公開 2026.10.22

畜産・酪農で使える省エネ・再エネ補助金

この記事では、畜産・酪農の経営体が省エネ設備や再エネ設備を導入するときに使える国の補助事業を整理します。畜産クラスター事業の「省エネ優先枠」の要件、生乳の暑熱対策、家畜排せつ物のバイオガス利用、畜舎屋根の太陽光の扱いが、令和7年度補正・令和8年度の資料に沿って分かります。

畜産・酪農のエネルギーコスト

酪農では、搾乳機やバルククーラー(生乳の冷却装置)、換気扇、送風機、温水をつくるボイラーなどが電気や燃料を使います。農林水産省の「令和6年牛乳生産費」では、搾乳牛1頭あたりの「光熱水料及び動力費」は全国で37,812円で、前年から2.5%増えました。都府県は北海道より高い水準です。

搾乳牛1頭あたりの光熱水料及び動力費(令和6年)
  • 都府県40,375円
  • 全国37,812円
  • 北海道35,774円

農林水産省「令和6年 畜産物生産費(牛乳生産費)」より作成。

畜産統計(令和8年2月1日現在)では、乳用牛の飼養戸数は10,800戸で前年から4.4%減った一方、1戸あたりの飼養頭数は119.1頭に増えています。規模が大きくなるほど設備のエネルギー使用量も増えるため、更新時に省エネ型を選ぶ効果は大きくなります。

畜産クラスター事業の「省エネ優先枠」

畜産・酪農向けの代表的な支援が、農林水産省の「畜産・酪農収益力強化整備等特別対策事業」(畜産クラスター事業)です。令和7年度補正予算では591億円(所要額)が措置され、施設整備と機械導入の補助率はいずれも1/2以内です。機械導入事業の実施主体は公益社団法人中央畜産会です。

機械導入のうち収益性向上対策には「省エネ優先枠」が設けられています。事業のQ&Aによると、主な条件は次のとおりです。

  • 成果目標は、導入する機器に関わる電力使用量または燃料使用量を5%以上削減すること。伝票で前年同月と比べて確認する
  • キュービクルのように契約単価を下げる機器は、電気料金の5%削減でもよい
  • 重油・灯油の温水ボイラーからヒートポンプへの切り替えも対象
  • 換気扇・細霧装置・送風機・冷暖房機は、インバーター制御装置と一体で導入する場合に限り対象
  • バルククーラーはヒートポンプと一体で導入する場合に限り対象で、その場合はプレートクーラーや冷水・温水タンクも対象。容量は現有機を下回らないこと
  • パワーコントローラー付き蓄電池も対象。太陽光発電・バイオマス発電の装置そのものは対象外

令和7年度補正分の機械導入の要望受付は、中央畜産会での受理期限が2026年3月16日で、すでに終わっています。現在は施設整備事業などの追加要望調査が掲載されています。次の受付時期は、農林水産省と地域の窓口の案内で確認してください。

省エネ優先枠で機器を導入する流れ
  1. 使用量の記録電力・燃料の伝票を月ごとに保管
  2. 機器の選定インバーター一体などの条件を確認
  3. 要望の提出受付窓口と期限を確認
  4. 導入割当・交付決定の後に発注
  5. 効果の確認前年同月比で5%以上の削減

暑熱対策と生乳の品質

令和7年度補正の「生乳暑熱対応推進緊急対策」は、夏の暑さによる乳量や乳質の低下を防ぐための対策を支援します。資材・機器の導入は補助率1/2以内で、屋根の遮熱塗料や断熱屋根材、日よけ、インバーター制御を含む換気扇、細霧装置、送風機、スポットエアコンなどが例に挙げられています。事業期間は令和8年度です。

暑熱対策は電力使用量を増やす方向にも働くため、インバーター制御の機器を選ぶなど、省エネと両立させる設計が大切です。

家畜排せつ物のバイオガス利用

家畜排せつ物をメタン発酵させてガスをつくるバイオガスプラントには、農林水産省の「みどりの食料システム戦略推進交付金」のうち「バイオマスの地産地消」が使えます。令和8年度予算と令和7年度補正予算で措置され、補助率は定額または1/2以内です。調査・設計から施設整備、機能強化、消化液(バイオ液肥)の散布車の導入までが対象で、売電にとどまらず熱利用や災害時の備えも含めたエネルギーの地産地消を目指す取り組みが求められます。

複数の畜産経営体が共同で使う家畜排せつ物処理施設には、農山漁村地域整備交付金の「畜産環境総合整備事業」もあります。参加者3人以上などの要件があります。

目的別に選ぶ主な支援

設備の省エネ

  • 畜産クラスター事業の省エネ優先枠
  • 補助率1/2以内
  • 電力・燃料5%以上削減

暑熱対策

  • 生乳暑熱対応推進緊急対策
  • 補助率1/2以内
  • 遮熱・換気・細霧など

再エネ・バイオガス

  • みどり交付金(バイオマスの地産地消)
  • 環境省の自家消費型太陽光
  • 熱利用・自家消費が重視

令和7年度補正・令和8年度の農林水産省資料、環境省事業の公募要領より作成。

畜舎の屋根に太陽光を載せる場合

畜産クラスター事業のQ&Aでは、事業で整備した畜舎の屋根に太陽光パネルを設置することは可能とされ、都道府県への模様替届が必要です。パネル自体は補助の対象外です。

自家消費型の太陽光と蓄電池には、環境省の「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」があり、株式会社などの民間企業が申請できます。令和8年度は太陽光と蓄電池の同時導入、自家消費率50%以上、逆潮流をしないことが要件で、補助額は自己所有の太陽光が4万円/kW、業務・産業用の蓄電池が3.9万円/kWhです。令和8年度の一次・二次公募はいずれも締め切られています(自家消費型太陽光発電の補助金)。農業施設での再エネ全般は営農型太陽光・農業施設の再エネ導入支援で解説しています。

申請前に確認しておくこと

  • 電気・燃料の伝票を月ごとに保管し、前年同月と比べられるようにしておく
  • 事業ごとに申請の窓口(都道府県、地域の協議会、実施主体)が異なるため、早めに相談する
  • 国と自治体の補助を同じ経費に重ねられるか確認する
  • 交付決定や割当の前に発注しない

農林水産省の事業は、年度ごとに対象機器や要件が見直されます。申請前に最新の実施要綱やQ&Aを必ず確認してください。

タンソーマンGXでは、畜産・酪農の経営体に向けて、太陽光・蓄電池や省エネ設備の制度選定から申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。

参考資料

本記事の内容は2026年10月22日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。

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