
この記事では、国の補助金で設置したEV充電器について、設置後に何を守る必要があるかを整理します。令和7年度補正の充電インフラ補助金(次世代自動車振興センター執行)を中心に、保有義務と処分制限、来客向け充電器の公開の義務、稼働状況の調査、書類の保管を説明し、タクシー・バス向けの商用車等の電動化促進事業との違いも比べます。
補助金を受けた充電器は「取得財産等」になる
補助金で取得した財産は、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)第22条により、承認を受けずに交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、または担保に供することが制限されます。充電インフラ補助金の申請の手引きは、補助金で取得した充電設備と付帯設備(案内板など)を「取得財産等」と呼び、次のように定めています。
- 設置が完了した日から5年間、法令を守り、善良な管理者の注意をもって管理し、交付の目的に沿って効率的に運用すること
- 「取得財産等管理台帳・取得財産等明細表(様式J11)」を備えて管理し、センターが求めたときは開示すること
- 設置した充電設備(付帯設備を含む)は、保有義務期間5年を満了できること(申請の要件)
保有義務期間は減価償却の耐用年数と一致しない場合がある点も、手引きで注意されています。会計・税務の処理は別に確認が必要です。
処分制限:売却・廃棄・移設は事前に承認
手引きでは、取得価格が単価50万円以上の充電設備と付帯設備を「処分を制限された取得財産等」とし、5年間の処分制限期間中にやむを得ず処分するときは、あらかじめ「財産処分承認申請書(様式J22)」を提出し、センターの承認を受けることを求めています。処分を制限されていない取得財産等を処分するときは「取得財産等届出書」を提出します。
- 事前に申請財産処分承認申請書(様式J22)を提出
- センターの判断処分の目的・事由を確認
- 承認の通知財産処分承認通知書(様式J23)
- 処分の実施通知の受領前に処分しない
- 完了の報告状況等報告書で内容を報告
承認された場合でも、処分の目的や事由によっては期限を付けて補助金の全部または一部の返還を求められる。
- 譲渡:有償・無償を問わず財産処分に当たり、事前の申請が必要です。
- 廃棄:原則として補助金の全部または一部の返還義務が生じます。天災や過失のない事故で使えなくなった場合は、罹災証明書等とマニフェスト(産業廃棄物管理票)の提出により、返還が不要と認められることがあります。
- 移設:設置場所の変更も原則として財産処分です。なお、交付決定後・実績報告前の段階では、同一敷地内で10m以上動かす変更は「計画変更承認申請」の対象です。
建物の譲渡に合わせて充電設備を譲渡する場合や、借地で土地所有者の意向により用途が変わる場合などは、返還が不要と認められることがあります。承認を得ずに処分したことが分かった場合は、補助金の返還に加え、受領日から年10.95%の加算金を求められることがあります。指示された返還を期限までに行わない場合は年3%の延滞金がかかり、返還が終わるまで同じ申請者の新しい申請には補助金が交付されません。処分制限の一般的な考え方は補助金で取得した設備の処分制限で解説しています。
来客向けの充電器には「公開」の義務がある
商業施設や宿泊施設などに置く「目的地充電」の区分では、申請要件として次のことが求められます。いずれも設置後の運用に直結する内容です。
- 公道に面した入口から誰もが自由に出入りできる場所にあること
- 利用者を限定せず、他のサービスの利用や物品の購入を条件にしないこと(駐車料金などセンターが認める料金の徴収は可)
- 充電場所を示す案内板を入口に、路面表示(CHARGING POINT)を充電スペースに設置すること
- 充電器の場所、出力、利用可能時間、メンテナンス等による休止状況を、誰でもインターネット上で確認できること
- 充電料金を徴収すること、24時間利用できるかどうかを申告すること
実績報告では、設置場所の名称、出力、利用可能時間と定休日、故障・メンテナンスの状況を確認できるウェブサイトのURLを申告します。補助金を交付した充電器は、設置場所の名称・住所・出力・基数・口数がセンターのホームページで公表され、目的地充電ではこの掲載先も公表されます。故障したまま情報を更新しないと、要件の前提が崩れることになります。
一方、事務所・工場等の基礎充電は、社有車と従業員の通勤車のための区分で、来客用の駐車場に置くことはできません。公開の義務はありませんが、OCPP等の通信方式の申告など別の要件があります。社用車向けの要件は社用車・営業車のEV化と拠点での充電をご覧ください。
稼働状況の調査と書類の保管
申請の要件には、センターから充電設備の利用状況等の情報を求められた場合に、利用頻度等のデータを提供し、国への提供を了承することが含まれています。設置後には次のような調査があります。
- 稼働状況調査:補助金受給後に、稼働状況、利用頻度、運用について書面などで調査される。メールで調査票が届く場合もある
- 実地調査:設置場所や事務所に立ち入り、充電設備の使用・管理状況と会計帳簿等の保管状況を確認される
- 書類の保管:会計帳簿と見積書・契約書・発注書・請求書・領収書等は、設置工事が完了した日の翌年度(4月1日)から5年間、いつでも閲覧できるよう保管する。交付決定通知書と額の確定通知書は、保有義務期間中、書面で保管する
申請時には、設置する充電設備の5年先までの稼働見込み(稼働率)も申告しています。調査で実態と大きく離れていないか説明できるよう、利用データを残しておくと安心です。
タクシー・バス向け補助との違い
同じ充電器でも、環境省の商用車等の電動化促進事業(タクシー・バス分、日本自動車輸送技術協会執行)で設置した場合は、条件が異なります。
充電インフラ補助金
- 保有義務・処分制限:設置完了から5年
- 借地は5年間の設置許諾が必要
- 目的地充電は一般公開と料金徴収が必要
- 稼働状況調査・データ提供に協力
商用車等の電動化促進事業(タクシー・バス)
- 充電設備の処分制限:設置完了から6年
- 借地は6年以上の契約・許諾が必要
- 課金装置は使えない状態にする
- 15日以上稼働できない故障等は速やかに報告
車両の保有期間は、CEV補助金では乗用車等が原則4年、商用車等の電動化促進事業では法定耐用年数。
商用車等の電動化促進事業では、充電設備は一体的に導入した車両の充電に使うことが基本で、その車両の充電・稼働に支障のない範囲で他の車両にも使えます。制度の詳細はEVバス・EVタクシーの導入補助で解説しています。どちらの制度も、条件は年度ごとに見直されるため、交付を受けた年度の交付規程・手引きで確認することが大切です。
まとめ
補助金で設置した充電器は、設置後も5年(商用車等の電動化促進事業では6年)の保有と管理が求められ、譲渡・廃棄・移設には事前の承認が必要です。来客向けの目的地充電では、一般への開放、料金の徴収、インターネットでの情報公開が要件になっています。設置後の調査に備え、管理台帳、利用データ、証拠書類を保管しておくことが、補助金の返還を避ける近道です。
タンソーマンGXでは、充電設備の補助金について、制度の選定と申請から、実績報告、設置後の財産処分の相談までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- 次世代自動車振興センター 令和7年度補正 申請の手引き 充電設備(第1期・第2期)
- 次世代自動車振興センター 令和7年度補正「充電設備補助金」交付規程・手引き
- 日本自動車輸送技術協会 令和7年度(補正予算)商用車等の電動化促進事業(タクシー・バス)公募要領
- 次世代自動車振興センター 令和7年度補正 CEV補助金 応募要領 Ⅰ-1 重要なポイント
- e-Gov法令検索 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律
本記事の内容は2026年10月22日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



