
ボイラーは燃料費とCO2排出の両面で影響が大きい設備で、更新時に「同じ燃料の高効率機にするか」「電化や燃料転換まで踏み込むか」によって使える補助金が変わります。この記事では、2026年に公募されている国の制度のうち、ボイラー更新・燃料転換に関係する省エネ・非化石転換補助金(SII)と環境省のSHIFT事業について、対象と補助率、選び方を公募要領・公式発表に沿って解説します。
ボイラー更新で使える国の制度は3つのルート
ボイラー更新の内容によって、検討する制度は次のように分かれます。
同じ燃料の高効率機へ
- SII 設備単位型(高性能ボイラ)
- 補助率1/3以内(従来枠)
- 対象経費は設備費のみ
電化・燃料転換
- SII 電化・脱炭素燃転型
- 補助率1/2以内
- 中小企業者等は工事費も対象
熱システム全体の改修
- 環境省 SHIFT事業
- 補助率1/3
- CO2を15%以上削減など
令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(4次公募)、令和8年度SHIFT事業(三次公募)の公表資料より。
同じ燃料の高効率ボイラへ更新する場合
SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)の省エネ・非化石転換補助金の設備単位型では、「高性能ボイラ」が指定設備の一つです。蒸気ボイラと温水ボイラが対象で、いずれもボイラ効率95%以上(低位発熱量基準)が基準です。
- 対象範囲:蒸気ボイラは本体に加え、給水ポンプ、送風機、制御盤、各種弁、節炭器、空気予熱器など。温水ボイラは本体に加え、循環ポンプ、送風機、制御盤、熱交換器、真空ポンプなど
- 補助率と上限額:従来枠は1/3以内・上限1億円、GX要件を満たしたメーカーの設備を対象とするメーカー強化枠は1/3以内・上限3億円。台数制御装置によりシステム効率を最適化するボイラなどトップ性能基準を満たす設備は、トップ性能枠で更新1/2以内(上限3億円)
- 対象経費:設備費のみ。据付工事費、配管材料、既存ボイラの撤去費は対象外
更新後も化石燃料を使い続ける場合、メーカー強化枠・トップ性能枠では、将来の非化石エネルギーへの転換を検討することなどのGX要件を申請者が表明する必要があります。
電化・燃料転換を伴う場合
重油や灯油のボイラを、ヒートポンプや電気ボイラ、より低炭素なガスのボイラに替える場合は、省エネ・非化石転換補助金の「電化・脱炭素燃転型」が中心になります。
- 対象設備:産業ヒートポンプ、業務用ヒートポンプ給湯器、高性能ボイラ、高効率コージェネレーション、低炭素工業炉
- 補助率:更新・改造は1/2以内(中小企業者等、大企業・その他とも)
- 上限額:3億円(電化する事業は5億円)、下限額30万円
- 対象経費:設備費(付帯設備を含む)と工事費。工事費は中小企業者等の事業、または水素燃料の利用を目的とした改造に限る
高性能ボイラでは、この区分に限り、燃料転換に伴う専用ガス貯槽設備(貯槽タンク、払出ポンプ、ベーパーライザー)や、電気ボイラにする場合の専用受変電設備も対象範囲に含まれます。電気ボイラはこの電化・脱炭素燃転型の対象です。
既存のボイラーを水素の専焼または混焼ができる仕様に改造する事業も、この区分の対象です。補助率は1/2以内で、水素燃料は体積ベースで10%以上の混焼率で実際に稼働させることが求められます。水素の利用に不可欠な付帯設備(圧縮機、混合装置、供給配管など)は対象になりますが、水電解装置などの水素を製造する設備は対象外です。
注意したいのは、一般的なヒートポンプで対応できる低温域の温水・熱の供給は、電化のみが対象になる点です。低温の温水ボイラを別の化石燃料のボイラに替える計画は、この区分では対象になりません。また、申請者にはGX要件の表明が求められ、ガスへの燃料転換や化石燃料の継続使用を伴う場合は、将来の水素・合成メタンなどへの転換を検討するコミットメントも必要です。
熱システム全体を見直す場合(SHIFT事業)
環境省の「脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業(SHIFT事業)」は、工場・事業場の省CO2型システムへの改修などを支援する制度です。令和8年度の三次公募の発表によると、「省CO2型システムへの改修支援事業」の補助率は1/3、上限額はCO2削減量に応じて1億円または5億円です。
要件は、工場・事業場単位でCO2排出量を15%以上、または主要なシステム系統で30%以上削減することです。一方で、蒸気システム、空調システム、給湯システム、工業炉、コージェネレーションに関する単純な高効率化改修は補助対象外とされています。ボイラーを高効率機に入れ替えるだけでなく、熱の使い方や配管・排熱回収まで含めてシステムを組み直す計画向けの制度と考えるのが適切です。
SHIFT事業にはもう一つ、「DX型CO2削減対策実行支援事業」があり、DXシステムを用いた運用改善などによるCO2削減の取組を補助率3/4、上限200万円で支援しています。いきなり大規模な改修に進む前に、ボイラーや蒸気配管の運用データを整える段階で検討できる枠です。
令和8年度の三次公募は令和8年9月11日から10月15日正午までで、すでに締め切られています。執行団体は一般社団法人温室効果ガス審査協会です。
制度を選ぶ前に確認したいこと
- 熱の温度帯:温水か蒸気か、何度の熱が必要かで、ヒートポンプ化の可否と対象区分が決まります。
- 燃料と電気の運転コスト:電化では契約電力や受電設備の容量が増えることがあります。燃料費の削減額と電気料金の増加額をあわせて比較します。
- 工事費の比率:ボイラー更新は配管や基礎の工事費が大きくなりがちです。工事費が対象になるかどうかで補助金額が大きく変わります。
- 工期:省エネ・非化石転換補助金の4次公募(2026年10月5日〜10月30日)の単年度事業は、2027年1月31日までの完了が必要です。納期が長い場合は複数年度事業も検討します。
電化・燃料転換の詳しい要件は「省エネ補助金「電化・脱炭素燃転型」」で解説しています。補助率や対象の範囲は年度ごとに見直されるため、申請する回の公募要領で確認してください。
タンソーマンGXでは、ボイラー更新・燃料転換に使える制度の比較から、運転コストと省エネ量の試算、申請書類の作成、実績報告までを支援しています。
参考資料
- SII 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)4次公募
- SII 設備単位型 公募要領<4次公募用>(2026年10月)
- SII 設備単位型 事業概要パンフレット(4次公募)
- 環境省 報道発表 令和8年度SHIFT事業 三次公募
- 温室効果ガス審査協会 SHIFT事業
本記事の内容は2026年10月21日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



