型の公募要領に掲載されている換算係数表では、次のように定められています。
- 熱量から原油への換算:発熱量10GJ=原油換算量0.258kl
- 電気(買電):1千kWhあたり8.64GJ
- 燃料の例:A重油 1klあたり38.9GJ、灯油 1klあたり36.5GJ、LPG 1トンあたり50.1GJ
- 都市ガス:熱量は都市ガス会社に確認する
換算係数は省エネ法の改正などで見直されることがあるため、必ず申請する年度の公募要領に掲載された係数表を使ってください。
計算の手順と計算例
公募要領では、計画省エネルギー量と計画省エネルギー率を次の式で求めるとしています。
- 計画省エネルギー量(kl)=事業実施前の年間エネルギー使用量(既存設備)−事業実施後の年間エネルギー使用量(導入予定設備)
- 計画省エネルギー率=計画省エネルギー量÷事業実施前の年間エネルギー使用量
- 更新範囲を決めるどの設備を何台入れ替えるか
- 既存設備の年間使用量実績データで算出
- 導入後の年間使用量カタログ値と同じ稼働条件で算出
- 熱量に換算係数表でGJに直す
- 原油換算・差を取るklにして削減量と率を出す
計算例(電気を使う設備の場合)
説明のための仮の例として、年間200,000kWhの電力を使う既存設備を、同じ稼働条件で年間150,000kWhになる省エネ型に更新する場合を考えます。
- 事業実施前:200千kWh×8.64GJ=1,728GJ → 1,728GJ×0.0258kl/GJ=約44.58kl
- 事業実施後:150千kWh×8.64GJ=1,296GJ → 1,296GJ×0.0258kl/GJ=約33.44kl
- 計画省エネルギー量:44.58kl−33.44kl=約11.15kl
- 計画省エネルギー率:11.15kl÷44.58kl=約25%
説明のための仮の数値。換算係数は令和7年度補正予算 設備単位型の公募要領による。
電気と燃料を両方使う設備や、燃料から電気に切り替える場合は、それぞれを熱量に換算して合計してから原油換算します。
正しく計算するための注意点
公募要領には、計画省エネルギー量を出すうえでの留意点が示されています。主なものは次のとおりです。
- 年間量で示す:完了後すぐに効果が出ないものや、継続して効果が出ないものは含めない
- 実績データを使う:令和7年度補正予算の設備単位型では、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の使用量実績で算出する
- 生産量や稼働時間を減らしただけの削減は入れない:設備の性能による削減だけを計算する
- 他の省エネ事業の効果を含めない:別の補助事業や同時に行う工事の効果と混ぜない
- 計算過程を残す:独自に計算する場合は、計算過程と根拠資料の提出が求められる
裕度(安全率)の考え方
省エネ補助金では、事業完了後に実際の省エネルギー量を報告し、計画値を達成していることが求められます。そのため公募要領は、製品の性能誤差や測定誤差を考え、計算結果に裕度(安全率)を掛けた値で申請するよう求めています。例えば、最大1,000klの効果が見込める計算で10%の安全率を見込むなら、申請値は900klとします。「1,000kl±10%」のような書き方はしません。
一方で、裕度を大きく取ると計画省エネルギー量が減り、審査で不利になる場合があります。公募要領では、更新範囲の使用量が把握できていない場合や、稼働条件(負荷率・稼働時間)が分からない場合に裕度の設定を認めるとしています。既存設備の電力量を計測しておくと、裕度を小さくでき、成果報告での説明もしやすくなります。
計算を楽にする方法と、CO2削減量との違い
令和7年度補正予算の設備単位型では、補助事業ポータルに導入予定設備の稼働時間などを入力すると、省エネルギー量が自動で計算される「指定計算」が用意されています。指定計算で対応できない設備や条件では、申請者が自ら計算する「独自計算」を使います。SIIは「省エネルギー量計算の手引き」や省エネ計算プログラムも公開しています。
環境省の補助事業のようにCO2削減量を求められる場合は、エネルギーの削減量に排出係数を掛けて算出します。電気の場合は、環境省・経済産業省が公表する電気事業者別排出係数などを使いますが、どの係数を使うかは制度ごとに指定があります。詳しくはCO2排出量の算定と補助金をご覧ください。
既存設備の使用量が分からない場合は、省エネ診断で計測や試算をしてもらうのも一つの方法です。省エネ診断を低額で受ける方法も参考にしてください。
まとめ
申請書の省エネルギー量は、既存設備と導入予定設備の年間エネルギー使用量を同じ条件で求め、熱量を経由して原油換算した差として出します。換算係数、使用する実績期間、裕度の扱いは制度と年度で異なるため、必ず最新の公募要領に沿って計算してください。根拠となる実績データを早めに集めておくことが、正確な計算と採択への近道です。
タンソーマンGXでは、省エネ効果の計算や根拠資料の整理を含め、制度の選定から申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- SII 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)4次公募 公募要領(PDF)
- SII 同 公募情報(4次公募)省エネルギー量計算の手引き等
- 環境省・経済産業省 電気事業者別排出係数(令和6年度実績)(PDF)
本記事の内容は2026年10月21日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



