
この記事では、自社のCO2排出量を算定・見える化するツールやシステムを入れるときに使える補助金を整理します。国の制度で計測システムが対象になるもの、自治体がツールの利用料やコンサル費用を補助する制度の実例、申請の前に確かめておくことが分かります。
「見える化」で何を測るのか
排出量の算定範囲は、一般に次の3つに分けて考えます。どこまでを算定するかで、必要なツールや費用が変わります。
- Scope1:自社で燃料を燃やしたことによる直接の排出(ボイラー、社用車など)
- Scope2:購入した電気や熱の使用に伴う間接の排出
- Scope3:原材料の調達や製品の使用・廃棄など、取引先を含むサプライチェーン全体の排出
見える化のツールには、電気・ガスの請求書の数値を入力してScope1・2を集計するクラウドサービスから、設備に計測器を付けて1時間ごとのエネルギー使用量を記録するシステムまで、幅があります。どちらを入れるかで、使える補助金も変わります。排出量の計算方法そのものは「CO2排出量の算定と補助金 削減量の根拠を示す」で解説しています。
国の制度:計測して運用改善までつなげるSHIFT事業のDX型
環境省の「脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業(SHIFT事業)」には、DXシステムを使って運用改善を行う「DX型CO2削減対策実行支援事業」があります。令和8年度の補助率は3/4、補助上限は200万円です(環境省報道発表)。
令和8年度の公募要領では、DXシステムを、エネルギー使用量などを計測・記録できるシステムで、少なくとも1時間ごとにデータを取得・保存でき、事業報告期間中は電子的に管理できるものと定めています。主な要件は次のとおりです。
- 年間CO2排出量が50トン以上3,000トン未満の国内の工場・事業場であること(1事業者あたり最大5か所まで)
- DX型支援に対応できるとして登録された支援機関の支援を受けること
- DXシステムを導入して計測すること(既に持っているシステムの活用も可)
- 設備導入以外の運用改善を3つ以上検討し、補助事業期間内に1つ以上を実施して報告すること
- EEGS(省エネ法・温対法・フロン法の電子報告システム)で排出量を報告すること
DXシステムをレンタルやリースで設置する場合は、事業期間中のレンタル・リース費用を補助対象経費にできます。一方、データの維持管理にかかるランニングコストは対象外です。見える化だけでなく、計測データを使って運用を改善するところまでが事業の範囲になっている点が特徴です。
令和8年度の二次公募は2026年10月15日正午に締め切られています。次の公募の有無は、執行団体の温室効果ガス審査協会のサイトで確認してください。SHIFT事業全体は「環境省SHIFT事業とは」で解説しています。
このほか、事務局に登録されたITツールを対象とするデジタル化・AI導入補助金で、エネルギーやCO2の見える化ツールを検討できる場合があります。対象になるソフトウェアの条件は「システム開発に補助金を使う」をご覧ください。
自治体の制度:ツールの利用料とコンサル費用を補助する例
算定ツールの導入費やクラウドの利用料を直接補助する制度は、自治体が独自に設けている例が中心です。令和8年度の制度として確認できた2つを紹介します。
和歌山県 省エネ診断・排出量見える化等支援事業費補助金
- 対象:県内の事業所で事業を行う中小企業者など
- 排出量見える化事業:算定ツールなどでCO2排出量を継続的に把握・管理する事業。Scope1・2の基本算定、Scope3の算定、製品単位の排出量(CFP)の算定のいずれか、または組み合わせ
- 対象経費:ソフトウェアの導入費用とクラウドサービスの利用料(契約期間が事業期間を超える場合は按分)、コンサルタント費用など
- 補助率・上限:1/2以内、1件100万円まで
- 受付:2026年4月20日から11月2日17時まで。事前申請で、交付決定前に契約・発注した経費は対象外。先着順で予算の範囲内
高松市 中小企業向けCO2削減目標設定補助金
- 対象:市内に本社または主たる事業所がある中小企業者など
- 対象経費:温室効果ガス排出量の可視化システムの導入費用と、導入に付随するCO2削減目標の設定に関するコンサルティング料(消費税相当額を除く)
- 補助率・上限:1/2、15万円まで(予算額225万円)
- 受付:2026年7月15日から2027年1月29日まで。先着順で予算がなくなり次第終了。契約は2026年4月7日から2027年1月29日までに結ぶもの
- その他:同じシステムで他の制度の助成を受けていないこと。実績報告では脱炭素に向けた取組宣言を出す
SHIFT事業 DX型(国)
- 補助率3/4・上限200万円
- 計測システムと支援機関の支援
- 運用改善の実施まで求められる
- 令和8年度二次公募は締切済み
和歌山県
- 補助率1/2・上限100万円
- ツール導入費・クラウド利用料
- Scope3やCFPの算定も対象
- 事前申請は11月2日まで
高松市
- 補助率1/2・上限15万円
- 可視化システムと目標設定の費用
- 先着順・予算225万円
- 受付は2027年1月29日まで
2026年10月22日時点の各公募要領・公式ページより作成。
お金と成果物の流れ
自治体の補助金を使ってクラウド型の算定ツールを入れる場合、典型的には次のような関係になります。補助金は後払いのため、利用料はいったん全額を自社で支払います。
補助金は実績報告と額の確定の後に支払われます。
選ぶときに確かめておくこと
- 事前申請か事後申請か:和歌山県の見える化事業のように、交付決定の前に契約するとその経費が対象外になる制度があります。ツールの無料期間が終わる前に申し込む場合も、契約日に注意が必要です。
- 利用料の対象期間:年間契約でも、補助の対象は事業期間内の分に按分されるのが一般的です。
- 重複の制限:高松市は同じシステムで他の制度の助成を受けていないことを要件にしています。和歌山県は、国などから補助を受ける額を対象経費から除くとしています。
- 算定の範囲:Scope1・2だけか、Scope3や製品単位まで対象かは制度で異なります。取引先から何を求められているかを先に整理しておくと、制度を選びやすくなります。
- その後の活用:算定した排出量は、省エネ設備の補助金でCO2削減量の根拠を示すときの基礎データにもなります。
自治体の制度は先着順で予算がなくなると終わるものが多く、年度ごとに内容も変わります。所在地の都道府県と市区町村のサイトで、最新の募集要項を確認してください。
タンソーマンGXでは、排出量の見える化から省エネ設備の導入まで、使える補助金の選定から申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- 環境省 令和8年度「脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業(SHIFT事業)」の公募開始について(三次公募)
- 温室効果ガス審査協会 令和8年度 SHIFT事業 DX型CO2削減対策実行支援事業 二次公募 公募要領
- 温室効果ガス審査協会 SHIFT事業 公募・交付関連資料(令和8年度)
- 和歌山県 令和8年度省エネ診断・排出量見える化等支援事業費補助金
- 高松市 令和8年度高松市中小企業向けCO2削減目標設定補助金
本記事の内容は2026年10月22日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



