
この記事では、東京都の「キャップ&トレード制度」(温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度)の対象事業所が、第四計画期間(2025〜2029年度)に再生可能エネルギー(再エネ)をどう調達し、どの補助金と組み合わせられるかを整理します。削減義務率の水準、第四計画期間で変わった再エネの数え方、2026年度からの国の排出量取引制度との調整も説明します。
キャップ&トレード制度の概要
東京都のキャップ&トレード制度は、年間のエネルギー使用量が原油換算1,500kL以上の事業所(オフィスビル、商業施設、官公庁、宿泊施設、病院、工場等の約1,200事業所)に、基準排出量からの削減を義務付ける制度です。基準排出量は原則として2002〜2007年度のうち連続する3か年度の平均です。
基準排出量比。工場等の区分は第四計画期間で48%。東京都環境局「キャップ&トレード制度の削減実績と国の排出量取引制度開始に伴う改正内容等について」(2026年3月11日)。
第四計画期間の削減義務率は、オフィスビル等が50%、工場等と地域冷暖房等の熱を多く利用する事業所が48%です。東京都の資料では、この50%は省エネに加えて、再エネ設備の導入や再エネ電気の調達などによる削減余地を考慮して設定したと説明されています。義務を達成できない場合は、不足量の1.3倍の削減命令が出されます。
2024年度の速報値では対象事業所の排出量は合計1,142万トンで基準排出量比31%削減、第三計画期間は約78%の事業所が自らの対策等で義務を達成する見込みとされています。第四計画期間は義務率がほぼ倍になるため、省エネだけでなく再エネ調達を組み合わせた計画が欠かせません。
第四計画期間で変わった再エネの数え方
第四計画期間では、排出量の算定方法が見直されました。主な変更点は次のとおりです。
- 実排出係数への移行:電気・熱・都市ガスの排出量は、事業所が実際に契約している供給元の排出係数(実排出係数)で算定します。排出係数の低い電力メニューを選ぶと、その効果が排出量に反映されます。
- 再エネ由来の証書:グリーンエネルギー証書と非化石証書の環境価値を、年度排出量から控除できます。
- オフサイト再エネ:オフサイトPPA(敷地外の発電所から電気を調達する契約)や自己託送で受け入れた電気も、供給元の係数で算定する仕組みになりました。
- 自家消費の1.5倍換算は廃止:事業所内の再エネ発電設備で発電し自家消費した電気の削減効果を1.5倍に換算する扱いは廃止されました。
- 再エネ利用量の把握の義務化:事業所で削減に用いた再エネの電気・熱の量の把握が義務になりました。オンサイト再エネは特定計量器での把握が原則です。
また、第四計画期間に限り、電気の使用割合が事業所全体の20%未満の事業所は削減義務率を3%緩和できます(電化が難しい理由や設備更新計画の提出が必要)。
2026年度からの国の排出量取引制度との調整
国の排出量取引制度(GX-ETS)は、2026年度から直接排出量(Scope1)の削減を義務化します。都の説明資料では、国制度の対象事業者のScope1排出量を都のキャップ&トレード制度の削減義務の対象外とし、残るScope1と、他人から供給された電気・熱による排出(Scope2)は引き続き都の義務対象とする方針が示され、改正条例・規則の施行は2026年4月1日と予定されていました。テナントに国制度の対象事業者がいるビルなどは、算定方法が変わる可能性があるため、最新のガイドラインを確認してください。
再エネの調達手段と使える補助金
再エネの調達手段ごとに、関係する主な補助金を整理すると次のようになります。
オンサイト(敷地内)
- 屋上・駐車場の太陽光、蓄電池
- 都の地産地消型事業(都内設置)の対象になり得る
- 再エネ利用量は計量器で把握
オフサイト(敷地外)
- 都外の発電所からPPA・自己託送
- 都の地産地消型事業の「都外設置」枠(東京電力管内)
- 環境価値を都内事業所で自ら利用
電力メニュー・証書
- 再エネ電力メニューの契約
- グリーンエネルギー証書・非化石証書
- 本記事で確認した都の補助金の対象ではない
東京都の「地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業」(令和8年度)は、民間事業者が対象です。再エネ発電設備の助成率は中小企業等が3分の2以内、大企業等が2分の1以内で、同時に設置する蓄電池は中小企業等が4分の3以内、大企業等が3分の2以内(発電設備と合わせて上限2億円)です。都外(東京電力管内)に設置する場合は、助成率に応じて得られた環境価値を証書化し、都内の事業所で自ら利用することが要件です。FIT・FIP制度の認定を申請した設備は対象外です。申請期間は令和8年4月1日から令和9年3月31日までで、予算額(約69億円)に達し次第終了します。
都外に設置する場合の条件は「都外設置」枠の解説をご覧ください。オフサイトPPAには国の需要家主導型太陽光発電の導入支援事業もあり、都の制度と比較して検討します。
補助金を使うときに確かめておきたいこと
- 環境価値の扱い:補助を受けた設備の環境価値を、キャップ&トレード制度の義務履行にどのように算入できるかは、制度側のガイドラインと補助金の要綱の両方で確認が必要です。
- 計量の方法:オンサイト再エネは年度単位の利用量を計量器で把握する必要があります。設備の設計段階で計量器の位置を決めておくと、後の報告が円滑です。
- FIT・FIPとの関係:都の地産地消型事業はFIT・FIP認定を申請した設備を対象外としています。売電を前提とする計画とは両立しません。
- 年度ごとの変更:補助金の助成率や要件は年度ごとに見直されます。計画期間の途中で条件が変わる前提で、毎年度確認します。
まとめ
第四計画期間の削減義務率は50%(工場等は48%)と大きく引き上げられ、実排出係数への移行や証書の控除など、再エネ調達の手段が広く認められるようになりました。オンサイト・オフサイトの再エネ設備には都の補助金を使える可能性がありますが、環境価値の扱いと計量の方法を最初に整理しておくことが重要です。
タンソーマンGXでは、キャップ&トレード対象事業所の再エネ調達手段の比較から、補助金の制度選定、申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- 東京都環境局「キャップ&トレード制度の削減実績と国の排出量取引制度開始に伴う改正内容等について」(2026年3月11日)
- 東京都環境局「第四計画期間に適用する改正事項等 説明資料」(2024年3月)
- 東京都 地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業(令和8年度)報道発表
- クール・ネット東京 地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業
本記事の内容は2026年10月21日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



