
この記事では、工場や店舗など需要家側に設置する産業用蓄電池に使える主な支援制度を、国の2つの補助金と東京都の助成金に分けて整理します。制度ごとに「何と一緒に入れる蓄電池か」「どのような使い方を求められるか」が異なるため、選び方の考え方もあわせて解説します。
産業用蓄電池の補助金は「目的」で分かれる
工場・店舗に置く蓄電池(需要家側蓄電池)の補助金は、蓄電池そのものの性能よりも、導入の目的で制度が分かれています。代表的なのは次の3つの考え方です。
- 太陽光発電と一緒に入れる:自家消費型の太陽光発電を最大限使うための蓄電池。環境省の制度が中心です
- DR(ディマンドリスポンス)に使う:電力需給がひっ迫したときや再エネが余るときに、充放電で需要を調整する蓄電池。経済産業省の制度で、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が執行しています
- 自治体独自の支援:東京都のように、蓄電池単独の設置も対象にしている制度があります
なお、電力系統に直接つなぐ「系統用蓄電池」は需要家側の蓄電池とは別の制度です。詳しくは系統用蓄電池の補助金の解説をご覧ください。
環境省(太陽光と同時導入)
- 自家消費型太陽光とセット
- 業務・産業用は3.9万円/kWh
- 令和8年度の公募は終了
経産省・SII(DR対応)
- 高圧以上の需要側に設置
- 100kW未満は補助率1/3以内
- DR契約などが条件
東京都(都内設置)
- 蓄電池単独でも対象
- 中小企業等は3/4以内
- 予算到達で受付終了
各制度の公募要領・報道発表に基づき作成。
環境省:太陽光発電と一緒に入れる蓄電池
環境省の令和8年度当初予算「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」は、太陽光発電設備と蓄電池を同時に導入する事業が対象です。執行団体は一般財団法人環境イノベーション情報機構(EIC)です。「ストレージパリティ」とは、蓄電池を入れる経済的メリットが導入費用を上回る状態を指します。
補助額の考え方
- 定置用蓄電池(業務・産業用、容量20kWh超):3.9万円/kWh。ただし補助対象経費の3分の1が上限
- 交付上限額:蓄電池・車載型蓄電池・充放電設備の合計で4,000万円。太陽光発電設備の2,000万円と合わせて1申請6,000万円
- 公募要領では、業務・産業用蓄電池の2026年度の目標価格(税抜・工事費込み)を11.8万円/kWhとしています
主な要件
- 太陽電池出力10kW以上(戸建て住宅以外)、蓄電池容量の合計20kWh以上
- 自家消費率50%以上、逆潮流(余剰電力を系統へ流すこと)は原則禁止
- FIT・FIPの認定を取得しないこと
- 停電時に必要最低限の電力を供給できること
- 通信機能を持つ機器はJC-STAR(IoT製品のセキュリティ適合ラベル)★1以上の製品を使うこと
令和8年度は一次公募(7月9日〜7月31日)と二次公募(8月27日〜10月2日)が行われ、いずれも締め切られています。設備の検収・支払いは2027年1月29日までに完了する必要があります。
経済産業省・SII:DRに活用する業務産業用蓄電池
令和7年度補正「業務産業用蓄電システム導入支援事業」は、DRに活用できる小規模業務産業用蓄電システムを新たに導入する事業が対象です。蓄電池のPCS(パワーコンディショナ)合計出力が100kW未満で、高圧以上で受電する工場やビルなどの需要側に設置する設備に限られます。
- 補助金基準額:3.75万円/kWh(蓄電容量)。評価項目を満たすと上乗せがあります
- 補助率:設計費・設備費・工事費の1/3以内
- 補助上限額:1申請あたり1,500万円
- 目標価格:設備費と工事費の合計が11.9万円/kWh(税抜)以下であること
- 公募期間:2026年3月24日〜10月30日。予算額に達した場合は期間内でも受付終了
申請者は、蓄電池アグリゲーター(蓄電池を遠隔で制御してDRを行う事業者)とDR契約を結ぶか、小売電気事業者のDRメニューに加入する必要があります。契約や加入は少なくとも2028年3月31日まで継続することが条件です。DRの考え方は蓄電池の補助金とDR対応の解説で詳しく説明しています。
PCS合計出力100kW以上の蓄電池は「大規模業務産業用蓄電システム等導入支援事業」の対象ですが、SIIは令和7年度補正の同事業について、1次公募の結果をもって終了したと公表しています。
東京都:都内の事業所なら蓄電池単独も対象
東京都の「地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業」は、令和8年度も4月1日から申請を受け付けています。受付期間は令和9年3月31日までですが、予算額に達し次第終了します。
- 再エネ発電設備と同時に設置する蓄電池:中小企業等は3/4以内、その他の事業者は2/3以内(発電設備と合わせて上限2億円)
- 都内に蓄電池を単独で設置する場合:中小企業等は3/4以内(上限900万円)、その他は2/3以内(上限800万円)
- 蓄電池は定置用に限られ、可搬式は対象外です
窓口は公益財団法人東京都環境公社(クール・ネット東京)です。都内設置の詳細は東京都の地産地消型事業(都内設置)の解説をご覧ください。
制度選びで確かめたい4つのこと
- 受電の区分:SIIの業務産業用は高圧以上の需要側が前提です。低圧受電の店舗は対象外となる点に注意が必要です
- 太陽光の有無:環境省の制度は太陽光との同時導入が原則で、既設の太陽光に蓄電池だけを足す申請は認められていません
- DRへの参加:SIIの制度は、アグリゲーターや小売電気事業者を通じたDRの実施が交付の条件です
- 処分制限期間:補助金で取得した設備は、法定耐用年数の間は承認なく売却・廃棄できません。環境省の公募要領では定置用蓄電池の法定耐用年数を6年としています
また、どの制度も交付決定前に契約・発注した経費は補助対象になりません。国と自治体の補助金を併用できるかは、制度ごとの規定で確認が必要です。補助の条件は年度ごとに見直されるため、申請時は必ず最新の公募要領を確認してください。
まとめ
産業用蓄電池の補助金は、太陽光とセットで自家消費を増やすのか、DRに参加するのか、自治体の制度を使うのかで選ぶ制度が変わります。令和8年度は環境省の公募が締め切られ、SIIの業務産業用も10月30日が期限のため、次年度の公募に向けて受電区分・電力使用データ・DRの参加方法を早めに整理しておくことが重要です。
タンソーマンGXでは、産業用蓄電池の制度選定から申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- 環境イノベーション情報機構 令和8年度 ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業 公募ページ
- 令和8年度 ストレージパリティ事業 公募要領(KY)
- SII 令和7年度補正 業務産業用蓄電システム導入支援事業 公募情報
- SII 令和7年度補正 業務産業用蓄電システム導入支援事業 公募要領
- SII 令和7年度補正 大規模業務産業用蓄電システム等導入支援事業
- 東京都 報道発表「地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業」令和8年度申請受付開始
- クール・ネット東京 地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業
本記事の内容は2026年10月21日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



