公開 2026.10.22

補助金の消費税仕入控除税額の返還 申請時と確定後の手続き

この記事では、補助金の交付規程にある「消費税等仕入控除税額」の考え方と、申請時・実績報告時・消費税申告後のそれぞれで必要になる手続きを解説します。補助金で買った設備の消費税を確定申告で仕入税額控除すると、その分を補助金から返す必要が生じる場合があります。中小機構の交付規程と自治体の案内をもとに、返還が生じる場合と生じない場合を整理します。

なぜ消費税分を返す必要があるのか

課税事業者は、消費税の確定申告で、売上に含まれる消費税から仕入れや設備投資で支払った消費税を差し引いて納税します(仕入税額控除)。補助金で設備を買った場合も、その設備代に含まれる消費税は控除の対象になります。

もし補助金の計算に消費税分を含めていると、事業者は「補助金で消費税分を受け取る」と「申告で同じ消費税分の控除を受ける」の両方を得ることになります。中小機構の公募要領は、課税事業者の場合は課税仕入れに伴い消費税の還付金が発生するため、この還付と補助金の交付が重複しないよう、消費税相当額をあらかじめ補助対象経費から減額しておくと説明しています。この減額分を「消費税等仕入控除税額」と呼びます。

中小企業省力化投資補助金交付規程(第7条)では、消費税等仕入控除税額を「補助対象経費に含まれる消費税及び地方消費税相当額のうち、仕入れに係る消費税額として控除できる部分の金額に補助率を乗じて得た金額」と定義しています。補助金に関する法人税の扱い(圧縮記帳)は補助金は課税される?圧縮記帳と国庫補助金の会計処理で解説しています。

国の設備補助金では最初から除くのが基本

国の主な設備補助金は、消費税をはじめから補助対象経費に含めません。SIIの省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)の公募要領は消費税・地方消費税を補助対象外とし、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領も公租公課(消費税等)を対象外経費に挙げたうえで、交付申請の際に消費税等仕入控除税額を減額して記載するよう求めています。

ただし、交付規程には、申請時点で控除額が明らかでない場合の手当てと、事業完了後に控除額が確定した場合の返還の規定が置かれています。税込で補助対象経費を算定する自治体の制度などでは、この規定が実際に問題になります。

申請時・確定前・申告後の3つの段階

中小企業省力化投資補助金交付規程では、消費税等仕入控除税額について次の手続きが定められています。

消費税等仕入控除税額の手続きの流れ(省力化投資補助金交付規程)
  1. 交付申請(第7条)控除税額を減額して申請。明らかでなければ減額しなくてよい
  2. 交付決定(第10条)未減額の場合は、額の確定で減額する条件が付く
  3. 実績報告(第18条)控除税額が明らかなら減額して報告
  4. 消費税の申告後(第21条)控除税額が確定したら様式第5で速やかに報告
  5. 返還命令報告に基づき全部または一部の返還を命じられる

返還期限は命令の日から20日以内で、期限を過ぎると年10.95%の延滞金がかかります(同規程第19条第3項を準用)。

消費税の確定申告は事業年度が終わってから行うため、控除額が確定するのは補助金の額の確定より後になることが多くなります。長野県の案内でも、通常は仕入控除税額の確定が完了検査より後になると説明しています。補助金の入金後に返還の手続きが残ることを、経理の担当者と共有しておくことが大切です。実績報告と額の確定の流れは実績報告と額の確定をご覧ください。

返還が生じる場合と生じない場合

返還額は、事業者の消費税の申告方法によって変わります。長野県の「再生可能エネルギー普及総合支援事業」の消費税の取扱いの案内では、次のように整理されています(同県の制度の例です)。

返還の有無の考え方(長野県の案内の例)

返還が生じない例

  • 消費税の申告義務がない(免税事業者)
  • 簡易課税方式で申告している
  • 特定収入割合が5%超の公益法人等
  • 個別対応方式で非課税売上のみに要するものとして申告
  • 補助対象経費が人件費等の非課税仕入のみ

返還が生じる例

  • 一般課税(原則課税)で申告し、補助対象経費の消費税を控除した
  • 課税売上高5億円以下かつ課税売上割合95%以上なら、返還額は補助金額×10/110
  • それ以外は一括比例配分方式・個別対応方式に応じて計算

返還が生じない場合でも、0円での報告と理由を説明する資料の提出が必要とされています。

たとえば、税込の補助対象経費をもとに1,100万円の補助金を受け、課税売上高5億円以下・課税売上割合95%以上の一般課税の事業者であれば、この計算式では返還額は100万円になります。課税売上割合が低い事業者や、個別対応方式を採る事業者は計算が変わるため、顧問税理士に確認したうえで報告書を作成してください。

同じ案内では、消費税額を補助対象経費から除いて交付申請した場合は、消費税等仕入控除税額報告書の提出は不要としています。報告の要否は制度ごとに交付要綱・交付規程で定められるため、必ず該当する制度の規定で確認してください。

実務で気をつけたいこと

  • 申請時に税抜で組み立てる:国の制度では消費税は対象外のため、見積・補助対象経費は税抜で整理します。
  • 税込で受けた場合は申告後の報告を予定に入れる:長野県の案内では、消費税の確定申告後、1か月以内を目途に報告するよう求めています。
  • 課税方式の変更に注意:免税事業者や簡易課税の事業者は返還が生じない例とされていますが、申告方法が変わる年度は計算が変わります。
  • 報告を忘れない:返還が生じない場合でも報告を求める制度があります。

まとめ

補助金と消費税の仕入税額控除が重複しないよう、国の設備補助金では消費税を補助対象から除くのが基本です。税込で補助金を受けた場合は、消費税の申告で控除額が確定した後に報告し、その分を返還します。返還額は申告方法や課税売上割合で変わり、制度ごとに報告の要否や時期も異なります。条件は年度ごとに見直されることがあるため、最新の交付規程・交付要綱で確認してください。

タンソーマンGXでは、補助金の申請から実績報告、その後の報告手続きまでを、顧問税理士の方と連携しながら支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。

参考資料

本記事の内容は2026年10月22日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。

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