公開 2026.10.22

脱炭素投資の融資に使える利子補給制度 ESG融資・地域脱炭素融資の仕組み

この記事では、脱炭素につながる設備投資の融資について、国が金利の一部を負担する「利子補給」の仕組みを解説します。環境省が令和8年度に実施しているバリューチェーン脱炭素促進利子補給事業を中心に、対象となる融資の条件、金利がどれだけ下がるか、事業者側に求められる報告を整理します。

利子補給とは:補助金ではなく「金利の値引き」

利子補給とは、事業者が金融機関から借りた資金の利息の一部を、国などが金融機関に支払う仕組みです。事業者が受け取るのは補助金ではなく、低い金利での融資です。設備費の一部が戻ってくる補助金と違い、借入れの総支払利息が減る形で効果が出ます。

環境省の制度では、利子補給金は事業者ではなく金融機関に支払われます。お金の流れは次のとおりです。

利子補給金の流れ(令和8年度 環境省事業)
環境省予算を措置
交付決定補助金
環境パートナーシップ会議執行団体(EPC)
金融機関の指定利子補給金
指定金融機関融資を実行
低利の融資元利の返済
融資先事業者設備投資とCO2算定

交付規程第3条・第11条より作成。利子補給金は交付対象融資の利子に充てられる。

ここで大切なのは、利子補給を使えるのは、環境パートナーシップ会議(EPC)が指定した「指定金融機関」からの融資に限られることです。取引先の銀行が指定を受けているかどうかが、最初の確認事項になります。

ESG融資・地域脱炭素融資から「バリューチェーン型」へ

ESG融資とは、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の要素を考慮して行う融資のことです。環境省は以前から「地域脱炭素融資促進利子補給事業」で、地域の脱炭素に資するESG融資の利子補給を行ってきました。

ただし令和8年度の地域脱炭素融資促進利子補給事業は、新規案件の募集を行わず、過去に交付決定された継続案件だけを受け付けています。新しく融資を受けて設備投資をする場合は、「バリューチェーン脱炭素促進利子補給事業」が窓口になります。この事業には、指定金融機関の種類に応じて2つの型があります。

令和8年度の指定金融機関の2つの型

バリューチェーン脱炭素型

  • 取引先企業と連携して脱炭素を支援した実績のある金融機関
  • 融資先は、取引先から排出量の把握や削減計画を求められている事業者
  • 要請に沿った削減計画の策定が必要

地域脱炭素化支援型

  • 地域企業の脱炭素を支援する体制を持つ地域金融機関
  • 地方銀行・第二地方銀行、信用金庫、信用組合など
  • 地域企業の脱炭素設備投資への融資が対象

交付規程第4条、EPC「令和8年度 指定金融機関の採択情報」より作成。

バリューチェーンとは、原材料の調達から製造・販売までの取引のつながりのことです。大手の取引先からCO2排出量の報告や削減を求められている中小企業が、設備投資の資金を低い金利で調達する場面を想定した制度といえます。指定金融機関の一覧はEPCのウェブサイトで公表されており、令和8年10月2日にも更新されています。

対象となる融資の条件

令和8年度の交付規程で定められた主な条件は次のとおりです。

  • 使い道:脱炭素に資する設備投資であること。省エネ性能の高い設備への更新、事務所の省エネ改修(断熱材や断熱サッシなど)、再エネ設備などが例示されています
  • 対象融資額の上限:1件あたり10億円(シンジケートローンは30億円)
  • 利子補給の期間:融資開始の日から3年間(償還期限が先に来る場合はその日まで)
  • 形式:証書貸付で、原則として固定金利。融資の開始日は原則として令和9年2月10日までに設定
  • 着工の時期:融資の実行と工事の着工は、原則として金融機関の交付申請の提出日以降であること
  • 工事の完了:令和10年9月30日までに完了すること

令和8年度は品目別の条件も加わりました。太陽光発電設備はペロブスカイト型の太陽電池に限られ、蓄電池はJC-STAR(IoT製品のセキュリティ適合ラベル)の取得が必須です。蓄電池だけを導入する融資は対象外です。車両はハイブリッド車や電気自動車などの次世代自動車などに限られます。中古設備や、土地の取得費・設計費・系統接続の負担金などは利子補給の対象になりません。

金利はどれだけ下がるか

令和7年度以降に交付決定された融資の利子補給利率は、融資の金利に応じて次のように決まります。

  • 融資利率が1.1%以上の場合:利子補給利率は1.0%
  • 融資利率が0.1%を超え1.1%未満の場合:融資利率から0.1%を引いた率
  • 融資利率が0.1%以下の場合:利子補給はなし

たとえば融資利率が年1.5%なら、そのうち1.0%分が利子補給の対象となり、事業者の実質的な負担は年0.5%相当になる計算です。貸付残高に対して半年ごとに計算されるため、元金の返済が進むほど補給額は小さくなります。なお、利子補給金は国の予算の範囲内で交付され、翌年度以降の利子補給は毎年度の予算成立が前提とされています。

事業者側に求められる手続きと報告

融資から報告までの流れ
  1. 指定金融機関に相談取引行の指定状況を確認
  2. 交付申請金融機関が令和9年1月29日までに提出
  3. 交付決定・契約決定後に金銭消費貸借契約
  4. 融資実行・着工原則として申請日以降
  5. CO2排出量の報告利子補給の年度から3年間

手続きの多くは金融機関が行いますが、事業者にも義務があります。自社のCO2排出量を算定し、利子補給を受ける年度から3年間、指定金融機関を通じてEPCに報告すること、そして算定状況の公表に同意することが条件です。算定は原則としてEEGS(省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム)を使いますが、エコアクション21の報告書や日本商工会議所などのツールで代えることもできます。

補助金との併用にも注意が必要です。同じ設備投資に国の他の補助金を併用することはできません。都道府県や市町村の補助金は併用できる場合がありますが、原資が国の補助金なら併用できません。補助金を受けて設備を導入する場合の資金繰りは融資と補助金の組み合わせや補助金は後払い つなぎ資金と資金繰りで解説しています。

利子補給と補助金のどちらが有利かは、投資額、借入期間、金利、補助率によって変わります。条件は年度ごとに見直されるため、検討の際は最新の交付規程とQ&Aで確認してください。

タンソーマンGXでは、脱炭素の設備投資について、補助金や利子補給などの支援制度の選定から、CO2排出量の算定、申請書類の作成までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。

参考資料

本記事の内容は2026年10月22日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。

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