
この記事では、国・都道府県・市区町村の補助金を同じ設備投資に組み合わせられるかについて、公募要領に示された「重複受給」の考え方を整理します。国の補助金同士の併用、国と自治体の補助金の併用、税制との併用のそれぞれについて、令和7年度補正・令和8年度の資料をもとに解説します。
併用の基本は「同じ経費に重ねない」
補助金の併用を考えるときの基本は、同じ経費に複数の補助金を重ねて受け取らないことです。多くの公募要領は、この重複を明確に禁じています。
中小機構の「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」第1回公募要領では、国(独立行政法人等を含む)が助成する制度との重複を含む事業や、国の補助金と補助対象経費が重複する事業を補助対象外としています。中小企業庁が所管する他の補助金(中小企業省力化投資補助事業など)と同一の補助対象経費を含む事業も対象外です。
SIIが執行する令和7年度補正予算の省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)の公募要領でも、本補助金と他の補助金等で補助対象経費が重複する場合の併用はできないとしています。
一方で、経費が重ならなければ、複数の制度を使い分けられる場合があります。たとえば、ある設備は国の補助金、別の設備は自治体の補助金、というように対象を分ける考え方です。ただし、この場合も各制度の要件を個別に満たす必要があり、可否は制度ごとの判断になります。
国の補助金同士は原則として重ねられない
国の補助金同士では、同じ経費への併用は原則として認められません。新事業進出・ものづくり補助金では、複数の補助金に同時期に応募することは可能としつつ、複数に採択された場合は交付を受ける補助金を1つだけ選んで交付申請するよう求めています。選ばずに複数で交付決定を受け、補助金を受領していたことが発覚した場合は、交付決定日が遅い方の交付決定を取り消し、返還を求めるとしています。
また同補助金では、これまでに交付決定を受けた補助金や現在申請中の補助金の実績を応募時に入力する必要があり、記載がない場合は虚偽申請として不採択になります。中小機構と中小企業庁所管の他補助金事務局の間で、申請・交付の情報が共有されることも明記されています。重複は事務局側で確認される前提で、申請段階から正確に申告することが大切です。
国と自治体の補助金は「財源」で扱いが分かれる
国と自治体の補助金の併用は、自治体の補助金の財源によって扱いが変わることがあります。自治体の補助金の中には、国からの交付金などを財源にしているものがあるためです。補助金適正化法でも、国の補助金を財源として国以外の者が交付する給付金を「間接補助金等」と定義しています。
SIIの省エネ・非化石転換補助金の公募要領は、他の補助金との重複を禁じたうえで、地方公共団体の一般財源(地方税や地方交付税交付金など使途が特定されていない財源)により実施する補助金等との併用は認めるとしています。判断に迷う場合は、SIIと地方公共団体の双方に問い合わせるよう求めています。
併用できない
- 補助対象経費が重複する他の国の補助金
- 国の財源を使った自治体の補助金で、経費が重複するもの
併用が認められる
- 地方公共団体の一般財源による補助金等
- SIIがよくある質問で併用可と示したもの
- 中小企業経営強化税制
SII 公募要領(4次公募)をもとに作成。他の制度では扱いが異なります。
自治体の補助金が国の財源を使っているかどうかは、申請者からは分かりにくいものです。自治体の要綱で国の補助金との関係を確認し、分からない場合は双方の窓口に確認してから申請してください。
自治体側が国の補助金との併用を前提にしている例
自治体の制度の中には、国の補助金と組み合わせることを前提に設計されているものもあります。東京都の「EVバス・EVトラック導入促進事業」(令和8年度、クール・ネット東京が窓口)では、都の補助金を申請する場合、原則として環境省の補助を併用するよう案内しています。
- 国の補助を申請できる場合は、原則として併用し、都の申請時に国の交付決定通知書兼額確定通知等を添付する
- 国の補助を併用しない場合は、未申請の理由を申告する様式を添付する
- 助成額の算定では、国の補助金の額などを差し引く
この例のように、自治体の補助金は「国の補助金を差し引いた残りの一部」を対象とする設計になっていることがあります。併用できるかだけでなく、併用したときに金額がどう計算されるかも要綱で確認する必要があります。
- 国の補助を申請環境省の補助事業
- 国の交付決定・額の確定通知書を受け取る
- 都に申請国の通知書を添付
- 都の助成額を算定国の補助額を差し引いて計算
クール・ネット東京「EVバス・EVトラック導入促進事業」(令和8年度)の案内をもとに作成。
税制との併用
補助金と税制優遇の併用についても、制度ごとに扱いが定められています。SIIの省エネ・非化石転換補助金の公募要領は、税制優遇との併用可否はそれぞれの税制担当窓口に問い合わせるよう求めつつ、中小企業経営強化税制との併用は可能であると明記しています。税制を適用する際の取得価額の考え方などは、顧問税理士と確認してください。
併用を検討するときの確認手順
- 導入する設備・工事を経費ごとに分け、どの制度の対象になりうるかを整理する
- 各制度の公募要領・要綱で「他の補助金との併用」の項目を確認する
- 自治体の補助金の財源(国の交付金を使っているか)を要綱や窓口で確認する
- 併用したときの補助金額の計算方法(差し引きの有無)を確認する
- 申請の順番と時期(国の交付決定を待つ必要があるか)を確認する
- 申請時に、他の補助金の申請・受給状況を正確に申告する
併用のルールは年度ごとに見直されることがあります。必ず最新の公募要領と要綱で確認してください。自治体の補助金の探し方は、関連記事でも解説しています。
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参考資料
- 中小機構 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)
- SII 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)公募要領(4次公募)
- クール・ネット東京 EVバス・EVトラック導入促進事業(令和8年度)
- e-Gov法令検索 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律
本記事の内容は2026年10月21日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



