
この記事では、木質バイオマスボイラーなど、木材や農業残さを燃料にして熱をつくる設備に使える補助金を整理します。中心となる環境省の「再エネ等熱利用設備導入事業」の補助率と、審査で使われる「CO2削減コスト」の考え方、林野庁の支援や他制度との関係を、令和8年度(2026年度)の公表資料をもとに解説します。
木質バイオマスボイラーとは
木質バイオマスボイラーは、木材チップ、木質ペレット、製材端材などを燃やして温水や蒸気をつくる設備です。燃料の木材は成長の過程でCO2を吸収しているため、重油や灯油のボイラーから切り替えると、事業所の化石燃料由来のCO2排出を減らせます。工場の加温工程、温浴施設や宿泊施設の給湯、施設園芸の暖房などで使われています。
一方で、燃料の調達と保管、灰の処理、ボイラーの運転管理など、化石燃料のボイラーとは違う手間がかかります。補助金の審査でも、燃料をどこからどのように安定して調達するかが問われます。
燃料の出所が分かる書類(由来証明書等)の提出が、環境省の補助事業の要件になっています。
中心となる制度:環境省「再エネ等熱利用設備導入事業」
事業者がバイオマスボイラーを導入するときの主な国の制度は、環境省の「民間企業等による再エネの導入及び地域共生加速化事業」のうち「再エネ等熱利用設備導入事業」です。執行団体は一般社団法人環境技術普及促進協会で、令和7年度補正予算から現在の名称になりました。
この事業は3つの区分に分かれており、バイオマスボイラーは太陽熱と同じ「設備等導入事業A」に入ります。
- 設備等導入事業A:太陽熱、バイオマス熱利用設備、自家消費型の再エネ発電設備(太陽光を除く)。補助率1/3、上限1億円(2か年で実施する場合は合計額の上限)
- 設備等導入事業B:地中熱、温泉熱、河川熱、下水熱、雪氷熱など。補助率1/2、上限は各年度1億円
- 設備等導入事業C:工場廃熱等の利用設備など。補助率1/2、上限は各年度1億円
補助対象は、バイオマスボイラー本体に加え、熱交換器、ヒートポンプ、ポンプ、熱導管、蓄熱システムなどの付随設備です。熱を使う側の室内機などは対象外です。バイオマス燃料を製造する設備は、熱利用設備と同時に導入する場合に限り対象になります。
令和8年度は、一次公募が2026年4月23日から5月28日正午まで、二次公募が6月18日から7月16日正午まで行われ、いずれも終了しています。2026年10月22日時点で、協会のページに次の公募の案内は掲載されていませんでした。
審査の基準:バイオマス依存率と「CO2削減コスト」
バイオマスボイラーで補助を受けるには、設備の要件とコストの要件の両方を満たす必要があります。
- バイオマス依存率60%以上:燃料の発熱量のうち、バイオマスが占める割合が60%以上であること。家畜ふん尿や食品残さなどだけを原料にする場合は100%とみなされます。
- CO2削減コストが基準以下:補助対象経費を、耐用年数期間に減らせるCO2の量で割った値が、熱源ごとの基準を下回ること。
- 燃料の出所の証明:木質バイオマスを使う事業では、燃料の由来証明書などを提出すること。
CO2削減コストの基準は、熱源によって大きく異なります。木質系は最も厳しい水準に設定されているため、同じ規模でも設備費が高すぎる計画や、稼働時間が短くCO2削減量が小さい計画は対象になりにくくなります。
環境技術普及促進協会「再エネ等熱利用設備導入事業」令和8年度二次公募要領 表1より作成。基準値を下回る計画が対象。
審査では、CO2削減効果の大きさに加え、熱源の調達をライフサイクルで見たときのCO2排出の少なさが評価され、木質バイオマスについては国産であるかどうかも見られます。燃料の調達先と輸送距離は、計画の段階で具体的に詰めておく必要があります。
林野庁の支援と、ほかの制度との関係
林野庁の木質バイオマス利用促進施設整備
林野庁は、「林業・木材産業循環成長対策」の中で、木質チップ・ペレットの製造施設や木質資源利用ボイラーなどの整備を支援しています(2026年5月更新の同庁ページ)。この支援は都道府県を通じた間接補助のため、相談先は各都道府県の林務担当窓口です。地域の林業と連携した熱利用を計画している場合は、早めに県に問い合わせると、対象となるかどうかを確認できます。
省エネ補助金・リース補助との関係
重油ボイラーを高効率な化石燃料ボイラーやヒートポンプに更新する場合は、SIIの省エネ補助金が候補になります。ボイラー更新全般の考え方はボイラー更新・燃料転換に使える補助金で解説しています。なお、環境省のESGリース促進事業では高効率ボイラが対象機器に入っていますが、燃料は都市ガスとLPガスに限られており、バイオマスボイラーは対象外です。
また、再エネ等熱利用設備導入事業では、発電設備についてFIT・FIPによる売電や自己託送を行わないことが要件です。熱電併給(コージェネレーション)で発電もする場合は、再エネ設備の補助金とFIT・FIPの関係もあわせて確認してください。
導入を検討するときの進め方
- 熱需要を測る:時間帯別・季節別にどれだけの熱を使っているかを把握し、ボイラーの容量と稼働時間を決めます。稼働時間が長いほどCO2削減量が増え、コスト要件を満たしやすくなります。
- 燃料の調達先を決める:チップかペレットか、含水率、供給量、価格、由来証明書の発行可否を供給先と確認します。
- 保管と灰の処理:燃料サイロや搬入路の場所、灰の処分方法を設計に織り込みます。
- 公募時期に合わせる:令和8年度は春から夏に公募があり、交付決定前の契約・発注は対象外です。次年度の公募に向けて、見積と計画を前倒しで準備します。
補助率や基準値は年度ごとに改正されることがあるため、申請時には必ずその年度の公募要領で確認してください。
タンソーマンGXでは、バイオマスボイラーを含む再エネ熱利用設備について、制度の選定から申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- 環境技術普及促進協会 再エネ等熱利用設備導入事業(令和8年度)公募情報
- 環境技術普及促進協会 再エネ等熱利用設備導入事業 公募要領(二次公募)
- 環境省 再エネ熱利用・工場廃熱利用等の価格低減促進事業 二次公募の開始について
- 林野庁 木質バイオマス利用推進の取組(木質バイオマス利用に関する支援等)
- 環境金融支援機構 ESGリース促進事業 基準補助率一覧表(令和8年度)
本記事の内容は2026年10月22日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



