公開 2026.10.22

災害時にも電気を使える自立・分散型エネルギー設備の補助金

この記事では、停電やガス・水道の途絶が起きても事業所で電気や熱を使い続けるための「自立・分散型エネルギー設備」に使える補助金を整理します。令和8年度に公募されている国の制度を、民間の事業所が自ら申請できるものと、自治体と組んで関わるものに分けて解説します。

「災害時にも電気を使える」設備の3つの型

自立・分散型エネルギー設備とは、電力会社の送電網(系統)が止まっても、敷地内の設備だけで電気や熱をまかなえる仕組みのことです。事業所で選ばれる方式は、大きく次の3つに分かれます。

  • 燃料を備蓄して発電する:LPガスや灯油・軽油・重油をタンクに蓄え、発電機やガス空調(GHP)を動かす方式。天候に左右されず、数日間の運転を見込めます。
  • 太陽光と蓄電池で自給する:平時は自家消費で電気代を下げ、停電時は蓄電池から必要な電力を出す方式です。
  • 熱と電気を同時につくる:コージェネレーション(ガスなどで発電し、その排熱も使う設備)を自立運転できるようにする方式です。

どの方式を選ぶかで、使える補助金が変わります。以下では、令和8年度に公募されている国の主な制度を順に見ていきます。

災害対応のエネルギー設備と主な国の制度(令和8年度)

燃料備蓄+発電機

  • 自衛的燃料備蓄補助金(経済産業省)
  • 病院・福祉施設・避難所が対象
  • 補助率1/2以内(中小企業者は2/3以内の区分あり)
  • 上限は最大5,000万円

太陽光+蓄電池

  • ストレージパリティ事業(環境省)
  • 停電時に必要最低限の電力供給が要件
  • 令和8年度の公募は終了
  • 自家消費率50%以上

公共施設の防災設備

  • 地域レジリエンス事業(環境省)
  • 申請者は地方公共団体
  • 民間企業は共同申請で参加
  • 令和8年度は四次公募中

各執行団体の公募要領・申請の手引きより作成。

燃料を備蓄する設備:自衛的燃料備蓄補助金

経済産業省の「災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費補助金」は、LPガスの災害用バルク(大型の貯蔵容器)や石油製品タンクと、それにつながる発電機・空調・燃焼機器の導入を補助する制度です。執行団体は一般財団法人エルピーガス振興センターです。系統電力・都市ガス・水道がすべて止まっても、施設の機能を3日間以上維持することを目的としています。

対象になる施設

  • 避難が困難な人が多い施設:入院設備のある医療施設や人工透析クリニック、老人ホームなどの福祉施設、0歳児を受け入れる保育所など(災害拠点病院などは除く)
  • 公的避難所:市区町村が避難所として指定した施設。民間施設でも、災害時に市区町村が主体となって避難所を運営する場合は公的避難所として扱われます
  • 一時避難所となり得る施設:市区町村と避難所として使う協定を結んだ民間企業の事務所、工場、商業施設、宿泊施設など(令和8年度のみ申請可能)

一般の工場や店舗でも、市区町村と避難所協定を結べば対象施設になり得る点が、民間企業にとっての要点です。

補助率と交付限度額

補助率は補助対象経費の1/2以内です。避難が困難な人が多い施設のうち、中小企業者が実施する事業は2/3以内になります。申請1件あたりの交付限度額は、導入する設備の組み合わせで決まります。

LPガス災害バルク等の交付限度額(申請1件あたり)
  • 貯蔵容器+発電機+空調5,000万円
  • 貯蔵容器+その他のLPガス設備3,000万円
  • 貯蔵容器と供給設備のみ1,000万円

石油製品タンク等は、タンクのみ1,000万円、タンク+接続する燃焼機器・発電機で5,000万円。申請の手引き(令和7年度補正・令和8年度)より作成。

申請では、設置するLPガス容器の貯蔵上限量の50%で、災害時に使う全設備を3日以上7日以下動かせることを燃料消費量計算書で示します。石油製品タンクの場合も、接続する機器の3日分以上の燃料を確保できる容量が必要です。年1回以上、機器を使う訓練を行うことも条件になっています。

令和8年度は5月から第1回の公募が始まり、第3回は10月5日に締め切られました。エルピーガス振興センターは、第4回公募を11月10日(火)締切で実施すると告知しています。第4回では、設置先の建物が賃貸の場合も、建物の所有者・運営者の共同申請で申請できるよう見直されます。最新の公募期間は同センターのサイトで確認してください。

太陽光と蓄電池:自家消費型の補助金に停電時の要件

環境省の「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」は、自家消費型の太陽光発電と蓄電池を同時に導入する事業を補助します。この制度では、導入する太陽光発電設備または蓄電池により、停電時に対象施設で必要最低限の電力を供給できるようにすることが要件です。停電時の操作マニュアルを整え、非常用コンセントを使う場所の近くに設けることも求められています。

令和8年度の公募はすでに締め切られています。補助単価や要件の詳細は産業用蓄電池の補助金で解説しています。EVの電池を非常用電源として使う方法は、V2H充放電設備の補助金をご覧ください。

公共施設の防災拠点:地域レジリエンス事業と民間の関わり方

環境省の「地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する公共避難施設・防災拠点への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業」は、地域防災計画で避難施設や防災拠点に位置付けられた公共施設に、再エネ設備・蓄電池・コージェネレーションなどを導入する事業を補助します。執行団体は一般財団法人環境イノベーション情報機構(EIC)です。

  • 申請できるのは地方公共団体と、地方公共団体と共同申請する民間企業
  • 補助率は、市区町村等が太陽光以外の再エネ設備や未利用熱活用設備を導入する場合などは2/3、太陽光やコージェネレーションは1/2、都道府県・指定都市は1/3
  • 導入する設備は、平時も災害時も施設で自家消費することが条件
  • 令和8年度の四次公募は令和8年10月13日から11月13日正午まで

民間の事業所そのものは対象外ですが、PPA(発電事業者が設備を設置して電気を供給する契約)やリースで自治体の施設に設備を提供する事業者は、共同申請者として関わることができます。

申請前に整理しておきたいこと

災害対応設備の検討手順
  1. 守る機能を決める停電時に動かす設備と必要日数
  2. 必要量を試算発電容量と燃料・蓄電の量
  3. 自治体と協議避難所協定の有無を確認
  4. 制度を選ぶ施設の種類と方式で決まる
  5. 交付決定後に発注決定前の契約は対象外

どの制度も、交付決定の前に契約・発注した経費は補助の対象になりません。また、補助金で導入した設備は法定耐用年数の間、承認なく売却や廃棄ができません。自衛的燃料備蓄補助金では、処分制限期間中は設備を設置した建物の処分にも事前の承認が必要です。条件は年度ごとに見直されるため、申請時は必ず最新の公募要領を確認してください。コージェネレーションの補助金は業務用コージェネレーションの補助金で詳しく扱っています。

タンソーマンGXでは、太陽光・蓄電池や非常用電源などの災害対応設備について、使える制度の選定から申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。

参考資料

本記事の内容は2026年10月22日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。

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