
この記事では、業務用の冷凍冷蔵設備を自然冷媒機器へ更新するときに使える環境省の補助事業について、令和8年度の公募要領に沿って対象設備、補助率、上限額、申請の流れを整理します。冷凍冷蔵倉庫、食品製造工場、食品スーパーなどで冷凍機の入替えを検討している方に向けた内容です。
自然冷媒機器の補助金とは
業務用の冷凍冷蔵機器では、これまでHFC(ハイドロフルオロカーボン)という温室効果の高いフロン類を冷媒に使う機器が多く使われてきました。冷媒とは、冷凍機の中を循環して熱を運ぶ物質のことです。
これに対し、アンモニア、二酸化炭素(CO2)、空気、水など自然界にある物質を冷媒に使う機器を「自然冷媒機器」と呼びます。環境省の「コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業」は、この自然冷媒機器のうち省エネ性能の高いものの導入を支援する補助事業です。執行団体(申請の受付や審査を行う団体)は一般財団法人日本冷媒・環境保全機構(JRECO)です。
公募要領では、補助の対象となる「脱炭素型自然冷媒機器」を、フロン類ではなく自然冷媒を使う冷凍・冷蔵機器であって、同じ能力のフロン冷媒機器と比べてエネルギー起源CO2の排出が少ないもの、と定義しています。冷媒を替えるだけでなく、電力の削減も求められる点が特徴です。また、自然冷媒を使う装置でも実用化に至っていない技術は対象外とされています。
対象となる施設と事業者
令和8年度の公募要領で対象とされている施設は、次の3つです。
- 冷凍冷蔵倉庫:農畜水産物や加工品を常時低温で保管する倉庫。保管・荷捌き・流通加工の場所に使う機器が対象で、物流不動産の開発事業者も対象に含まれます。
- 食品製造工場:食品や原材料を製造・加工する工程で、冷却・冷蔵・冷凍に使う機器が対象です。
- 食品小売店舗:冷蔵・冷凍ショーケースのほか、プレハブ式の冷凍・冷蔵保管庫への導入も含まれます。
申請できるのは、民間企業、地方公共団体、個人事業主などです。案件は「新設」「更新」「建替」のいずれも対象になります。原則として、エネルギー管理を一体で行う事業所単位で申請し、応募時点で設置場所が確定している必要があります。
冷凍冷蔵倉庫
- 保管・荷捌き・流通加工の場所
- 物流不動産の開発事業者も対象
食品製造工場
- 製造・加工工程の冷却・冷凍設備
- 原材料・冷却材の製造も含む
食品小売店舗
- 冷蔵・冷凍ショーケース
- プレハブ式の冷凍・冷蔵保管庫
令和8年度秋公募の公募要領(JRECO)をもとに作成。
補助率と上限額(令和8年度)
令和8年度の公募要領では、補助率は原則として3分の1以下です。ただし、中小企業のうち一定の条件を満たし、採択審査の得点順で最大上位20%以内に入った「先進的な中小企業」は、補助率2分の1以下となります。
食品小売店舗で、既設冷凍機の更新工事を伴う「更新店舗」の場合、大企業でも工事費に対しては2分の1、工事費以外に対しては3分の1とされています。地方公共団体などは補助率3分の1(食品小売店舗の更新店舗工事費は2分の1)です。
補助金の上限額は1事業者あたり5億円で、フランチャイズ形態のコンビニエンスストアは2億5千万円です。同じ年度に複数の申請をした場合は、交付決定額の合計に上限が適用されます。
食品小売店舗の更新店舗は工事費に対して1/2など、区分ごとの例外があります。出典:JRECO 令和8年度秋公募 公募要領。
なお、冷凍冷蔵倉庫の大企業と、コンビニエンスストアについては、補助対象経費が設備費に限られます。工事費が対象になるかどうかは区分によって異なるため、見積を取る段階で確認しておくことが大切です。
大企業と「先進的な中小企業」に求められる条件
大企業が申請する場合、また中小企業が「先進的な中小企業」として高い補助率を受ける場合には、企業として自然冷媒機器への転換目標を定め、自社のウェブサイトで公開することが求められます。応募時点では掲載案でもよく、交付申請までに掲載します。
