
この記事では、事業承継やM&Aに伴う設備投資・専門家費用・廃業費用を支援する「事業承継・M&A補助金」の全体像を解説します。2026年10月21日時点で受付中の16次公募について、4つの申請枠の違い、補助上限・補助率、申請の流れと注意点を公募要領に沿って整理します。
事業承継・M&A補助金とは
事業承継・M&A補助金は、中小企業庁の「中小企業生産性革命推進事業」の一つです。中小企業・小規模事業者が事業承継やM&A(企業の合併・買収)に際して行う設備投資や、経営資源の引継ぎ、引継ぎ後の経営統合にかかる経費の一部を補助します。
16次公募の主な日程は次のとおりです。
- 公募要領の公開:2026年9月4日
- 公募申請の受付期間:2026年10月2日(金)〜2026年11月6日(金)17:00
- 採択通知:2026年12月下旬(予定)
- 補助事業期間:枠により異なり、事業承継促進枠は2027年1月下旬(予定)から14か月以内
申請は電子申請システム「Jグランツ」のみで、事前に「GビズIDプライム」(法人・個人事業主向けの行政手続き用アカウント)の取得が必要です。中小企業庁は、アカウント取得に2〜3週間程度かかるとしています。
4つの申請枠の違い
16次公募は、事業承継促進枠、専門家活用枠、PMI推進枠、廃業・再チャレンジ枠の4枠で構成されています。どの枠に当たるかは、承継の形と、費用が「設備投資」か「専門家」か「廃業」かで決まります。
事業承継促進枠
- 親族内承継・従業員承継
- 承継後の設備投資など
- 5年以内の承継が条件
専門家活用枠・PMI推進枠
- M&Aの買い手・売り手
- 仲介・FA、DDの費用
- 統合後の投資・専門家費用
廃業・再チャレンジ枠
- 譲り渡せなかった事業の廃業
- 解体・原状回復など
- 他の枠との併用も可
事業承継・M&A補助金16次公募のパンフレットより作成。
各枠の補助上限と補助率
事業承継促進枠
親族内承継や従業員承継を予定する中小企業者・個人事業主が、引き継ぐ経営資源を活用して行う設備投資などが対象です。
- 補助上限額:800万円(一定の賃上げを行う場合は1,000万円)
- 補助率:1/2以内(小規模事業者は800万円相当部分まで2/3以内)
- 補助下限額:100万円
- 廃業費を併せて申請する場合は300万円を上乗せ
上限額を1,000万円に引き上げる賃上げ要件は、補助事業が完了した事業年度と比べて、翌年度の従業員1人当たり給与支給総額を3%以上引き上げることです。また、補助事業期間を含む5年間の計画で、付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)または1人当たり付加価値額を年3%伸ばす計画が求められます。
専門家活用枠
M&Aで株式や経営資源を譲り受ける「買い手支援類型」と、譲り渡す「売り手支援類型」があります。
- 買い手・売り手:補助上限額600万円。デュー・ディリジェンス(DD:買収前に財務や法務のリスクを調べる調査)を行う場合は200万円を加算
- 補助率:買い手は2/3以内、売り手は1/2以内(営業利益率の低下や赤字など一定の条件に当たる場合は2/3以内)
- 100億宣言を行った企業向けの「買い手支援類型100億企業特例」:補助上限額2,000万円(最低譲渡価額5億円以上、被承継者の従業員の雇用を3年間維持などの要件あり)
- 小規模事業者等向けの「小規模売り手支援類型」:補助上限額450万円
仲介・FA(ファイナンシャルアドバイザー)への委託費が補助対象になるのは、中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録された専門家に支払う費用で、委託契約を交付決定日以降に結んだものに限られます。
PMI推進枠
PMI(M&A後の経営統合の取組)を支援する枠です。PMI専門家活用類型は補助上限額150万円・補助率1/2以内、事業統合投資類型は補助上限額800万円(一定の賃上げで1,000万円)で、補助率は事業承継促進枠と同じ考え方です。対象はクロージング後3年以内の取組です。
廃業・再チャレンジ枠
M&Aで事業を譲り渡せなかった株主や個人事業主が、廃業して新たな挑戦をする場合の費用を補助します。補助上限額は300万円です。単独で申請する場合は補助率2/3以内で、2020年以降に売り手としてM&Aに3か月以上取り組んでいることや、補助事業期間内に会社自体の廃業を完了することが条件です。
DD費用や廃業費の上乗せは含まない。事業承継・M&A補助金16次公募のパンフレット・公募要領より。
事業承継促進枠で押さえたい条件
設備投資に使える事業承継促進枠は、承継の中身に細かな条件があります。
- 公募申請期日(2026年11月6日)から5年以内に事業承継を完了すること。完了しなかった場合は補助金の返還が必要
- 承継予定者は、対象会社での役員経験や雇用経験が3年以上ある人、または被承継者の親族であることなど
- 経営権と所有権(株式など)の両方が移転すること。代表者の交代だけの承継や、グループ内の事業再編は原則対象外
- 公募申請前に、認定経営革新等支援機関(国が認定した税理士・金融機関などの支援機関)から事業承継計画の確認書を受けること
- 被承継者に支払う譲り受け費用(土地・資産の購入費など)は原則対象外
承継を機に、工場の照明や空調、生産設備を省エネ型に入れ替えるといった投資も、生産性向上の計画に位置づけられれば検討の対象になります。対象経費の範囲は公募要領で確認してください。
申請から補助金の受け取りまで
- 準備GビズIDプライム取得、確認書・書類の準備
- 公募申請Jグランツで11月6日17:00まで
- 採択・交付申請採択通知は12月下旬予定
- 補助事業の実施交付決定後に契約・発注・支払い
- 実績報告・交付確定検査を経て補助金を受け取る
補助対象になるのは、交付決定日以降に契約・発注し、補助事業期間内に検収と支払いまで終えた経費です。交付決定前に発注した設備は対象外になるため、着工や発注の時期に注意が必要です。補助金は事業完了後の精算払いのため、それまでの資金繰りも計画に入れておきます。
枠の構成や補助上限は公募回ごとに見直されています。申請前には、事務局サイトで最新の公募要領を確認してください。
タンソーマンGXでは、事業承継や設備更新に合わせた補助金の選定から申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- 事業承継・M&A補助金 Webサイト(事務局)
- 事業承継・M&A補助金 16次公募のご案内(総合パンフレット)
- 事業承継・M&A補助金 事業承継促進枠 公募要領(16次公募)
- 事業承継・M&A補助金 専門家活用枠 公募要領(16次公募)
- 中小企業庁 事業承継・M&A補助金(15次公募)の公募について
本記事の内容は2026年10月21日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



