
この記事では、金属加工・熱処理・めっきの工場が、工業炉や受電設備などを更新するときに使える省エネ補助金を整理します。SIIの省エネ・非化石転換補助金(令和7年度補正)で「低炭素工業炉」「変圧器」などがどう扱われるか、炉の電化や工程全体の改修で選ぶ事業区分、環境省のSHIFT事業との関係が分かります。
金属加工・めっき工場で更新の多い設備
金属加工の工場では、加熱炉・熱処理炉・溶解炉などの工業炉が燃料や電力を多く使います。プレス機械や工作機械、ダイカストマシン、圧縮空気をつくるコンプレッサ、受電設備の変圧器も更新の対象になりやすい設備です。めっき工場では、めっき槽の加温、乾燥、排気・換気、整流器などがエネルギーを使います。
SIIの設備単位型には、こうした設備のうち多くが「指定設備」として区分されています。一方で、めっきの整流器のように指定設備の区分にない設備もあり、その場合は工程全体を対象にする事業区分を検討します。
- 工業炉低炭素工業炉(加熱炉・熱処理炉・溶解炉・塗装乾燥炉)。設備単位型と電化・脱炭素燃転型の両方の対象
- 加工機械プレス機械・工作機械・ダイカストマシン。設備単位型の指定設備
- 電源・動力変圧器・産業用モータ(コンプレッサを含む)。設備単位型の指定設備
- めっき槽の加温・乾燥ボイラやヒートポンプへの更新、または工場・事業場型
- 整流器・排気など指定設備の区分になく、工場・事業場型での申請を検討
SII「令和7年度補正 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)公募要領(4次公募)」の指定設備区分より作成。
低炭素工業炉の対象と炉効率の基準
令和7年度補正の設備単位型では、指定設備の6番目が「低炭素工業炉」です。燃焼式、抵抗加熱式、誘導加熱式、その他電気加熱式の4種別があり、燃焼式では炉体、バーナやリジェネバーナなどの燃焼装置、廃熱回収装置が、誘導加熱式では炉体、誘導加熱装置、専用電源、専用変電設備が対象範囲です。
対象となる基準は「炉効率」(被加熱物が持ち去る熱量を総投入熱量で割った値)で、炉の用途と連続式・バッチ式の別に定められています。燃焼式の連続炉の基準は次のとおりです。
バッチ式は加熱炉・熱処理炉20%以上、溶解炉30%以上、塗装乾燥炉10%以上。電気加熱式は別の基準。SII公募要領 別表1より作成。
低炭素工業炉と、コンプレッサを除く産業用モータ(モータ単体、ポンプ、送風機)は、原則として製品型番が事前に公表されません。申請者が自ら基準を満たしているかを確認したうえで申請する必要があるため、メーカーから炉効率の根拠資料を早めに取り寄せておきます。
変圧器・加工機械・コンプレッサ
受電設備の変圧器は、油入変圧器とモールド変圧器が対象で、トップランナー基準(目標年度2026年度以降)に対する達成率105%以上が求められます。炉の電化などで受電設備を見直す場合は、あわせて変圧器の更新も検討できます。
プレス機械、工作機械、ダイカストマシンも指定設備の区分です。コンプレッサは、圧縮熱を回収して利用する熱回収機能付きのものがトップ性能枠の対象に含まれています。詳しくはコンプレッサー・生産設備の省エネ更新と補助金をご覧ください。
設備単位型(従来枠)は補助率1/3以内、上限1億円、下限30万円で、補助対象経費は設備費のみです。設備費は原則3者以上による価格競争の結果の最低価格が上限になり、据付工事費や配線・配管、既存設備の撤去費は対象外です。省エネ法の定期報告義務がない事業者は、SIIの様式でエネルギーの合理化に関する中長期計画を作成して提出します。省エネ率10%以上、省エネ量1kl以上、経費あたり省エネ量1kl/千万円以上のいずれかを満たす必要があります。
炉の電化と工程全体の改修
燃焼式の炉を誘導加熱炉などの電気炉に替える場合や、めっき槽の加温を重油ボイラからヒートポンプに替える場合は、電化・脱炭素燃転型が候補になります。更新の補助率は1/2以内、上限は3億円(電化する事業は5億円)です。設備費に加えて付帯設備も対象になり、中小企業者等は工事費も補助対象です。電気を使うボイラに更新する場合は、専用の受変電設備も対象範囲に入ります。
設備単位型
- 同じ方式で高効率の炉へ
- 設備費のみ
- 1/3以内・上限1億円
電化・脱炭素燃転型
- 燃焼炉から電気炉へ
- 付帯設備・工事費も対象(工事費は中小のみ)
- 1/2以内・上限3億円(電化は5億円)
工場・事業場型
- 工程・工場全体の改修
- 設計費・設備費・工事費
- 中小企業者等は1/2以内
いずれも令和7年度補正。補助率は企業規模や投資回収年数で変わります。
排熱の回収、整流器の更新、排気系統の見直しなどを組み合わせた工場全体の改修は、工場・事業場型が対象です。中小企業者等の補助率は1/2以内(投資回収年数7年未満の事業は1/3以内)です(省エネ補助金「工場・事業場型」)。
CO2の削減量を大きく見込める電化や燃料転換には、環境省のSHIFT事業もあります。令和8年度の公募は締め切られているため、次回の有無は執行団体の案内で確認します(環境省SHIFT事業とは)。
申請の進め方
- 使用量の整理炉ごとの燃料・電力と稼働時間
- 区分の選択同方式の更新か、電化か、工程全体か
- 根拠資料メーカーから炉効率の資料を取得
- 受電の確認電化なら契約電力の増加を試算
- 3者見積と申請交付決定前に契約しない
- 工事日程生産停止期間を完了期限から逆算
工業炉の入れ替えは生産の停止を伴うため、単年度事業の完了期限(原則2027年1月31日)に間に合う工程を組めるかを先に確かめます。
令和7年度補正の設備単位型の4次公募は、2026年10月5日から10月30日まで行われています。工業炉は製作期間が長いため、単年度で完了できない場合は複数年度事業の要件も確認します。制度の条件は年度ごとに変わるため、申請前に最新の公募要領を必ず確認してください。
タンソーマンGXでは、金属加工・めっき工場の設備ごとの制度選定から省エネ量の計算、申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)公募要領(4次公募)|環境共創イニシアチブ
- 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(工場・事業場型)公募要領(4次公募)|環境共創イニシアチブ
- 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)4次公募の概要|環境共創イニシアチブ
- 令和8年度「脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業(SHIFT事業)」の公募について|環境省
本記事の内容は2026年10月22日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



