
エネルギーの使い方を計測し、見える化と制御で無駄を減らすEMS(エネルギーマネジメントシステム)の導入には、省エネ・非化石転換補助金の「エネルギー需要最適化型」が使えます。この記事では、令和7年度補正予算(4次公募)の公募要領に沿って、対象となるEMSの種類、補助率と上限額、2年間の活用計画と成果の公表など、EMS導入ならではの要件を解説します。
エネルギー需要最適化型とは
エネルギー需要最適化型(事業区分Ⅳ)は、SIIに登録されたEMSを導入し、導入する範囲で設備や工程ごとのエネルギー消費状況を把握・表示・分析して運用改善を行い、エネルギー使用量の削減と需要の最適化を図る事業を支援します。
EMSだけを導入する単独申請も、工場・事業場型や設備単位型の設備更新と組み合わせた申請もできます。単独で申請する場合は、工場・事業場型の窓口(公募要領)から申請します。令和7年度補正からは、既存の事業所だけでなく、新築・新設の事業所や、既存事業所の新しい製造ライン・エリアに設置するEMSも対象になりました。
対象となるEMSの種類
対象のEMSは、SIIが定めた「EMSのシステム要件」を満たし、補助対象として登録されたものに限られます。機能によって次の5種類に分かれます。
- 見える化型EMS(伴走型):計測・見える化の機能を持ち、エネマネ事業者が収集データを分析して提案する。エネマネ事業者の管理支援を受けることが条件
- 見える化型EMS(高機能型):計測結果を自ら分析し、ダッシュボードで気付きや助言を示す機能を持ち、事業者が自ら省エネ活動を進められる
- 制御型EMS:エネマネ事業者の管理支援に必要な計測・見える化・制御機能とセンターシステムを持つ。管理支援を受けることが条件
- 高度型EMS(オートチューニング型):AIで稼働状況を学習し、自動でチューニングする
- 高度型EMS(モデル予測制御型):モデル予測制御で最適な運転を実現する
EMSを導入するのは、SIIに登録された「エネマネ事業者」です。エネマネ事業者の一覧と検索ページはSIIのホームページで公開されています。
補助率と上限額
- 補助対象経費:設計費・設備費・工事費
- 補助率:中小企業者等1/2以内、大企業・その他1/3以内
- 上限額:1億円(事業全体)、下限額:30万円
他の事業区分と組み合わせて申請する場合は、各区分の上限額の合計が事業全体の上限額になります。エネマネ事業者のエネルギー管理支援を受ける場合は、EMS機器の導入経費に3者見積は課されません。管理支援を受けず3者見積も行わない場合は、事前にSIIに相談し、交付申請時に理由書を提出します。
なお、大企業は、省エネ法の事業者クラス分け評価制度でSクラスまたはAクラスに該当する場合や、中長期計画書に記載した2030年度のベンチマーク指標の見込みが目標値を達成する場合などに限り補助対象となります。この条件はエネルギー需要最適化型にも適用されるため、大企業の場合は申請前に自社の評価区分を確認しておく必要があります。
申請要件:2年間のEMS活用計画
エネルギー需要最適化型では、設備を入れること以上に「入れた後にどう使うか」が問われます。申請時には、EMSを活用した省エネの「EMS活用計画」を作成します。
- 計画期間は2年間
- 省エネ推進体制を構築すること(対象範囲を管理する主要部署の参加は必須。立ち上げ時期も定める)
- 対象範囲での具体的な省エネの取組を3項目以上記載すること
- 原油換算で省エネルギー率2%の改善を目安とし、EMSによる制御効果と、計測に基づく運用改善の効果を必ず含めること
公募要領では、対象範囲のエネルギー使用量が1,000klであれば20klの削減が2%の目安になる例が示されています。取組の例として、空調機ファンのインバータ制御や熱源機の台数制御、照明の調光制御、計測結果に基づく空調の温度設定やボイラ・圧縮機の運転台数の見直し、生産ラインの待機時間の削減などが挙げられています。
- 交付決定・EMS設置交付決定後に契約・発注
- 実施前の計測取組前の使用量を原則1週間以上計測
- 1年目報告計測データから省エネ効果の見込みを報告
- 取組の実施・継続取組後の使用量を1年間計測
- 2年目報告と公表削減量を報告し自社サイトで公表
SII 工場・事業場型 公募要領<4次公募用>の事業スケジュール例をもとに作成。
成果の報告と公表
EMS活用計画による改善の成果は、1年目と2年目にSIIが定めるフォーマットで報告します。2年目の報告が終わった時点で、EMSの計測範囲と取組後の削減量、省エネ推進体制、実施した取組を、補助事業者のホームページで公表する必要があります。予定した取組ができなかった場合は、その理由も求められます。
また、エネマネ事業者からエネルギー管理支援サービスを受ける場合、エネマネ事業者が3年間データ登録(オープンデータ)を行うため、それを考慮してサービス契約を結ぶこととされています。
導入方法と事業スキーム
EMSの導入方法として、公募要領では次の4つの形が示されています。
- エネルギー需要最適化型の単独申請
- 工場・事業場型と組み合わせた申請
- エネマネ事業者がESCO・エネルギーサービス事業を行う場合(共同申請)
- リースを利用する場合(設備使用者とリース会社の共同申請)
令和7年度補正予算の4次公募は、2026年10月5日から10月30日17時必着、交付決定は12月下旬の予定です。EMS導入を検討する際は、資源エネルギー庁の「デジタル・AI技術による省エネ・生産性向上に向けた手引き」も参考になります。電力の計測データは、まず電気料金の明細や請求書のデータの整理から始めると計画が立てやすくなります。要件は年度ごとに見直されるため、申請する回の公募要領で確認してください。
タンソーマンGXでは、EMS導入の範囲設定からEMS活用計画の作成、申請書類の準備、導入後の成果報告までを支援しています。
参考資料
- SII 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(工場・事業場型)4次公募
- SII 工場・事業場型 公募要領<4次公募用>(2026年10月)
- SII 工場・事業場型 事業概要パンフレット(4次公募)
- SII 設備単位型 公募要領<4次公募用>(2026年10月)
- SII エネマネ事業者一覧
- 資源エネルギー庁 デジタル・AI技術による省エネ・生産性向上に向けた手引き
本記事の内容は2026年10月21日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



