
この記事では、東京都の「地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業」(令和8年度)で、太陽光発電の発電シミュレーションが求められる理由と、申請に使えるシミュレーションの作り方を解説します。発電量と電力使用量の比較は審査の中心となる部分で、数字の作り方を誤ると要件を満たさない計画になってしまいます。
なぜ発電シミュレーションが必要なのか
本事業は、再生可能エネルギーを設置した場所で使う「地産地消」を支援する制度です。そのため、発電設備には次の要件があります。
- FIT・FIPの認定を受けない自家消費を主な目的とした設備であること
- 再エネ発電設備の年間発電量が、発電した電力の需要先の年間消費電力量の範囲内であること
手引きでは「売電を主目的(発電電力>消費電力)とした事業は対象外」と明記されています。設備を設置する前の申請段階では実際の発電量は分からないため、発電量の見込みをシミュレーションで示し、使用量の実績と比べて要件を満たすことを説明する必要があるのです。
なお、休日や夏季休業などの時間帯にやむを得ず余剰電力が生じる場合は、FIT・FIPによらない個別契約で売電することは認められています。比べるのは時間帯ごとの量ではなく、年間の合計です。
申請で提出する2つの根拠資料
発電量の根拠
- 事業実施計画書の「導入効果」の計算根拠となるシミュレーションデータ
- 施工会社やメーカーが提供するソフトなどで作成
- 周辺の建物や樹木の影の影響も考慮
消費量の根拠
- 既存の建物:直近3か月以内に電力会社が発行した使用電力量の書類を3か月分
- 残り9か月分も様式に記載
- 新築:積算根拠を明確にした資料
令和8年度 助成金申請の手引き(都内設置)4.6による。
消費量は、提出する3か月分に加えて残り9か月分も電力会社発行の書類から様式に記入します。必要に応じて1年分の提出を求められるため、申請時には1年分の明細を保管しておくよう案内されています。新築の場合は、使用予定の機器の出力と使用時間から計算するか、面積が近い(導入施設との面積比で+10%以下)類似用途の建物の実績から推計します。
シミュレーションの作り方
- 使用量を集める直近12か月の明細を月別に整理
- 設置条件を確認面積・方位・傾斜・影
- 機器構成を決めるパネルとパワコンの出力
- 発電量を計算メーカー等のソフトで月別に
- 年間で比較・調整発電量≦消費量を確認
1. 使用量を月別に整理する
電力会社の明細や検針票から、直近12か月の使用電力量を月別に並べます。様式に記入する数字と、添付する書類の数字が一致していることが前提です。
2. 設置条件を確かめる
屋根や敷地の設置可能面積、方位、傾斜角、周辺の建物や樹木による影を確認します。手引きは影の影響を考慮するよう求めているため、影を無視した楽観的な数字は避けます。
3. 機器構成を決める
本事業では、太陽光発電システムの出力を「パネルの公称最大出力の合計」と「パワーコンディショナの定格出力の合計」のいずれか小さい値で扱います。この出力は助成額の上限計算(kW当たりの単価)にも使われるため、シミュレーションの機器構成と事業実施計画書の設備の概要をそろえます。
4. 発電量を計算する
施工会社やメーカーが提供するソフトなどを使い、月別の発電量を計算します。手引きは、計画書に記載した機器の能力と整合していることを求めています。
5. 年間で比べて調整する
年間発電量が年間消費電力量を上回る場合は、パネル枚数を減らすなど構成を見直します。省エネ設備の導入や事業の縮小などで将来の使用量が減る見込みがある場合は、その影響も考えておくと安心です。蓄電池を同時に設置する場合、助成対象となる蓄電容量は再エネ発電設備の出力の5時間分までです。
都外設置では比較がもう一段階増える
東京電力エリア内の都外に設置する「都外設置」枠では、設置した施設の年間消費電力量との比較に加えて、もう一つの条件があります。発電で得られた環境価値を、年間発電量に助成率(2/3または1/2)を掛けた量以上証書化し、都内の特定の施設で使うことです。そのため、都内施設の年間電力消費量が「年間発電量×助成率」以上であることを、直近1年分の電力会社の書類で示します。詳しくは都外設置枠の解説をご覧ください。
よくあるつまずき
- 一部の月しか明細がない:電力会社のWebサービスや請求書の控えから、早めに12か月分をそろえます
- 契約が複数ある:一つの構内に複数の建物があり、需給契約や施工契約の単位が分かれる場合は、どの契約の使用量と比べるかを整理します
- 余剰売電の扱い:余剰売電の有無は様式で申告します。20kW未満の設備では、実績報告までに余剰売電の契約書などの提出を求められる場合があります
- 機器の変更:交付決定後に主要設備が変わる場合は計画変更の手続きが必要です。シミュレーションも作り直します
まとめ
発電シミュレーションは、地産地消型の補助金で「発電量が消費量の範囲内」という要件を示すための中心資料です。使用量の実績、設置条件、機器構成、計画書の数字が一つの筋で整合していることが大切です。要件や様式は年度ごとに見直されることがあるため、申請する年度の手引きで確認してください。制度全体の要件は都内設置の要件にまとめています。
タンソーマンGXでは、電力使用量の整理と発電シミュレーションの確認から、申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- 令和8年度 助成金申請の手引き(都内設置・民間事業者向け)
- 令和8年度 助成金申請の手引き(都外設置・民間事業者向け)
- クール・ネット東京 地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業(都内設置・蓄電池単独設置)
- 令和8年度 地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業リーフレット
本記事の内容は2026年10月21日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



