公開 2026.10.22

交付決定の取消しと返還 加算金が発生するケース

この記事では、補助金の「交付決定の取消し」と「返還」の仕組み、そして返還に年10.95%の「加算金」が上乗せされるのはどのような場合かを整理します。国の補助金のルールを定める補助金適正化法と同法施行令、令和8年度の公募要領の記載をもとに、返還の種類ごとの違いを説明します。

返還には3つの種類がある

補助金を返すことになる場面は1つではありません。補助金適正化法は、交付決定を取り消すケースを2つの条文に分けて定め、さらに確定額を超えて支払われていた場合の返還も定めています。この違いが、加算金がかかるかどうかを分けます。

返還の種類と加算金の有無

違反による取消し(第17条)

  • 目的外使用や交付条件・法令への違反
  • 額の確定後でも取消しがありうる
  • 返還命令に加算金(年10.95%)が付く

事情変更による取消し(第10条)

  • 天災地変など交付決定後の事情の変更
  • 事業を続ける必要がなくなった場合など
  • 第19条の加算金の対象として定められていない

確定額を超えた交付(第18条2項)

  • 額の確定で支払済みの額が多かった
  • 差額の返還を命じられる
  • 取消しではなく精算の性格

補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 第10条・第17条・第18条・第19条より作成。

違反による取消し(第17条)とは

補助金適正化法第17条は、補助事業者が補助金を他の用途に使ったり、交付決定の内容や付された条件、法令や処分に違反したりしたときは、交付決定の全部または一部を取り消すことができると定めています。同条第3項により、この取消しは補助金の額が確定した後でも行えます。入金が済んだから終わり、ではありません。

取消しになると、第18条第1項により、すでに交付された補助金について期限を定めた返還命令が出ます。各公募要領は、取消しにつながる具体的な行為を次のように示しています。

公募要領に示された主な取消し事由
  • 虚偽・不正虚偽の申請や報告、重複受給。偽りによる受給は第29条の刑事罰の対象にもなる
  • 手続きの不履行期限までに実績報告をしない、事業化状況報告をしない・虚偽の数値を出す
  • 財産の無断処分承認を受けずに設備を貸付け・転売する
  • 検査への非協力正当な理由なく実地検査への協力を拒む
  • 要件から外れる変化株主・役員の変更で「みなし大企業」等に該当する

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回)、中小企業省力化投資補助事業(一般型・第8回)、SII省エネ・非化石転換補助金(設備単位型・4次)の各公募要領より作成。

SIIの省エネ補助金の公募要領は、虚偽申請や重複受給などが判明した場合、第17条による取消しに加え、一定期間の交付停止、経済産業省の契約での指名停止、事業者名と不正内容の公表がありうるとしています。

加算金の計算方法

補助金適正化法第19条第1項は、第17条第1項による取消しで返還を命じられた場合、補助金の受領日から納付日までの日数に応じて、年10.95%の割合で計算した加算金を納めなければならないと定めています。

  • 計算の起点は受領日:返還命令の日ではなく、補助金を受け取った日から数えます。数年前に受け取った補助金なら、その年数分の加算金がかかります。
  • 分割して受け取った場合:施行令第10条により、返還額は最後に受け取った分から順にさかのぼって受け取ったものとして計算します。
  • 納めたお金の充て方:一部を納付した場合、その金額はまず返還すべき補助金本体に充てられます(施行令第10条第2項)。

たとえば1,000万円の補助金を受け取って3年後に全額の返還を命じられた場合、加算金は単純計算で約328万円(1,000万円×10.95%×3年)になります。数字は仮の例ですが、時間がたつほど負担が重くなる仕組みであることが分かります。

期限までに払わないと延滞金も

取消しから納付までの流れ
  1. 違反の判明検査や報告で発覚する
  2. 交付決定の取消し理由が示される(第21条の2)
  3. 返還命令期限を定めて命じられる
  4. 返還と加算金の納付受領日から年10.95%
  5. 未納なら延滞金納期日の翌日から年10.95%

返還命令の納期日までに納めなかった場合は、第19条第2項により、納期日の翌日から納付日まで、未納付額に年10.95%の延滞金がかかります。さらに第20条で同種の補助金の交付停止や相殺、第21条で国税滞納処分の例による徴収が定められています。

やむを得ない事情があると認められるときは、加算金や延滞金の全部または一部が免除されることがあります(第19条第3項)。免除は補助事業者の申請に基づいて行われ、施行令第12条は、返還を遅らせないためにとった措置や理由を記載した書類を添えて申請するよう定めています。

取消しとは別に求められる「返還」

中小機構の補助金では、交付決定の取消しとは別に、事業計画の要件を達成できなかったときの返還が公募要領に定められています。新事業進出・ものづくり補助金では、事業計画期間の最終年度に1人当たり給与支給総額の目標を達成できなかった場合、未達成率に応じた額の返還を求めるとしています。目標値を従業員に表明していなかった場合は、交付決定の取消しと全額返還です。賃上げ要件の詳細は賃上げ要件とはで解説しています。

また、補助金で取得した設備を処分制限期間内に処分するときの納付も、承認を受けたうえでの返納です。手続きは補助金で取得した設備の処分制限をご覧ください。

取消しを避けるために

  • 交付決定通知書に付された条件と公募要領・交付規程を、事業期間中だけでなく事業終了後も参照できるよう保管する
  • 計画変更、事業中止、承継、設備の処分は、必ず事前に事務局の承認を受ける
  • 実績報告や事業化状況報告などの期限を社内の年間予定に組み込む
  • 証拠書類を保存期間(新事業進出・ものづくり補助金では受給年度終了後5年間)にわたり整理しておく

タンソーマンGXでは、補助金の申請から実績報告、その後の報告や手続きまでを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。

参考資料

本記事の内容は2026年10月22日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。

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