
この記事では、脱炭素につながる設備投資の税負担を軽くする「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」(以下、CN投資促進税制)を解説します。令和8年度税制改正で見直された税額控除率と特別償却率、認定を受けるための「炭素生産性」の要件、手続きの順番、補助金と組み合わせるときの注意点が分かります。
CN投資促進税制とは
CN投資促進税制は、産業競争力強化法に基づく計画認定を受けた事業者が、生産工程などの脱炭素化と付加価値の向上を両立する設備を導入した場合に、法人税(個人事業主は所得税)の税額控除か特別償却を受けられる制度です。補助金のように現金が交付されるのではなく、納める税金が減る、または前倒しで費用にできる仕組みです。
- 税額控除:設備の取得価額に一定の率を掛けた額を、その年度の法人税額から差し引く措置です。
- 特別償却:通常の減価償却に上乗せして、取得価額の一定割合を初年度に費用にできる措置です。税額の総額は変わらず、納税の時期を後ろにずらす効果があります。
経済産業省の制度ページでは、対象となる投資額は500億円まで、控除できる税額は法人税額(所得税額)の20%までとされています。投資額の下限はありません。
令和8年度税制改正で何が変わったか
財務省の「令和8年度税制改正の大綱」で、CN投資促進税制は特別償却率と税額控除率を見直したうえで、適用期限を2年延長することになりました。経済産業省の制度ページ(2026年9月30日更新)では、2028年3月31日までに計画の認定を受け、認定日から3年を経過する日までに設備を取得し事業に使うことが条件とされています。
見直しの中身は、税制の優遇を小さくする一方で、求める炭素生産性の向上率を引き上げるものです。上位区分の税額控除率の変化は次のとおりです。
財務省「令和8年度税制改正の大綱」。特別償却率は企業区分を問わず50%から30%に下がりました。
あわせて、大企業が取引先である国内の中小企業の排出削減を支援する「サプライチェーン連携」を行う場合の特例が設けられました。大綱では、連携企業の炭素生産性を事業所単位で30%以上向上させる計画と、費用負担を明記した合意書などが要件として示されています。
認定の要件 「炭素生産性」を何%上げるか
炭素生産性とは、付加価値額をエネルギー起源のCO2排出量で割った値です。付加価値額は「営業利益+人件費+減価償却費」で計算します。同じ付加価値をより少ないCO2で生み出せるほど、炭素生産性は高くなります。
認定を受けるには、計画の開始後3年以内に炭素生産性を一定以上高める計画を作ります。そのうえで、計画に記載した設備のうち、導入前後で事業所の炭素生産性を1%以上高める設備(生産工程効率化等設備)が税制の対象になります。
中小企業者等
- 炭素生産性22%以上:税額控除10%
- 炭素生産性17%以上:税額控除5%
- いずれも特別償却30%を選択可
中小企業者等以外
- 炭素生産性25%以上:税額控除8%
- 炭素生産性20%以上:税額控除3%
- 特別償却30%を選択可
- サプライチェーン連携をする特定大企業等は要件が20%・15%
経済産業省「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」ページより作成。
計算では、次の点に注意が必要です。
- 電力会社の料金メニューを再エネメニューに切り替えたことによる削減は認められません。目標年度も基準年度と同じ排出係数で計算します。
- J-クレジットなどのクレジットによる削減量は計算に加えられません。
- CO2排出量の算出方法は、省エネ法の定期報告と基本的に同じです。定期報告の対象事業者は、既に計算している値を使えます。対象外の事業者向けには、経済産業省が計算ツールを公開しています。
- 広く一般に流通するLED照明や、快適性を確保するためのエアコンは対象外です。
計画認定から税務申告までの流れ
CN投資促進税制は、先に計画の認定を受け、その後に設備を取得する順番が決まっています。認定前に取得した設備は対象になりません。
- 事前相談認定予定の約2か月前に、事業を所管する省庁へ
- 計画の申請原則Web申請。申請書と添付書類を提出
- 計画の認定設備が税制対象かの確認も審査とあわせて行う
- 設備の取得・事業供用認定日から3年以内。据付・試運転を終え稼働
- 税務申告供用した年度の確定申告で明細書と認定書の写しを添付
- 実施状況の報告計画期間中は毎年度提出
経済産業省の資料では、事前相談の開始から正式申請までは概ね1〜2か月程度とされています。Q&Aでは、2028年3月31日の認定期限に間に合わせるため、2027年中の申請が望ましいと案内されています。
「事業の用に供した」とは、機械を工場に搬入しただけではなく、据え付けて試運転を終え、生産を始めた時点を指します。年度末に設備が届く計画では、どの年度の申告で適用するかを事前に確認しておく必要があります。
補助金と組み合わせるときの注意点
経済産業省のQ&Aでは、補助金との併用は可能とされています。ただし、補助金を受けて圧縮記帳をした場合は、圧縮記帳後の金額が税務上の取得価額になります。補助金の分だけ、控除や償却の基になる金額が小さくなる点に注意してください。圧縮記帳の考え方は「補助金は課税される?圧縮記帳と国庫補助金の会計処理」で解説しています。
- 他の税制との重複:同じ設備に複数の税制を重ねて使うことはできません。中小企業経営強化税制などとは、設備ごとにどちらを使うかを選びます。固定資産税の特例とは重複して使えます。中小企業経営強化税制は「中小企業経営強化税制 補助金と併せて検討したい税制優遇」をご覧ください。
- 中古品・修繕は対象外:中古品と貸付用の設備は対象外です。既存設備の修繕も対象になりません。
- リースの扱い:所有権移転リースは税額控除・特別償却の両方、所有権移転外リースは税額控除のみが対象です。オペレーティングリースは対象外です。
- 使い分け:同じ設備に税額控除と特別償却を併用することはできませんが、設備ごとに使い分けることはできます。
補助金は交付決定前の発注が認められず、CN投資促進税制は計画認定前の取得が認められません。両方を使う場合は、補助金の交付決定と計画の認定の両方を待ってから発注する工程を組む必要があります。制度の内容は年度ごとの税制改正で変わるため、申請前に最新の資料を確認してください。
タンソーマンGXでは、脱炭素設備の導入に使える補助金の選定から申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- 経済産業省 カーボンニュートラルに向けた投資促進税制
- 経済産業省 エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画(CN税制)の申請方法・審査のポイント
- 経済産業省 エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画(CN税制)Q&A
- 財務省 令和8年度税制改正の大綱
- 経済産業省 令和8年度 経済産業関係税制改正について(令和7年12月)
本記事の内容は2026年10月22日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



