
この記事では、地中熱を空調や融雪に使う設備に使える補助金を解説します。環境省の「再エネ等熱利用設備導入事業」で地中熱が補助対象となる条件、補助率、方式による扱いの違い、申請前に必要な熱応答試験などを、令和8年度(2026年度)の公募要領とQ&A集に沿って整理します。
地中熱利用とは
地中熱は、地盤が持つ熱です。地中は外気に比べて年間の温度変化が小さく、夏は外気より冷たく、冬は外気より暖かくなります。この温度差をヒートポンプで利用すると、空気を熱源とするエアコンより少ない電力で冷暖房や給湯ができます。
事業所での主な用途は、事務所・店舗・工場の空調、給湯、そして駐車場や通路の融雪です。地中に「地中熱交換器」と呼ばれる配管を埋め、その中に水や不凍液を循環させて熱を取り出す方式が一般的です。
補助の中心は環境省「再エネ等熱利用設備導入事業」
事業者が地中熱利用設備を導入するときの主な国の制度は、環境省の「民間企業等による再エネの導入及び地域共生加速化事業」のうち「再エネ等熱利用設備導入事業」です。執行団体は一般社団法人環境技術普及促進協会です。
地中熱は、温泉熱、河川熱、海水熱、下水熱、雪氷熱と同じ「設備等導入事業B」に区分されています。
- 補助率:補助対象経費の1/2
- 上限額:各年度1億円
- 事業期間:原則単年度。単年度での実施が難しい場合は、応募時に年度ごとの経費を分けた計画を出すことで2か年まで可能
- 補助対象設備:熱交換器、ヒートポンプ、ヒートパイプ、ポンプ、熱導管、蓄熱システムなど。熱を使う側の室内機などは対象外
- 応募できる者:民間企業など。応募者と熱を使う需要家が異なる場合は共同で応募し、直近の決算で債務超過の場合は原則として対象外
協会のQ&A集では、補助対象範囲の例として融雪設備を設置する場合が示されており、空調だけでなく融雪の用途でも検討できます。新築の建物に設備を新設する場合も、CO2削減効果が見込まれ、要件を満たせば対象になり得るとされています。
令和8年度は、一次公募が2026年4月23日から5月28日正午まで、二次公募が6月18日から7月16日正午まで行われ、いずれも終了しています。2026年10月22日時点で、協会のページに次の公募の案内は掲載されていませんでした。
対象になる方式・ならない方式
地中熱の設備は、地中に埋めた配管の中で熱媒体を循環させる「クローズドループ方式」と、地下水をくみ上げてその熱を使う「オープンループ方式」に大きく分かれます。本事業では、この方式によって補助の可否が分かれます。
クローズドループ方式
- 地中熱交換器に水・不凍液などを循環させる
- 地下水の流動の有無にかかわらず全て補助対象
- 事業所への導入で一般的な方式
オープンループ方式
- くみ上げた地下水の熱を使う
- 散水方式・地下水還元方式は原則対象外
- 要件を満たす帯水層蓄熱システムのみ対象
環境技術普及促進協会 Q&A集3-14、公募要領 表3・表5より作成。
帯水層蓄熱システムを対象とするには、導入可能な地盤・地下水条件の事前調査、全量を還元する井戸構造、熱影響への配慮、設備のモニタリングがすべて求められます。
コスト要件:CO2削減コストの基準
本事業では、補助対象経費を耐用年数期間のCO2削減量で割った「CO2削減コスト」が、熱源ごとの基準を下回ることが条件です。地中熱では、方式によって基準が2つに分かれています。
令和8年度二次公募要領 表3より作成。基準値を下回る計画が対象。
「主として地下水熱の利用を目的とした方式」とは、地下水が湧き出た井戸に熱交換器を入れ、地下水と直接触れさせて熱を取る方式です。土壌中に熱交換器を埋める一般的な方式は、より緩い40万円の基準が適用されます。協会は令和8年度の公募予告で、熱交換器を土壌中に埋設する方式のCO2削減コストを増額する見込みと案内していました。
設備の要件と申請までの準備
地中熱利用設備には、次の要件がすべて求められます。
- 地中の熱交換能力を、熱応答試験や揚水試験などの原位置試験で予測した設備であること。応募時に未実施の場合は近傍の実績値などで計画し、導入時に試験を行う
- 地下水・地盤環境のモニタリング機器を備えていること
- 熱媒体の流量を調節する機能があること(ヒートパイプは稼働状況を確認できる機能)
- 地中熱ヒートポンプを設置する場合、熱供給能力が10kW以上であること
また、中古品・リユース品の熱利用設備は補助対象外で、工事は契約前であれば対象になり得るとされています。全体の段取りは次のとおりです。
- 熱需要の把握空調・融雪の負荷と運転時間を整理
- 原位置試験熱応答試験などで採熱量を予測
- 設備計画とCO2削減量コスト要件を満たすか試算
- 公募に応募Jグランツで提出。GビズIDが必要
- 交付決定後に契約完了後は耐用年数期間まで継続使用
補助を受けた後の義務にも注意が必要です。導入した設備は耐用年数期間が終わるまで継続して使う必要があり、その間に補助の目的に反して譲渡・廃棄などをする場合は事前の承認が必要です。また、設備から需要家に供給した熱に紐づく環境価値は需要家に帰属させることが求められます。ESCO事業者やリース事業者を通じて導入する場合は、その事業者が代表となって需要家と共同で応募し、サービス料やリース料から補助金相当分を減額することが条件になります。
掘削を伴う地中熱は初期費用が大きく、熱応答試験にも時間がかかります。春の公募に間に合わせるには、前年度のうちに試験と設計を進めておくことが現実的です。空調更新全体の制度比較は空調更新に使える補助金、工場の排熱を使うヒートポンプは排熱回収・産業用ヒートポンプの補助金で解説しています。
タンソーマンGXでは、地中熱を含む再エネ熱利用設備について、制度の選定から申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- 環境技術普及促進協会 再エネ等熱利用設備導入事業(令和8年度)公募情報
- 環境技術普及促進協会 再エネ等熱利用設備導入事業 公募要領(二次公募)
- 環境技術普及促進協会 再エネ等熱利用設備導入事業 Q&A集(二次公募)
- 環境省 再エネ熱利用・工場廃熱利用等の価格低減促進事業 二次公募の開始について
本記事の内容は2026年10月22日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



