
この記事では、タクシー事業者・バス事業者などがEV(電気自動車)のタクシーやバスを導入するときに使える国の補助金を整理します。中心となるのは、環境省の「商用車等の電動化促進事業」(令和7年度補正予算)のうち、公益財団法人日本自動車輸送技術協会(以下、JATA)が執行するタクシー・バス分です。申請できる事業者、補助額の決まり方、充電設備の補助、申請の種類と導入後の義務が分かります。
制度の概要(令和7年度補正予算)
商用車等の電動化促進事業は、トラック、タクシー、バス、建設機械と、それらと一体的に導入する充電設備を補助する環境省の事業です。制度概要の資料では、令和7年度補正予算で300億円と、国庫債務負担行為(翌年度以降の支払を約束する予算)60億円が措置されたとされています。執行団体は車種ごとに分かれ、タクシー・バスはJATAが担当します。
- 予算総額(タクシー・バス分):105億円。このほか国庫債務負担行為分として令和9年度に39.3億円(バス車両と一体の充電設備等のみ)
- 受付期間:タクシー等車両、バス車両、それぞれの充電設備等とも、2026年4月24日(金)〜2027年1月29日(金)
- 審査の順番:原則として申込み順。予算残額が2割程度になると、その日から30日後までの申請をまとめて審査し、初めて申請する事業者や脱炭素先行地域の事業所に導入する事業者を優先するなど総合的に判断する
乗用車向けのCEV補助金は事業用(緑ナンバー)の車両を対象外としているため、営業用のタクシー・バスはこの事業が受け皿です。トラックについてはEVトラック・商用車の補助金 物流事業者向けで解説しています。
申請できる事業者と対象車両
公募要領では、補助金を申請できる者として次を挙げています。
- タクシー等車両を事業に使う者、バス車両を運行に使う者
- タクシー等車両のリース、バス車両のリース・レンタルを業とする者
- 特定旅客自動車運送事業者に自ら所有・使用する車両を貸与し、旅客運送を委託する学校法人・企業等(送迎バスなど)
- 旅客自動車運送事業の分社で設立した子会社(出資比率50%超)に車両を貸与する者
- 車両と一体的に導入される充電設備等を所有する者、地方公共団体、これらのコンソーシアム
申請者は、国が定める目標(目安)に準じた「非化石エネルギー自動車の導入計画」を設定する必要があります。令和4年度のCO2排出量が20万トン以上の多排出者は、排出削減目標の設定・公表などの取組を表明することが条件です(GXリーグ参加者は実施するものとみなされます)。
対象車両は、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、燃料電池自動車、水素内燃機関型自動車です。
- タクシー等車両:旅客自動車運送事業または自家用有償旅客運送に使う乗車定員10人以下の車両。JATAの「補助対象車両一覧」の車両(CEV補助金の対象車)か、事前登録された車両
- バス車両:乗車定員11人以上で、JATAに事前登録された車両
- 登録期間:2026年1月13日から2027年3月3日まで(購入後に申請する「実績申請」は2027年1月29日まで)に新車として新規登録する車両。割賦販売による所有権留保は認められません
短期間の実証運行など、反復・継続した走行が見込まれない場合は対象外です。
補助額の決まり方
車両の補助額は、JATAが公表する「補助対象車両一覧」の基準額が上限です。車両本体が値引きされている場合は、値引額に応じた金額が基準額から差し引かれます。
- バス車両と乗車定員9人以上のタクシー等車両:電気自動車・プラグインハイブリッド自動車は値引額の2/3、燃料電池自動車・水素内燃機関型自動車は1/2
- 乗車定員8人以下のタクシー等車両:電気自動車は値引額の1/4、プラグインハイブリッド自動車は1/5、燃料電池自動車・水素内燃機関型自動車は1/3
充電設備は、急速充電器、普通充電器、V2H、外部給電器、高圧受電設備などが対象です。急速・普通充電器などの機種は、経済産業省の充電インフラ補助金で交付対象となっている型式に限られます。補助率は、出力150kW以上・90kW以上の急速充電器が機器・工事とも1/1、50kW以上・10kW以上の急速充電器と普通充電器が機器1/2・工事1/1で、いずれも上限があります。
