公開 2026.10.22

水素・燃料電池を事業所で使うための補助金

この記事では、事業所で水素や燃料電池を使うときに検討できる補助金を、令和8年度(2026年度)と令和7年度補正予算の公表資料をもとに整理します。定置用の燃料電池、燃料電池フォークリフト、水素を燃料にできるボイラーなどの設備ごとに、どの制度が候補になるのかと、申請前に確かめたい点が分かります。

事業所での水素利用は「設備の種類」で制度が分かれる

燃料電池は、水素と空気中の酸素を反応させて電気と熱を取り出す装置です。事業所での水素利用には、建物や工場に置く定置用の燃料電池、構内で使う燃料電池フォークリフト、水素を燃料として燃やすボイラーやバーナーなど、いくつかの形があります。

補助金は「水素」という一つの枠でまとまっているわけではなく、導入する設備の種類ごとに担当する制度が異なります。令和8年度時点で、一次資料で確認できた主な制度は次の3つです。

設備の種類と主な補助制度(令和8年度時点)

定置用の燃料電池・水素利用設備

  • 東京都「グリーン水素の社会実装化に向けた設備等導入促進事業」
  • 令和8年度から業務・産業用燃料電池を追加
  • 都内に事業所がある事業者が対象

燃料電池フォークリフト

  • 環境省「フォークリフトの燃料電池化促進事業」
  • エンジン車との差額の1/2、上限550万円/台
  • 東京都など自治体の上乗せもある

水素を燃やす設備への更新・改造

  • SII「省エネ・非化石転換補助金」電化・脱炭素燃転型
  • 水素10%以上の混焼で実稼働が条件
  • 改造1/2以内、新設1/5以内

各制度の公募要領・報道発表から作成。条件は年度ごとに見直されます。

東京都:業務・産業用燃料電池が補助対象に加わった

東京都は、2026年3月31日の発表で、「グリーン水素の社会実装化に向けた設備等導入促進事業」の補助対象に、令和8年度から業務・産業用燃料電池を加えると公表しました。グリーン水素とは、再生可能エネルギーの電気を使って水を分解するなど、製造時のCO2排出を抑えて作られた水素のことです。

  • 対象設備:グリーン水素の製造・貯蔵・運搬設備、純水素型燃料電池、業務・産業用燃料電池、水素ボイラー・水素温水発生機・水素バーナー・水素エンジン発電機などの水素利用設備
  • 補助率・上限:原則2/3、上限3億円。水素とほかの燃料を混ぜて燃やす混焼機器は1/2、上限2億2,500万円
  • 対象経費:設計費、設備費、工事費、諸経費
  • 対象者:都内に事業所または事務所を持つ民間事業者(企業、学校法人、医療法人、社会福祉法人など)と、都内の区市町村など
  • 国の補助金と併用する場合:助成対象経費から国の補助額を差し引いた額に、都の補助率を掛けて算定

設備は都内の事業所などに新たに設置することが条件です。製造・貯蔵・運搬設備に限り、東京電力管内であれば都外に置くこともできますが、製造量の1/2以上を都内に供給する必要があります。事業期間は令和11年度までで、設置と実績報告は令和11年12月28日までに終える必要があります。

発表時点では、令和8年4月1日から申請に向けた相談を受け付け、申請開始時期は決まり次第、クール・ネット東京(東京都環境公社)のホームページで案内するとされていました。申請時期と手引きは、相談の段階で窓口に確認してください。

燃料電池フォークリフト:国と自治体の補助を重ねる

物流倉庫や工場で使うフォークリフトを燃料電池式に切り替える場合は、環境省の「産業車両等の脱炭素化促進事業のうち、フォークリフトの燃料電池化促進事業」が中心になります。令和8年度の公募要領では、補助の考え方が次のように定められています。

  • 補助率:一般的なエンジン車の価格との差額の1/2。2020年度(令和2年度)までに環境省補助金で導入した実績がある場合は1/3
  • 上限額:1台あたり550万円
  • 応募できる者:民間企業(リース・レンタル事業者を含む)、地方公共団体、独立行政法人、一般社団・財団法人など
  • 執行団体:公益財団法人北海道環境財団

令和8年度の受付はJグランツ上で2026年5月21日から9月10日までとされており、現在は締め切られています。リースで導入する場合は、リース料から補助金相当分が減額されていることなどが条件になります。

東京都も、令和8年度の燃料電池車両の導入支援を継続すると発表しており、燃料電池フォークリフトの車両本体・装備類について上限670万円の補助を示しています。都内の自社営業所などに水素ステーションを整備・誘致して商用利用する場合は、350万円の上乗せが設けられています。神奈川県や愛知県のように、環境省補助金への交付申請を条件として県が上乗せする例もあるため、拠点のある自治体の制度もあわせて確認すると効果的です。事業用の燃料電池自動車については、東京都のEV・FCV導入補助の記事も参考にしてください。

既存設備を水素対応にするならSIIの省エネ補助金

ボイラーや工業炉などを、水素を燃料に使える設備へ更新・改造する場合は、令和7年度補正予算の「省エネ・非化石転換補助金」のうち(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型が候補になります。設備単位型の4次公募要領では、水素対応設備について次の2つの事業が支援対象とされています。

  • 改造:現在使用している設備を水素燃焼可能な設備に改造する事業。設備費・工事費の1/2以内
  • 新設:新設の事業所または既存の事業所に、水素燃料を活用できる設備を新設する事業。設備費の1/5以内(工事費は中小企業者等に限る)

いずれも上限は事業全体で3億円、下限は30万円で、水素を体積比10%以上の混焼率で実際に稼働させることが求められます。4次公募の申請書類の提出期限は2026年10月30日(金)17時必着です。燃料転換型の要件全体は電化・脱炭素燃転型の解説をご覧ください。

申請前に確かめたいこと

水素関連の設備は、機器そのものだけでなく、燃料となる水素をどう調達するかが事業の成否を左右します。補助金の申請準備は、次の順で進めると手戻りを減らせます。

水素・燃料電池の補助金を検討する流れ
  1. 用途を決める発電・熱供給、フォークリフト、燃料転換のどれか
  2. 水素の調達を確認供給事業者、ステーション、配送方法
  3. 制度を照合国・都道府県・区市町村の対象設備と時期
  4. 併用の可否を確認国の補助額を差し引く算定方法など
  5. 交付決定後に発注決定前の契約・発注は対象外

どの制度でも、交付決定の前に契約・発注した経費は原則として補助対象になりません。また、補助金で取得した設備は、法定耐用年数の期間中、承認なく処分できない点も共通です。燃料電池で熱と電気を同時に使う設計を考えている場合は、業務用コージェネレーションの補助金もあわせて比較してください。

タンソーマンGXでは、水素・燃料電池を含む脱炭素設備について、使える制度の選定から申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。

参考資料

本記事の内容は2026年10月22日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。

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