
この記事では、自社が所有していない建物、たとえば賃借している工場や倉庫、テナントとして入居しているビルに太陽光発電を置き、補助金を使う場合の要件を整理します。国と東京都の令和8年度の公募要領をもとに、所有者の同意として何が求められるか、賃貸借の期間と補助金の「処分制限期間」の関係、退去や移転のときの扱いが分かります。
賃借している建物でも対象になるのか
結論から言うと、建物を所有していないことだけを理由に対象外になるわけではありません。ただし、補助対象の設備を長期間その場所で使い続けられることを、書類で示す必要があります。
- 環境省(国):令和8年度当初予算の「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」の公募要領では、処分制限期間(補助金で取得した設備を自由に処分できない期間)中、設備の設置・使用に支障がないことを求めています。そのために、建物・土地の登記事項証明書、賃貸借契約書、承諾書など、権利関係を客観的に確認できる資料の提出を求めています。
- 東京都:令和8年度の「地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業」(都内設置・民間事業者向け)の手引きでは、再エネ設備の設置者と建物の所有者が異なる場合も対象に含むとしています。テナントビルでも、発電した電気をその場で消費することが確認できれば対象です。
つまり、ポイントは「所有者の同意」と「使い続けられる期間の裏付け」の2つです。
3つの導入パターンと補助金の関係
賃借物件での太陽光は、誰が設備を持つかで申請者や必要書類が変わります。
入居企業が設備を持つ
- 入居企業が発注者・所有者になる
- 所有者の承諾書と賃貸借契約書が要る
- 国の事業では「自己所有モデル」
- 東京都は要件を満たせば建物所有者等への売電も可
PPA事業者が設備を持つ
- 入居企業は電気を買う需要家になる
- 屋根の使用について所有者の承諾が要る
- 国の事業ではオンサイトPPAモデル
建物所有者が設備を持つ
- 所有者自身が申請者になる
- 入居企業への電気の供給方法を整理する
- 地産地消(その建物での消費)の確認が前提
環境省事業の公募要領(KY)と東京都の手引き・Q&Aより作成。
環境省の事業では、太陽光発電設備の補助金基準額は自己所有モデルが1kWあたり4万円、オンサイトPPAモデルやリースモデルが5万円で、交付上限額は2,000万円です。自己所有モデルでは、原則として発電した電気を消費する需要家が設備の所有者となり、需要家自身が代表申請者になります。PPAの仕組みと補助金の関係は「PPAモデルで補助金は使えるか」で解説しています。
屋根の使用料の有無や支払先は契約によります。国の事業ではPPA事業者が申請者となり、需要家は共同事業者として加わります。
所有者の同意として何を出すか
東京都の手引きでは、申請者や共同申請者が設備を置く土地・施設の所有者や管理者でない場合、所有者または管理者の同意を得てから申請するよう求めています。誓約書の注意事項にも、施設の所有者が異なる場合は事業実施の同意を得てから申請することと書かれています。
東京都のQ&Aでは、ビルのテナントとして入居している場合について、ビルオーナーから許可を得たうえで申請し、電力の需給契約がテナント単位かビル全体かを確認するよう案内しています。提出する電力明細書は、需要施設として該当施設の住所が書かれた電力会社発行のものです。東京都の事業は、電気事業者との1つの需給契約を1つの申請単位とします。
同意の取り方で実務上大切なのは、補助金の書類に合わせるだけでなく、次の点も書面で合意しておくことです。
- 屋根や外壁への穴あけ、架台の固定方法、防水工事の範囲
- 設備の保守点検のための立ち入り
- 契約終了時の撤去や原状回復の扱い
- 建物の修繕や建て替えの予定
賃貸借の期間と処分制限期間
補助金で取得した設備には、処分制限期間があります。環境省の事業では、太陽光発電設備の処分制限期間は法定耐用年数の17年です。賃貸借契約の残りの期間がこれより短いと、期間中に設置・使用を続けられる裏付けとして弱くなります。契約の更新条項や、承諾書での使用期間の明記を確認してください。
環境省の公募要領は、処分制限期間中の次のような場面についても定めています。
- 使用の中断:店舗や工場の廃止・改装で設備を使えなくなる場合、6か月を目安に、使用再開の見込み時期と再開までの管理について計画を報告します。
- 移転:廃止・改装に伴う代替店舗・工場への移転で、補助事業者に変更がなく、真にやむを得ない事情がある場合などに限り、事前の報告を条件に財産処分の手続きは不要とされています。
- 需要家の変更:オンサイトPPAやリースで設置先の需要家が変わる場合は、新しい需要家のもとで設備を継続して使う必要があります。
これらに当たらない撤去や売却は財産処分の手続きが必要になり、補助金の返還を求められることがあります。処分制限の考え方は「補助金で取得した設備の処分制限」で解説しています。
入居先で太陽光を検討するときの確認項目
環境省事業の公募要領(KY)、東京都の手引き・Q&Aより作成。
環境省の事業では、オンサイトでの自家消費率が50%以上であること、屋根に置く場合は建物が設備の荷重や地震・風・積雪などに耐える構造耐力を持つことも要件です。どちらの制度も、交付決定の前に発注・契約した経費は対象になりません。
なお、省エネ法の特定事業者は、2027年度の定期報告から屋根設置太陽光の設置状況を報告する様式が加わります。中部経済産業局の資料では、建物を所有していなくても太陽光の設置権限がある場合は屋根面積の計上が必要とされています。
環境省の事業の令和8年度二次公募は2026年10月2日に締め切られており、東京都の事業は令和9年3月31日まで受け付けています(予算に達し次第終了)。東京都の事業の詳細は「東京都の地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業」をご覧ください。条件は年度ごとに変わるため、最新の公募要領で確認してください。
タンソーマンGXでは、太陽光・蓄電池の補助金について、所有者との調整を含めた制度選定から申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは蓄電池・太陽光の補助金解説をご覧ください。ご相談は補助金支援のページから承っています。
参考資料
- 環境イノベーション情報機構 令和8年度 ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業 公募要領(KY)
- 環境イノベーション情報機構 令和8年度 ストレージパリティ事業 公募情報
- クール・ネット東京 地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業
- クール・ネット東京 令和8年度 地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業 助成金申請の手引き(都内設置・民間事業者向け)
- クール・ネット東京 令和8年度 地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業 よくあるご質問(都内設置)
- 中部経済産業局 2026年度における変更点について(省エネ法 特定事業者向け)
本記事の内容は2026年10月22日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



