
この記事では、補助金の申請で求められる「相見積もり」について、必要な見積の数、見積書に書かれているべき内容、見積先を選ぶときの注意点を整理します。令和7年度補正予算の省エネ・非化石転換補助金と、令和8年度の新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領を例に解説します。
相見積もりが求められる理由
相見積もりとは、同じ内容の設備や工事について、複数の事業者から見積を取って価格を比べることです。補助金は公的な財源から支払われるため、補助対象とする経費は経済的で妥当な価格であることが求められます。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領では、発注先の選定にあたって経済性の観点から可能な範囲で複数の見積を取り、最低価格を提示した者を選定するよう求めています。SIIの省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)の公募要領でも、補助対象経費は原則3者以上による価格競争等を実施した結果による最低価格を上限とするとしています。
つまり相見積もりは、単なる提出書類ではなく、補助金額の計算の基礎になるものです。
何者から見積を取る必要があるか
必要な見積の数は制度ごとに定められています。代表的な2つの制度を比べると次のとおりです。
新事業進出・ものづくり補助金(令和8年度 第1回)
- 可能な範囲で複数の見積を取り、最低価格の者を選定
- 発注先1件あたりの見積額の合計が50万円(税抜き)以上なら、3者以上の同一条件による見積が必要
- 建物費は入札または相見積もりが必要
省エネ・非化石転換補助金 設備単位型(令和7年度補正 4次)
- 異なる販売事業者3者以上への見積依頼・競争入札
- メーカーや機種の指定は可
- 最低価格の見積金額で交付申請
各制度の公募要領をもとに作成。条件は年度・公募回ごとに変わります。
新事業進出・ものづくり補助金では、中古設備を対象にする場合、3者以上の古物商の許可を得ている中古品流通事業者から、型式や年式が記載された相見積もりを取得していることが条件とされています。広告宣伝・販売促進費のように、金額にかかわらず複数者からの見積と価格の妥当性を示す証憑が求められる経費区分もあります。
見積書に書かれているべき内容
見積書は、数をそろえるだけでなく、比較できる内容になっている必要があります。SIIの公募要領では、次の点が示されています。
- 有効期限:交付申請時に期限等が有効な見積書であること
- 明細:補助対象経費と補助対象外経費が明確に判別できる見積明細を取得すること
- 発行日:3者以上の見積依頼・競争入札は、1次公募の公募要領公開日(2026年3月25日)以降の発行日であること
- 条件の統一:見積条件を統一していないなど、適正な価格競争が行われていないと判断された場合は再提出を求められることがある
新事業進出・ものづくり補助金でも「同一条件による見積」が求められています。設備の型式、数量、工事の範囲、搬入・据付の有無などをそろえて依頼しないと、価格を比べたことになりません。
見積の根拠は、申請時だけでなく実績報告の段階でも確認されます。新事業進出・ものづくり補助金では、100万円(税抜き)以上のシステム構築費を計上する場合、実績報告時に要件定義書(費用見積書を含む)または作業単価・工数などを示した開発費用算出資料の提出が必要とされています。「一式」とだけ書かれた見積書では内訳を説明できないため、依頼の段階で明細の提示を求めておくと後の手続きが円滑になります。
見積先の選び方と発注先
見積先を選ぶときの注意点
見積先の選び方にも制約があります。公募要領に示されている主な注意点は次のとおりです。
- 関係会社だけで固めない:SIIの公募要領では、見積依頼先に同一資本関係にある法人が含まれる場合、同一資本関係にない法人2者以上から見積書を取得することとされています。
- 販売実績のある事業者から取る:新事業進出・ものづくり補助金では、ペーパーカンパニーや販売実績がまったくない業者からの見積は認められません。
- 必要な許可・資格を確認する:同補助金では、建設業許可が必要な規模の建物で許可を持たない業者の見積は認められないとしています。SIIも、工事の請負先が必要な資格を有する事業者であることを見積時に確認するよう求めています。
- 申請を支援する者に発注しない:同補助金では、金融機関確認書を発行した金融機関や事業計画作成支援者への発注・見積は認められていません。
最低価格と発注先の関係
相見積もりの結果、最低価格の事業者に発注しなければならないのかは、制度によって扱いが異なります。SIIの省エネ・非化石転換補助金では、補助対象経費が最低価格であった販売事業者の見積金額を用いて交付申請を行いますが、交付決定後の発注は、競争見積を行った3者であればいずれの販売事業者でもよいとされています。この場合でも、補助対象経費の上限は最低価格です。
また、申請者自身の製品を調達する場合、SIIの公募要領では、利益を含めず原価(製造原価など)で補助対象経費に計上するとしています。
特別仕様で販売会社が1者しかないなど、競争によることが困難な場合の例外が設けられている制度もありますが、その扱いは公募要領に定められた範囲に限られます。
よくある不備
- 3社の見積で設備の型式や工事範囲が異なり、比較になっていない
- 見積の有効期限が交付申請時点で切れている
- 補助対象外の工事費や撤去費が設備費と一緒に計上され、区分されていない
- 見積先の1社が自社の関係会社で、独立した見積が足りない
いずれも、交付申請時の審査で修正や再提出を求められる原因になります。依頼前に条件をそろえておくことが、手戻りを防ぐいちばんの方法です。
見積取得の進め方
- 仕様を決める型式・数量・工事範囲を文書にする
- 同一条件で依頼資本関係のない複数社に依頼
- 内容を確認明細・有効期限・対象外経費の区分
- 交付申請最低価格を基に経費を計上
- 交付決定後に発注制度のルールに沿って発注先を決定
見積の取得は交付決定前に行うのが通常ですが、発注は必ず交付決定後です。この順番は交付決定前に契約・発注してはいけない理由で解説しています。見積に関する条件は年度ごとに変わるため、必ず最新の公募要領で確認してください。
タンソーマンGXでは、補助対象となる設備の仕様整理から見積依頼の条件づくり、交付申請、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- 中小機構 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)
- SII 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)公募要領(4次公募)
- SII 省エネ・非化石転換補助金 申請方法
本記事の内容は2026年10月21日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