JATA「令和7年度(補正予算)商用車等の電動化促進事業(タクシー・バス)公募要領」。普通充電器の工事費上限は1台当たり95万〜135万円。機器の上限額は型式ごとに定められている。
高圧受電設備・設置工事費は補助率1/1で、設備総出力に応じて上限が300万円(50kW以上)から900万円(350kW以上)まで定められています。導入計画に書いた2030年度までの導入台数に合わせた規模で申請できる点が特徴です。営業所の契約電力への影響はEV充電器と契約電力で解説しています。
申請の種類と手続きの流れ
申請には「通常申請」「実績申請」「複数年度申請」「国庫債務負担行為を活用した申請」があります。
- 導入計画の作成非化石エネルギー自動車の導入目標
- 交付申請JATA電子申請システムで提出
- 交付決定標準審査期間は不備解消から30日
- 登録・設置車両の新規登録、充電設備の契約・着工
- 完了実績報告2027年3月10日まで
- 額の確定・精算払口座名義は申請者
車両は申請時点で契約・発注してよいが、新規登録は交付決定の後。充電設備は交付決定の後に契約・発注・着工する。
- 実績申請:車両を購入・登録した後に申請する方法で、車両のみが対象です。充電設備には実績申請がありません。
- 複数年度申請:車両の導入と充電設備の設置を別の年度に行う場合の方法です。各年度に交付申請が必要で、2年度目は政府の予算措置が前提です。
- 国庫債務負担行為による申請:2027年4月1日から12月17日までに新規登録されるバス車両(自治体・公営企業が使うもの、燃料電池バスなど納車まで長期間を要するもの)と、一体で整備する充電設備が対象です。補助金の支払いは令和9年度になります。
複数年度申請と国庫債務負担行為による申請は、事前にJATAへの相談が求められています。充電設備の設置場所は申請者の敷地(事業所、営業拠点)等で、借地の場合は6年以上の契約・許諾が必要です。また、設置する口数は車両台数以下とし、課金装置は使えない状態にしておく必要があります。
導入後の義務
補助を受けた後も、次のような義務があります。
- 事業報告:車両の補助を受けた事業者は、事業完了日からその年度末までと、その後の1年間について、年度ごとに年度終了後30日以内にCO2削減効果に関する事業報告書を提出
- 処分制限:車両は登録日から法定耐用年数、充電設備は設置完了から6年間。期間内に売却等をする場合は事前にJATAの承認が必要で、原則として補助金の一部を返還
- 不具合の報告:車両の運行や充電器の稼働が15日以上できない見込みの故障・事故などは、速やかにJATAへ報告
- 表示:環境省の補助事業である旨のステッカーの貼付など
国の他の補助金と同じ車両等に重ねて補助を受けることはできません。充電設備を含めた維持管理の考え方は補助金で設置した充電器の維持管理で詳しく解説しています。
まとめ
EVタクシー・EVバスの導入には、環境省の商用車等の電動化促進事業(タクシー・バス分、JATA執行)が使えます。令和7年度補正の受付は2027年1月29日までで、予算残額が2割程度になると審査方法が変わります。車両は基準額と値引額で補助額が決まり、充電設備や高圧受電設備は車両と一体の場合に限って補助されます。最新の受付状況は申請前にJATAのお知らせで確認してください。
タンソーマンGXでは、運輸事業者の車両電動化について、導入計画の整理から補助金の申請書類の作成、完了実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- 環境省 令和7年度(補正予算)商用車等の電動化促進事業の公募について
- 環境省 商用車等の電動化促進事業の概要
- 日本自動車輸送技術協会 令和7年度(補正)商用車等の電動化促進事業(タクシー・バス)
- 日本自動車輸送技術協会 同 公募要領(2026年4月24日)
- 次世代自動車振興センター 令和7年度補正 CEV補助金 応募要領 Ⅰ-1 重要なポイント
本記事の内容は2026年10月22日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



