公開 2026.10.22

工場の排熱回収・産業用ヒートポンプ導入に使える補助金

この記事では、工場の排熱(使われずに捨てられている熱)を回収して再利用する設備や、産業用ヒートポンプの導入に使える国の補助金を解説します。令和7年度補正予算の省エネ・非化石転換補助金(SII)と、環境省のSHIFT事業で、排熱回収がどのように扱われているかを公募要領に沿って整理します。

排熱回収とヒートポンプが補助金で重視される理由

工場では、コンプレッサーの圧縮熱、冷却水、乾燥炉や燃焼設備の排ガスなど、多くの熱が使われないまま外に捨てられています。この熱を回収して、給湯・加温・乾燥などの工程に戻せば、ボイラーで燃やす燃料を減らせます。

産業用ヒートポンプは、空気や水、排熱などから熱をくみ上げ、より高い温度の温水・熱風・蒸気をつくる設備です。投入した電力の数倍の熱を得られる機種があり、熱源の温度が高いほど効率が上がるため、排熱と組み合わせると効果が大きくなります。燃料を燃やす設備から電気で熱をつくる設備に替える「電化」にもつながるため、国の補助金でも対象として明記されています。

排熱回収やヒートポンプの導入では、主に次の3つの制度が候補になります。

排熱回収・産業用ヒートポンプで使える主な国の制度

SII 設備単位型

  • 指定設備(産業ヒートポンプ等)への更新
  • 従来枠は補助率1/3以内、上限1億円
  • 対象経費は設備費のみ
  • 4次公募は10月30日17時締切

SII 電化・脱炭素燃転型

  • 燃料を使う設備からヒートポンプ等への転換
  • 補助率1/2以内
  • 上限3億円(電化する事業は5億円)
  • 工事費は中小企業者等に限り対象

環境省 SHIFT事業

  • 電化・燃料転換・熱回収などのシステム改修
  • CO2を15%以上(系統単位は30%以上)削減
  • 補助率1/3、上限1億円または5億円
  • 令和8年度の公募は終了

各公募要領(SIIは令和7年度補正 4次公募、SHIFTは令和8年度 三次公募)より作成。

SIIの補助金で対象になる産業ヒートポンプ

SIIの設備単位型では、SIIがあらかじめ定めた効率の基準を満たし、補助対象として公表した「指定設備」に更新する事業が対象です。指定設備の区分の一つに「産業ヒートポンプ」があり、次の6種類が定められています。

  • 空冷ヒートポンプチラー(温水利用)
  • 循環加温式ヒートポンプ
  • 温水ヒートポンプ(熱回収・水熱源)
  • 熱風ヒートポンプ
  • 蒸気発生ヒートポンプ
  • 施設園芸用ヒートポンプ

このうち「温水ヒートポンプ(熱回収・水熱源)」は、工場の冷却水などの温度の低い水を熱源として温水をつくる機種で、排熱回収の代表的な使い方に当たります。種類ごとに、熱源の温度と出口温度の条件で効率(COP:消費電力1に対して得られる熱の量)の基準値が決められています。導入予定の機種が対象かどうかは、SIIが公表する指定設備の一覧で型番を確認してください。

より性能の高い設備を対象とする「GX設備単位型[トップ性能枠]」では、低温(農業用途を含む)から高温の領域まで使える産業ヒートポンプのほか、エアコンプレッサーの圧縮熱を回収して利用できる「熱回収機能」を搭載した圧縮機が対象に挙げられています。コンプレッサーの扱いはコンプレッサー・生産設備の省エネ更新と補助金で詳しく解説しています。

ボイラーをヒートポンプに替えるなら電化・脱炭素燃転型

重油や灯油、ガスのボイラーで温水や蒸気をつくっている工程をヒートポンプに替える場合は、「電化・脱炭素燃転型」が中心になります。補助率は1/2以内で、設備費(付帯設備を含む)に加え、中小企業者等は工事費も補助対象になります。

注意したいのは、ヒートポンプで対応できる低い温度の領域では、電化だけが対象になる点です。低温の温水ボイラーを別の燃料のボイラーに替えるだけでは対象になりません。制度の詳細は省エネ補助金「電化・脱炭素燃転型」をご覧ください。

工程をまたぐ排熱利用は工場・事業場型やSHIFT事業で

排熱の発生源と使い道が離れている場合や、配管・熱交換器を含めて仕組みを組み直す場合は、設備1台ごとの補助では収まりません。こうした計画には、事業場全体の省エネ量で評価する制度が向いています。

  • SII 工場・事業場型:機械設計を伴う「オーダーメイド型設備」も対象です。公募要領には、未利用だった燃焼設備の排熱を、設備の移設と蒸気配管の敷設によって隣の工場で使う「移設を伴う排熱利用」の事例が示されています。
  • 環境省 SHIFT事業(改修支援):廃エネルギーを利用した産業・業務用設備が補助対象と明記されています。熱回収によって工場・事業場単位で15%以上、または主要なシステム系統で30%以上CO2を減らす改修が対象です。ただし、蒸気・空調・給湯システムや工業炉の単純な高効率化は対象外です。
排熱の種類と検討する制度の目安
  • コンプレッサーの圧縮熱熱回収機能付き圧縮機。SII トップ性能枠の対象
  • 冷却水・温排水熱回収型の温水ヒートポンプ。SII 設備単位型・電化燃転型の指定設備
  • 燃焼排ガス・工程間の熱配管や熱交換器を含む仕組みの改修。SII 工場・事業場型やSHIFT事業

各公募要領の対象設備・事例をもとに作成。実際の区分は設備の仕様と事業計画で決まる。

SHIFT事業の令和8年度の公募は10月15日に締め切られ、次の公募は2026年10月22日時点で公表されていません。制度の全体像は環境省SHIFT事業とはで解説しています。

申請前の進め方

排熱回収・ヒートポンプ導入の検討手順
  1. 排熱を洗い出す発生場所・温度・量・時間帯
  2. 使い道と合わせる必要な温度と量、時間のずれ
  3. 方式を決める熱交換か、ヒートポンプで昇温か
  4. 効果を試算省エネ量・CO2削減量・投資回収
  5. 制度を選んで申請交付決定後に発注

排熱回収は、排熱が出る時間帯と熱を使う時間帯がずれると、計算どおりの効果が出ません。計測データで排熱の温度と量の変化を確かめてから計画を立てることが重要です。また、どの制度も交付決定の前に契約・発注した経費は対象になりません。令和7年度補正の設備単位型の4次公募は2026年10月30日17時が締切で、要件は公募回や年度ごとに見直されるため、最新の公募要領で確認してください。

タンソーマンGXでは、工場の排熱回収やヒートポンプ導入について、省エネ効果の試算から制度の選定、申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。

参考資料

本記事の内容は2026年10月22日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。

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