- 新規導入機器の転換目標:冷凍冷蔵倉庫・食品製造工場では、交付決定の年度以降に新設・更新する主要冷凍冷蔵機器を自然冷媒機器へ100%転換すること。食品小売店舗では、新店舗と冷凍機更新を伴う全面改装店舗の50%以上で、少なくとも1台以上の自然冷媒機器を導入すること。
- 既設機器を含めた転換目標:2030年と2040年に目指す、自社内の主要冷凍冷蔵機器に占める自然冷媒機器の割合を設定すること。
また、大企業の資本が一定以上入っている中小企業は「先進的な中小企業」として申請できないなど、細かい区分があります。自社がどの区分に当たるかは、公募要領で事前に確認してください。中小企業の判定方法は中小企業の定義の解説も参考になります。
申請から補助金受取りまでの流れ
この事業は公募制で、応募された実施計画書を委員会が審査し、採択された事業者が交付申請を行います。審査では、要件への適合のほか、CO2を1トン削減するのに要する費用(費用対効果)などが見られます。
- 応募申請実施計画書とCO2削減効果計算書を提出
- 審査・採択費用対効果などで審査
- 交付申請・交付決定比較対象のフロン機器の見積も提出
- 発注・工事契約・発注は交付決定日以降
- 実績報告・確定補助金額が確定し支払い
- 削減量の報告完了後もCO2とフロンの削減量を報告
契約や発注は、交付決定日以降に行う必要があります。交付決定前の発注は補助の対象になりません。詳しくは交付決定前に発注してはいけない理由で解説しています。
既存のフロン冷媒機器を撤去する場合は、フロン排出抑制法に基づき、都道府県知事の登録を受けた第一種フロン類充塡回収業者にフロン類を引き渡すことも要件です。
令和8年度の公募状況と次の公募への備え
令和8年度は、春公募(令和8年4月24日〜5月25日17時必着)と、複数年度事業に限った秋公募(令和8年9月14日〜10月13日17時必着)が行われました。2026年10月21日時点で、いずれも受付期間は終了しています。
単年度事業の実施期間は原則として交付決定日から令和9年2月26日まで、複数年度事業は令和10年2月29日までとされています。冷凍機の更新は工期が長くなりやすいため、年度内に完了できるかどうかが単年度と複数年度の選択に影響します。
次年度以降の公募条件は、予算や制度の見直しによって変わる可能性があります。補助率や上限額は年度ごとに変わりやすいため、最新の公募要領で確認してください。準備としては、次の点を早めに進めておくと応募がスムーズです。
- 既設機器の台数、冷媒の種類、設備動力など現状の把握
- 自然冷媒機器と、同等能力のフロン冷媒機器の両方の見積(設備費と工事費を分けたもの)
- CO2とフロン類の削減量の試算(算定方法は省エネ効果の計算方法も参照)
- 大企業・先進的な中小企業として申請する場合の転換目標の社内決定
また、他の国の補助金との重複はできません。同じ設備で省エネ補助金など別の制度を使う予定がある場合は、どちらを使うかを先に決めておく必要があります。
まとめ
自然冷媒機器の補助金は、冷凍冷蔵倉庫、食品製造工場、食品小売店舗の冷凍機更新に使える、上限額の大きな制度です。令和8年度は原則3分の1、先進的な中小企業は2分の1という補助率でした。一方で、比較対象機器の見積や削減量の計算、完了後の報告など、準備と事後の手続きが多い制度でもあります。
タンソーマンGXでは、冷凍冷蔵設備の更新に使える制度の選定から、申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- 一般財団法人日本冷媒・環境保全機構「環境省 令和8年度 コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業 公募」
- 同 令和8年度秋公募 公募要領(PDF)
- 環境省 報道発表(2026年9月14日)令和8年度秋公募の開始について
本記事の内容は2026年10月21日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



