
この記事では、射出成形機などのプラスチック加工機械と、金型や成形品の冷却に使うチラー(冷水をつくる冷却装置)を更新するときに使える省エネ補助金を整理します。中心となるのは、令和7年度補正予算の「省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)」です。対象になる機械の範囲、チラーの性能基準、補助率と上限、4次公募の日程と工期の注意点が分かります。
成形工場の設備と補助金の対応
樹脂成形の工場では、樹脂を溶かして型に流し込む成形機のほか、金型や成形品を冷やすチラー、エアを送るコンプレッサー、空調・照明が電力を使います。設備単位型は、SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)があらかじめ定めた「指定設備」に更新する事業を支援する制度で、令和7年度補正では生産設備として「プラスチック加工機械」が指定設備の一つに入っています。
SII「令和7年度補正 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)公募要領(4次公募)」の指定設備の区分より作成。
プラスチック加工機械として対象になる範囲
公募要領の別表1では、「⑫プラスチック加工機械」を次の4種別に分けています。いずれも、SIIが定めたエネルギー消費効率等の基準を満たし、補助対象設備として型番が登録・公表された機種に限られます。
- 射出成形機:JIS B 8650:2006で射出成形機に分類されるもの。対象範囲は本体(型締装置、射出装置、駆動装置、制御装置)
- 押出成形機:JIS B 8650:2006で押出成形機に分類されるもの。フィルム・シート・パイプ等への成形、ラミネート加工、被覆、巻取りを行う装置を含む
- ブロー成形機:JIS B 8650:2006でブロー成形機に分類されるもの(本体)
- 真空・圧空成形機:シート等を加熱して型に密着させて成形する機械。トリミング装置などの関連付帯装置を含む
公募要領は「本体とは、登録された型番が示す範囲の設備をいう」としています。取出し機や材料の乾燥機など周辺の機器が補助対象に含まれるかは、メーカーが登録した型番の範囲で決まります。見積の段階で、メーカーや販売店に型番登録の有無と範囲を確認しておくと確実です。
なお、設備単位型の従来の枠は「更新」が条件です。工場の増設で成形機を新たに追加する場合は、この枠の対象になりません。
チラーは「チリングユニット」の基準で判断する
成形機や金型の冷却に使うチラーは、指定設備の「①高効率空調」の中の「チリングユニット」として扱われます。電動の圧縮機を使うヒートポンプ方式に限られ、性能の基準は次のとおりです。
- 空冷式:定格冷房能力と定格暖房能力を、それぞれの定格消費電力で割った値の平均が3.0以上
- 水冷式:定格冷房能力を定格冷房消費電力で割った値が3.8以上
公募要領は、空調以外の目的(産業プロセスの冷却用途)で使う場合も、JIS B 8613:2019の温度条件で計算した性能値が基準を満たすことを求めています。カタログにその条件での値がない場合は、計算した値を記載した仕様書等の添付が必要です。オゾン層を破壊する物質を冷媒に使う設備は対象外です。
洗浄や加温などで温水が必要な工程では、「②産業ヒートポンプ」の区分も候補になります。たとえば空冷ヒートポンプチラー(温水利用)は、外気7℃・温水出口45℃の条件でCOP(消費電力1に対して得られる熱量の比)3.00以上が基準です。コンプレッサーの更新はコンプレッサー・生産設備の省エネ更新と補助金で詳しく解説しています。
補助率・上限と申請の要件
令和7年度補正の設備単位型には、従来の枠に加えて、GX要件を満たしたメーカーの設備を対象とする枠が設けられています。補助対象経費は設備費です。
(Ⅲ)設備単位型[従来枠]
- 補助率:1/3以内
- 上限1億円・下限30万円(事業全体)
- SIIが公表した指定設備へ更新
(Ⅲ)GX設備単位型[メーカー強化枠]
- 補助率:1/3以内
- 上限3億円・下限30万円(事業全体)
- 指定設備のうち、GX要件を満たしたメーカーが製造する設備へ更新
GX要件を満たしたメーカーはSIIのホームページで公表されます。性能がさらに高い設備を対象とする「トップ性能枠」もあります。
申請には、原油換算で次のいずれかの省エネ効果が必要です。
- 計画省エネルギー率が10%以上
- 計画省エネルギー量が1kl以上
- 経費当たりの計画省エネルギー量が1kl/千万円以上
省エネ量は、申請用の補助事業ポータルに導入予定設備の稼働時間などを入力すると自動で計算されます(指定計算)。申請者が独自に計算する方法もあります。このほか、省エネ法の定期報告義務がない事業者は、SII指定の様式でエネルギーの中長期計画を作成して提出します。大企業は、省エネ法のクラス分け評価でSクラス・Aクラスに該当するなど、公募要領が定める要件を満たす場合に限り申請できます。制度全体の仕組みは省エネ補助金「設備単位型」 対象設備と補助率をご覧ください。
4次公募の日程と成形機の納期
令和7年度補正の設備単位型は、4次公募の受付が2026年10月30日(金)17時(必着)までです。単年度事業の流れは次のとおりです。
- 公募2026年10月5日〜10月30日17時必着
- 審査・採択予算を超えると総合評価で不採択も
- 交付決定2026年12月下旬の予定
- 発注・据付交付決定の後に契約・発注
- 事業完了2027年1月31日まで
- 実績報告完了から30日以内か2月5日の早い日
交付決定から事業完了までは1か月余りしかありません。成形機やチラーの納期が長い場合、単年度での実施は難しくなります。公募要領は、単年度での実施が困難な事業を対象とする「複数年度事業」も設けています。申請前に、メーカーに納期と据付期間を確認し、単年度か複数年度かを決めておくことが重要です。
申請の前には3者見積も必要です。4次公募の予算は3次公募の採択結果によって変わる場合があるとされています。対象区分や基準は年度ごとに見直されるため、次の年度に申請する場合は改めて公募要領を確認してください。
工場全体で省エネを進める場合
成形機やチラーの更新に合わせて、エネルギーの使い方を計測・制御するEMS(エネルギーマネジメントシステム)を入れる場合は、「(Ⅳ)エネルギー需要最適化型」を組み合わせて申請できます。補助率は中小企業者等が1/2以内、大企業・その他が1/3以内で、上限は1億円です。設備単位型ではEMSだけの申請はできず、EMSを単独で導入する場合は工場・事業場型の(Ⅳ)型に申請します。詳しくは省エネ補助金「エネルギー需要最適化型」で解説しています。
工場全体の大規模な更新や燃料転換まで視野に入れる場合は、工場・事業場型や環境省のSHIFT事業も候補になります。製造業全体で使える制度の見取り図は製造業・工場で使える脱炭素補助金にまとめています。
まとめ
令和7年度補正の設備単位型では、射出・押出・ブロー・真空圧空の各成形機が「プラスチック加工機械」として指定設備に入り、チラーはチリングユニットの性能基準で判断されます。補助率は1/3以内で、どちらの機器も型番登録の有無と範囲の確認が出発点です。4次公募は事業完了までの期間が短いため、納期の確認と単年度・複数年度の選択を早めに行うことをお勧めします。
タンソーマンGXでは、成形工場の設備更新について、使える制度の選定から省エネ量の計算、申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- SII 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)公募要領(4次公募用)
- SII 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)4次公募
- SII 指定設備の補助対象設備一覧
本記事の内容は2026年10月22日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



