
この記事では、中小企業省力化投資補助金(一般型)の申請で押さえておきたいポイントを、2026年10月16日に締め切られた第8回の公募要領をもとに解説します。満たすべき基本要件、審査で評価される観点、加点項目、口頭審査への備え、次回の第9回の予定が分かります。
一般型の基本をおさらい
一般型は、人手不足に悩む中小企業等が、自社の業務に合わせて設計した「オーダーメイド設備」を導入する費用の一部を補助する制度です。オーダーメイド設備とは、ICT、IoT、AI、ロボット、センサーなどを使い、外部のシステムインテグレータとの連携などを通じて、個々の業務に応じて専用に設計された機械装置やシステムのことです。
第8回公募要領では、補助率は中小企業が1/2(最低賃金引上げの特例で2/3)、小規模企業者・小規模事業者と再生事業者が2/3、補助上限額は従業員数に応じて750万円から8,000万円(大幅賃上げの特例で1,000万円から1億円)です。事業実施期間は交付決定日から17か月以内です。カタログ注文型との違いはカタログ注文型と一般型の違いで解説しています。
まず確認したい基本要件
一般型では、次の要件をすべて満たす3〜5年の事業計画を作る必要があります。
- 労働生産性:年平均成長率4.0%以上の向上。労働生産性は(営業利益+人件費+減価償却費)÷労働者数で計算します。
- 1人当たり給与支給総額:年平均成長率3.5%以上の増加。自社で目標値を決め、交付申請までに従業員や役員に表明します。
- 事業場内最低賃金:毎年、事業を行う都道府県の最低賃金+30円以上の水準とすること。
- 一般事業主行動計画:従業員21人以上の場合、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画を「両立支援のひろば」で公表すること。
給与支給総額の目標を達成できなかった場合は、達成率に応じて補助金の返還を求められます。年平均成長率が0以下の場合は全額返還です。賃上げ目標は「採択されるための数字」ではなく、確実に実行できる数字で設定することが大切です。賃上げ要件の考え方は賃上げ要件の注意点でも解説しています。
対象にならない事業
汎用設備やパッケージソフトを単体で導入するだけの事業は対象外です。ただし、導入環境に合わせて周辺機器や機能を変える場合や、汎用設備を組み合わせてより高い省力化効果を生む場合は、オーダーメイド設備とみなされます。また、単価50万円(税抜)以上の機械装置等を1つ以上導入することが必須で、車両や運搬具は対象外です。
審査で見られる4つの観点
書面審査では、次の4つの観点から事業計画書が評価されます。
- 適格性対象事業・対象者・要件・補助率を満たしているか
- 技術面省力化指数、投資回収期間、付加価値額の伸び、オーダーメイド性
- 計画面実施体制、資金調達、スケジュール、賃上げの実現可能性
- 政策面地域経済への波及、イノベーション、事業承継など
出典:中小機構 中小企業省力化投資補助金(一般型)第8回公募要領「5-1. 書面審査」。
省力化指数と投資回収期間は根拠が重要
技術面の評価で中心となるのが、省力化指数と投資回収期間です。公募要領では次のように定義されています。
- 省力化指数=(設備導入で削減される業務に要していた時間−設備導入後に発生する業務の時間)÷設備導入で削減される業務に要していた時間
- 投資回収期間=投資額÷(削減工数×年間稼働日数×人件費単価+増加した付加価値額)
数字が大きい(回収期間は短い)ほど評価されますが、同時に「算出根拠が妥当か」も問われます。作業日報や工程ごとの作業時間の実測など、削減時間の根拠を示せる資料を準備しておきましょう。
計画面では「足下の賃上げ」も評価
計画面では、補助事業完了後の賃上げに加えて、設備導入を待たずに行う「足下の賃上げ」も評価されます。公募要領では、応募時の直近決算期から基準年度までの1人当たり給与支給総額の伸びが物価上昇率を上回らない計画は、審査上大幅に不利になるとしています。
加点項目と口頭審査への備え
第8回公募要領では、次のような取組を行う事業者に加点を行うとしています。主なものは次のとおりです。
- 過去3年以内の事業承継・M&A
- 事業継続力強化計画(連携型を含む)の認定
- 成長加速マッチングサービスへの登録
- 地域別最低賃金・事業場内最低賃金の引上げに関する要件への該当
- えるぼし認定、くるみん認定、健康経営優良法人2026の認定
- 中小機構「省力化ナビ」の活用、生産性向上支援センターの支援による計画書の作成
認定の取得には時間がかかるものもあるため、次回以降の申請を見据えて早めに準備しておくと有利です。
口頭審査は、ソフトウェア投資やシステム開発など書面では理解が難しい案件を中心に、オンラインで1事業者30分程度行われます。対応できるのは代表者等の申請事業者自身で、同席は役員または従業員1名に限られ、計画書の作成支援者やコンサルタントは同席できません。自社の言葉で計画を説明できるよう、経営者自身が内容を理解しておくことが欠かせません。
申請の流れと第9回の予定
- 応募申請電子申請で事業計画書を提出
- 審査・採択書面審査、必要に応じ口頭審査
- 交付申請・交付決定経費を精査して交付額を決定
- 発注・導入交付決定日以降に契約
- 実績報告・受取り現地調査を経て額が確定
- 効果報告事業計画期間中、毎年報告
申請は電子申請のみで、GビズIDプライムアカウントが必要です。また、公募要領は事業計画を申請者自身で作成するよう求めており、外部の支援を受けた場合は、支援者名と報酬額を申請画面に必ず記載する必要があります。金融機関から資金を調達する場合は、金融機関による事業計画の確認書も提出します。
一般型の公式サイトによると、第8回は2026年10月16日17時に締め切られ、採択発表は2027年2月上旬の予定です。第9回は2026年11月上旬に公募開始、12月上旬に申請受付開始、12月下旬に締切の予定とされています。第9回の公募要領は公募開始時に公表されるため、要件や加点項目の変更がないか必ず確認してください。
まとめ
一般型の申請では、労働生産性と賃上げの基本要件を満たす計画を作ったうえで、省力化指数と投資回収期間を根拠とともに示すことが中心になります。加えて、足下の賃上げや加点項目の準備、口頭審査で経営者自身が説明できることも重要です。第9回の締切は12月下旬の予定のため、今から削減時間の実測や賃上げ計画の検討を始めておくと、余裕を持って申請できます。
タンソーマンGXでは、省力化投資補助金の要件確認から、事業計画の整理、申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
本記事の内容は2026年10月21日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



