公開 2026.10.21

蓄電池の補助金と需給調整市場 DR対応の考え方

この記事では、国の蓄電池補助金がDR(ディマンドリスポンス)や需給調整市場などの電力市場での活用を条件にしている理由と、需要家側・系統側それぞれの制度で求められることを、令和7年度補正予算の公募要領に基づいて解説します。補助金を使う前に決めておくべき運用の考え方も整理します。

国の蓄電池補助金はなぜDR・市場活用が条件なのか

太陽光や風力の発電は天候で変動します。再エネが増えるほど、電気が余る時間帯に吸収したり、足りない時間帯に供給したりする「調整力」が必要になります。経済産業省の蓄電池補助金(執行は一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII))は、この調整力として蓄電池を活用することを目的としています。

SIIは事業の目的として、DRに活用できる蓄電池を電力需給のひっ迫時だけでなく再エネの出力制御対策にも使い、電力の安定供給と再エネの導入拡大に役立てることを挙げています。そのため、蓄電池を「置くだけ」ではなく、外部からの指令に応じて充放電できる運用体制が補助の前提になっています。

用語の整理

  • DR(ディマンドリスポンス):電気の需要量を調整する手法。需要を増やす「上げDR」(再エネが余る時間に蓄電池を充電する等)と、需要を減らす「下げDR」(需給ひっ迫時に蓄電池から放電する等)があります
  • 需給調整市場:一般送配電事業者が周波数の調整や予備力などの調整力を調達する市場です。SIIの資料では、一次調整力から三次調整力などの商品があると説明されています
  • 蓄電池アグリゲーター:需要家の蓄電池を遠隔で制御し、DRを行う事業者です

蓄電池の補助金は設置場所と規模で分かれる

SIIは、令和7年度補正の蓄電池補助金を設置場所と規模で次のように区分しています。

SIIの蓄電池補助金の区分(令和7年度補正)

需要側(工場・ビル等)

  • PCS合計100kW未満:DR小規模業務産業用
  • 100kW以上:大規模業務産業用
  • DRへの活用が条件

系統に直接接続

  • 系統用蓄電池
  • 最大受電電力1,000kW以上
  • 電力市場で調整力等を供出

このほか家庭用(20kWh以下)、再エネ電源併設の区分がある。SII各事業ページに基づく。

需要側の蓄電池:DR契約かDRメニューへの加入

令和7年度補正「業務産業用蓄電システム導入支援事業」は、高圧以上で受電する工場やビルなどに、PCS合計出力100kW未満の蓄電システムを新たに導入する事業が対象です。補助率は1/3以内、上限は1申請あたり1,500万円、公募期間は2026年3月24日〜10月30日(予算到達時は期間内でも終了)です。

申請者は次のどちらかを選びます。

  • アグリ型:蓄電池アグリゲーターとDR契約を結び、アグリゲーターの指令で上げDR・下げDRを行う
  • 小売型:小売電気事業者が提供するDRメニュー(時間帯で料金が変わる電気料金型や、事前契約に基づくインセンティブ型)に加入する

DR契約やDRメニューへの加入は、少なくとも2028年3月31日まで続けることが条件です。期間終了後も、処分制限期間中は設備を適切に管理し、売却や廃棄など活用状況を変える場合は事前にSIIへ連絡する必要があります。SIIはアグリゲーター、小売電気事業者、DRメニューの一覧を公開しています。

PCS合計出力100kW以上の「大規模業務産業用蓄電システム等導入支援事業」は、調整力等としてのDRへの活用を目的とする事業ですが、SIIは令和7年度補正分について1次公募の結果をもって終了したと公表しています。

系統用蓄電池:市場で調整力を供出する

令和7年度補正「系統用蓄電システム等導入支援事業」は、卸電力市場、需給調整市場、容量市場、相対契約などを通じて調整力等を供出する蓄電システムを新たに導入する事業が対象です。公募期間は2026年9月4日から11月4日17時(必着)までで、交付決定は2027年1月上旬以降の予定です。

  • リチウムイオン電池(LiB)で最大受電電力1,000kW以上10,000kW未満:補助率1/3以内、上限10億円
  • LiBで10,000kW以上30,000kW未満:1/3以内、上限25億円。30,000kW以上:1/2以内、上限40億円
  • 1社あたりの申請件数の上限は、共同申請を含めて2件です
  • 申請書類として、一般送配電事業者との系統連系の申込み・協議状況を示す書類(申込書、接続検討などの回答書など)が求められます
  • 補助で取得した設備を処分制限期間内に譲渡・貸付・担保提供などする場合は、事前にSIIの承認が必要で、補助金の返還が生じることがあります

対象は最大受電電力1,000kW以上のため、50kW未満の低圧で連系する小規模な蓄電所は、国の系統用蓄電池の補助金の対象規模に達しません。詳しくは系統用蓄電池の補助金の解説と申請書類の解説をご覧ください。

補助金を使う前に決めておくこと

  1. 誰が制御するか:アグリゲーターに任せるのか、小売電気事業者のメニューで自ら対応するのか、運用の主体を決めます
  2. 自社の使い方との両立:DRの指令で放電すると、ピークカットやBCP(停電対策)に使える残量が減ることがあります。契約内容と社内の優先順位を確認します
  3. 通信とセキュリティ:業務産業用の事業では、アグリゲーターなど外部と通信するための機器を新たに設置する場合、JC-STAR(IoT製品のセキュリティ適合ラベル)★1の取得が求められます。DR対応のために追加で必要になるIoT化関連機器は、この事業では補助対象外とされている点にも注意が必要です
  4. 処分制限と資金調達:設備の売却や担保設定には承認が必要です。金融機関からの借入やSPC(特別目的会社)の活用を予定する場合は、事前に執行団体へ確認します

補助の区分や条件は年度ごとに見直されるため、申請時は最新の公募要領で確認してください。

タンソーマンGXでは、需要家側・系統用の蓄電池について、制度選定から申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは蓄電池・太陽光の補助金解説をご覧ください。

参考資料

本記事の内容は2026年10月21日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。

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