
この記事では、「補助金」と「助成金」の違いを、法律上の位置づけと実務上の手続きの両面から整理します。あわせて、法人が設備投資で使える国・自治体の公的支援にどのような種類があるかを、令和8年度(2026年度)の公表資料をもとに一覧できるようにまとめます。
法律上はどちらも「返済不要の給付金」
国の補助金の基本ルールを定めているのが「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(以下、補助金適正化法)です。この法律の第2条では、「補助金等」を、国が国以外の者に交付する補助金、負担金、利子補給金、そのほか相当の反対給付を受けない給付金と定義しています。
つまり、名称が「補助金」でも「助成金」でも、国から事業者へ反対給付なしに支払われるお金であれば、同じ法律の考え方が及びます。交付決定、実績報告、額の確定、返還命令といった一連の手続きも、この法律が土台になっています。
そのため、「補助金は返さなくてよいが助成金は返す」「助成金なら使い道が自由」といった区別は正確ではありません。どちらも交付の目的に沿って使うことが前提で、目的外に使えば返還を求められます。
実務上の違いは「審査の性格」と「所管」
法律上の区別がない一方で、実務では呼び方によっておおよその傾向があります。代表的なのは、経済産業省・中小企業庁や環境省などが公募する設備投資・新事業向けの「補助金」と、厚生労働省が所管する雇用・労働分野の「助成金」です。
補助金(設備投資・新事業など)
- 公募期間を区切って募集
- 事業計画を審査し、評価の高い順に採択
- 予算の範囲内で採択件数が決まる
- 経済産業省・環境省などが中心
助成金(雇用・労働分野など)
- 雇用保険適用事業所の事業主が主な対象
- 各助成金の支給要件を満たすかを審査
- 支給要領に定める期間内に申請
- 厚生労働省・労働局などが窓口
あくまで傾向です。個々の制度の手続きは、それぞれの公募要領・支給要領で確認してください。
たとえば中小機構が事務局を務める「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の第1回公募要領では、事業計画を審査し、評価の高いものから補助金交付候補者として採択すると明記されています。申請すれば必ず受け取れるわけではなく、他の申請者との比較で結果が決まります。
一方、厚生労働省の「令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)」では、雇用関係助成金の受給対象を、雇用保険適用事業所の事業主で、期間内に申請し、審査に協力する事業主と整理しています。そのうえで各助成金の個別要件を満たす必要があるとしています。
設備投資で使える公的支援の全体像
法人が設備投資を検討するときに候補となる公的支援は、補助金と助成金だけではありません。資金繰りや税負担を軽くする制度も含めて、次のように整理できます。
- 国の補助金新事業進出・ものづくり補助金、省エネ・非化石転換補助金など。公募と審査がある
- 自治体の補助金・助成金都道府県や市区町村が独自に設ける制度。国の制度と組み合わせる例もある
- 国の助成金業務改善助成金など、賃金の引上げと設備投資を組み合わせる制度
- 政策融資日本政策金融公庫などの融資。補助金の交付決定を条件とする制度もある
- 税制設備投資に伴う税額控除や特別償却などの優遇措置
設備投資の分野でも助成金が使える場合があります。厚生労働省の業務改善助成金は、事業場内で最も低い賃金を引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行う中小企業事業主に、経費の一部を助成する制度です。令和8年4月8日時点の同省パンフレットでは、助成率を設備投資等に要した経費の3/4〜4/5、上限額を引上げ額と人数に応じて30万円〜600万円としています。申請時期や要件は年度ごとに変わるため、申請前に最新の要綱を確認してください。
政策融資の例としては、日本政策金融公庫の「省力化支援資金」があります。中小企業省力化投資補助事業などの交付決定を受けた方を対象に、設備資金と長期運転資金を融資する制度です。補助金と融資を組み合わせる考え方は、補助金は後払い つなぎ資金と資金繰りの組み立て方で詳しく解説しています。
どちらにも共通する守るべきルール
補助金も助成金も、公的な財源から支払われるお金です。名称にかかわらず、次の点は共通して意識しておく必要があります。
- 交付決定の前に発注しない:多くの補助金では、交付決定前に契約・発注した経費は対象外です。たとえばSIIが執行する令和7年度補正予算の省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)の公募要領でも、交付決定通知の前に発注等を完了させた事業は補助対象にならないとしています。
- 原則として後払い:事業の完了後に実績を報告し、金額が確定してから支払われます。
- 取得した設備は自由に処分できない:補助金適正化法第22条により、補助事業で取得した財産を承認なく目的外に使用・譲渡・貸付・担保提供することは制限されます。
- 不正には重い罰則:交付決定が取り消されて返還を命じられた場合、受領日から年10.95%の加算金がかかります(同法第19条)。偽りや不正の手段で交付を受けた場合は、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、またはその併科の対象になります(同法第29条)。
自社に合う制度を選ぶ手順
制度選びでは、名称から入るよりも、自社の投資計画から逆算するほうが確実です。
- 投資の目的を決める省エネ、新事業、省力化、賃上げなど
- 候補制度を洗い出す国・都道府県・市区町村・融資・税制
- 要件と時期を照合公募期間と工事・納期の時期が合うか
- 併用の可否を確認同じ経費に重ねて受けられるか
- 申請準備GビズIDや見積書を早めにそろえる
特に注意したいのは公募の時期です。補助金は年度ごとに予算が組まれ、名称や補助率、要件が毎年のように見直されます。前年度の情報をそのまま前提にせず、必ずその年度の公募要領で確認してください。
まとめ
補助金と助成金は、法律上はどちらも返済不要の給付金で、目的に沿った使用と報告の義務を伴う点は同じです。実務上は、審査で採択を競う補助金と、支給要件の充足を確認する助成金という性格の違いがあります。設備投資では、国の補助金、自治体の制度、助成金、融資、税制を組み合わせて検討すると、使える支援を取りこぼしにくくなります。
タンソーマンGXでは、省エネ設備や太陽光・蓄電池などの投資について、使える制度の選定から申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- e-Gov法令検索 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律
- 厚生労働省 令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)
- 中小機構 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)
- SII 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)公募要領(4次公募)
- 日本政策金融公庫 省力化支援資金
本記事の内容は2026年10月21日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



