
この記事では、太陽光発電の補助金で求められる「自家消費率」と「発電量は消費量の範囲内」という要件を、令和8年度の国・東京都の公募要領に基づいて整理します。自家消費量の見込みの出し方と、設備容量を決めるときの考え方もあわせて解説します。
自家消費率とは
自家消費率とは、太陽光発電で発電した電力量のうち、設置した施設で実際に使った電力量の割合です。たとえば年間10万kWhを発電し、そのうち8万kWhを施設で使えば自家消費率は80%です。残りの2万kWhは、施設で使い切れずに余った「余剰電力」になります。
自家消費型の太陽光発電を対象とする補助金は、発電した電気を自社で使って電力会社からの購入電力量とCO2排出を減らすことを目的としています。そのため、多くの制度で自家消費の割合に下限が設けられています。
制度ごとの自家消費の要件
要件の書き方は制度ごとに異なります。「自家消費率の下限」で定める制度と、「年間発電量が年間消費電力量を超えないこと」で定める制度があります。
各事業の公募要領・実施要領に基づく。重点対策加速化事業の業務用は、同一都道府県内の需要家による消費が50%以上であることも必要。
- 環境省 ストレージパリティ事業:敷地内での自家消費を目的とし、自家消費率が50%以上であること。戸建て住宅以外は逆潮流(系統への送電)も原則禁止です
- 環境省 駐車場型太陽光発電設備導入事業:発電量の50%以上を導入場所の敷地内で自家消費すること
- 地域脱炭素移行・再エネ推進交付金:自家消費型の太陽光発電で、発電量の30%以上を需要家が消費すること。業務用は、その需要家を含めて50%以上を同じ都道府県内の需要家が消費することも必要です
- 東京都 地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業:再エネ発電設備の年間発電量が、需要先の年間消費電力量の範囲内であること。売電を主目的とする事業(発電電力が消費電力を上回るもの)は対象外です
- 環境省 ZEB支援事業:建物に設置する再エネ発電設備の発電分は、主に自家消費することが原則とされています
駐車場型太陽光発電設備導入事業では、自家消費の割合が80%未満となる場合、使われない電力の用途を説明する書面を追加で提出するよう求めています。下限を満たしていても、余剰の行き先を説明できるようにしておくことが大切です。
「発電量は消費量以下」と「自家消費率」の違い
東京都の要件は、年間の合計で「発電量≦消費量」となっていれば満たせます。一方、実際の自家消費率は、時間帯ごとの発電と消費の重なりで決まります。昼間に発電しても、休日で工場が止まっていれば電気は余ります。年間の発電量が消費量の半分程度でも、時間帯によっては余剰が出ることがあります。たとえば年間消費電力量が100万kWhの工場に年間発電量50万kWhの設備を置く場合、東京都の要件は満たしますが、週末の発電分を使い切れなければ自家消費率は100%を下回ります。国の制度の自家消費率の要件は、この時間ごとの重なりを前提に確認されます。
このため、東京都の手引きでも、休日や夏季休業などにやむを得ず生じる余剰分は、FIT・FIPによらない個別契約で売電してよいとしています。逆に、逆潮流を禁止しているストレージパリティ事業では、余剰が出る時間帯は発電を抑える必要があり、その分は発電のロスになります。
自家消費量の見込みの出し方
環境省ストレージパリティ事業のQ&A集では、自家消費電力量の見込みを次の手順で算定する方法を示しています。
- 使用量データ直近1年の30分ごとの使用量を1時間単位にする
- 発電シミュレーション経年劣化も考えた1時間ごとの発電量
- 1時間ごとに比較使用量と発電量の小さい方を自家消費とする
- 1年分を合計自家消費電力量と自家消費率を求める
30分ごとの使用量データは、1年分で17,520個になります。電力会社や小売電気事業者から取得できることが多く、申請書類の審査でも算定の根拠として確認されます。Q&A集は、土日祝日、ゴールデンウィーク・お盆・年末年始、工場の定期メンテナンス期間などは余剰が出やすく、見込み違いがCO2削減量の過大計上につながると注意を促しています。
電気料金の明細から読み取れる情報は電気料金明細から補助金の要件を確かめる方法で紹介しています。
設備容量を決めるときの考え方
- 大きすぎる設備は不利:余剰電力はCO2削減量に数えられないため、費用対効果の評価が下がります。ストレージパリティ事業では、太陽光部分の費用効率性(CO2を1t削減するのに必要な費用)が4万円以下であることも要件です
- 蓄電池で自家消費を増やす:昼間の余剰を蓄電池にためて夕方以降に使えば、自家消費率を上げられます。ただし蓄電池の容量には上限がある制度もあります。ストレージパリティ事業は充電できる系統の太陽電池出力に見合った量を上限とし、東京都は再エネ発電設備の発電容量の5時間分までを対象としています
- 過積載との関係:パワーコンディショナの出力に対して太陽光パネルを多めに載せる「過積載」は発電量を増やしますが、余剰も増えやすくなります。ストレージパリティ事業や駐車場型事業は、パネル容量がパワーコンディショナの出力以上であること(過積載率100%以上・積載率1以上)を要件にしています
- 新築・増築の場合:使用量の実績がなくても、合理的な根拠に基づいて自家消費量を算定できれば申請できる制度があります
要件の数値は年度ごとに変わることがあるため、申請前に最新の公募要領で確認してください。売電との関係は補助金とFIT・FIPの関係の解説で詳しく説明しています。
タンソーマンGXでは、電力使用データに基づく自家消費の見込み算定を含め、太陽光・蓄電池の制度選定から申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- 令和8年度 ストレージパリティ事業 公募要領(KY)
- 令和8年度 ストレージパリティ事業 Q&A集(QA)
- 駐車場型太陽光発電設備導入事業 公募要領(令和8年度二次公募)
- 地域脱炭素移行・再エネ推進交付金 実施要領(別紙2・重点対策対象事業要件)
- クール・ネット東京 令和8年度 助成金申請の手引き(都内設置)
- 東京都 報道発表「地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業」令和8年度申請受付開始
- 新築建築物のZEB普及促進支援事業/既存建築物のZEB化普及促進支援事業 公募要領(R7補正三次・R8二次)
本記事の内容は2026年10月21日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



