
この記事では、太陽光発電などの再エネ設備の補助金で定められている「環境価値」の扱いを、令和8年度の国と東京都の公募要領・手引きに基づいて解説します。環境価値を誰に帰属させるのか、J-クレジットや証書として売ってよいのか、東京都の「証書化して自ら利用する」要件とは何かを整理します。
環境価値とは
再エネで発電した電気には、電気そのものの価値とは別に、CO2を排出せずに発電したという価値があります。これを「環境価値」と呼びます。環境省のストレージパリティ事業の公募要領では、環境価値を主に太陽光発電によるCO2削減効果のことと説明しています。
環境価値は、電気と切り離して証書やクレジットの形で取引することもできます。代表的なものに、温室効果ガスの排出削減量をクレジットとして認証するJ-クレジット制度や、グリーン電力証書があります。ストレージパリティ事業のQ&A集は、グリーン電力証書を「再エネによる発電がもたらす環境価値を実際の電力供給と切り離して証書化し、取引可能にする制度」と説明しています。企業はこれらを使って、RE100などの目標達成や排出量の報告に役立てています。
補助金で求められる3つのルール
補助金の対象設備から生まれる環境価値には、制度ごとに共通するルールがあります。
- 需要家に帰属させる電気を使った需要家が環境価値を持つ
- クレジット化しない法定耐用年数の間はJ-クレジット等に登録しない
- 売らずに自ら使う証書の販売・譲渡で収益を得ない
環境省の補助事業・地域脱炭素交付金・東京都の助成事業の要件を整理。細部は制度ごとに異なる。
1.需要家に帰属させる
環境省のストレージパリティ事業、駐車場型・地域共生型の太陽光発電設備導入事業、地域脱炭素移行・再エネ推進交付金はいずれも、需要家に供給した電力量に紐づく環境価値を需要家に帰属させることを要件にしています。PPAモデルで発電事業者が設備を所有する場合でも、環境価値は電気を使う需要家のものになります。
2.J-クレジットなどに登録しない
ストレージパリティ事業では、補助対象設備の法定耐用年数が経過するまで、得られた環境価値をJ-クレジットなどのカーボン・クレジットとして登録することが禁止されています。太陽光発電設備の法定耐用年数は17年です。地域脱炭素交付金の重点対策加速化事業でも、法定耐用年数を経過するまでJ-クレジット制度への登録を行わないことが要件です。
3.証書として売らない
同事業のQ&A集では、環境価値をグリーン電力証書の認証・取引に使うこともできないとしています。登録禁止期間中にJ-クレジットに登録した場合や、環境価値を譲渡・販売した場合は、補助金の返還を求められる可能性があると明記されています。
なぜクレジット化や販売が認められないのか
ストレージパリティ事業のQ&A集は、その理由を次のように説明しています。補助金もJ-クレジット制度も、温室効果ガスの排出削減を促すための制度です。同じ削減量に対して両方の支援を受けると、補助金による支援とクレジットによる収益が重複する「二重取り」になります。これを防ぐため、補助を受けた設備の環境価値は、クレジットや証書として外部に売らずに、需要家自身の削減として使うことが求められています。
この点は、PPA事業者や設備の販売会社と需要家の間で誤解が生じやすいところです。ストレージパリティ事業のQ&A集では、カーボン・クレジットとしての登録禁止などをPPA契約書・リース契約書の必須項目として挙げています。需要家に帰属する環境価値であっても、J-クレジットへの登録は認められません。契約の際は、次の点を書面で確認しておくと安心です。
- 供給を受けた電力量に紐づく環境価値が需要家に帰属すること
- 法定耐用年数の間、発電事業者・需要家のどちらもクレジット登録や証書の販売を行わないこと
- 発電量・自家消費量のデータを需要家が受け取れること
東京都の「証書化して自ら利用する」要件
東京都の「地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業」でも、都内設置の場合は、需要先で消費した電気の環境価値は需要先で消費することが要件です。
特徴的なのが「都外設置」の区分です。東京電力のエリア内(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、栃木県、群馬県、茨城県、山梨県、静岡県の富士川以東)の都外の施設に再エネ発電設備を設置し、その施設で電気を使ったうえで、得られた環境価値を都内の特定の施設で自ら利用する事業者を助成します。東京都の報道発表では、助成率に応じて得られた環境価値を証書化し、都内の事業所で自ら利用することとしています。
つまり、都外の工場で発電した電気はその工場で使い、その環境価値は証書の形にして都内の本社などの排出削減に充てる、という使い方です。証書を第三者に売ることは想定されていません。都外設置の詳しい条件は東京都の補助金「都外設置」枠の解説をご覧ください。
脱炭素経営での活かし方
- 自社の排出削減として使う:補助設備の自家消費は、購入電力量を減らすことで自社のCO2排出量の削減につながります。ストレージパリティ事業のQ&A集も、RE100などに取り組む企業が再エネ電力を調達する手段として本事業を活用できると説明しています
- 削減量の記録を残す:発電量や自家消費量を計測・記録しておくことで、排出量の報告や取引先への説明に使えます。多くの制度で発電量の計測機器の設置や事業報告が求められています
- クレジット収益を見込まない:補助を受けた設備では、法定耐用年数の間、クレジットや証書の販売収入を投資回収の計画に入れることはできません
環境価値の扱いは制度ごとに細かな違いがあり、年度で見直されることもあります。申請前に最新の公募要領で確認してください。
タンソーマンGXでは、環境価値の扱いを含めた太陽光・蓄電池の制度選定から申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- 令和8年度 ストレージパリティ事業 公募要領(KY)
- 令和8年度 ストレージパリティ事業 Q&A集(QA)
- 駐車場型太陽光発電設備導入事業 公募要領(令和8年度二次公募)
- 地域共生型太陽光発電設備導入事業 公募要領(令和8年度二次公募)
- 地域脱炭素移行・再エネ推進交付金 実施要領(別紙2・重点対策対象事業要件)
- クール・ネット東京 令和8年度 助成金申請の手引き(都内設置)
- 東京都 報道発表「地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業」令和8年度申請受付開始
本記事の内容は2026年10月21日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



