
この記事では、印刷工場の設備更新で使える省エネ補助金を、印刷機(乾燥工程を含む)と空調などの建物設備に分けて整理します。中心となるSIIの「省エネ・非化石転換補助金」(令和7年度補正)で印刷機械がどう扱われているか、UV乾燥機能の要件、工場全体を改修するときの事業区分の選び方が分かります。
印刷工場のエネルギーと補助の考え方
印刷工場では、印刷機本体のモータや乾燥装置、圧縮空気をつくるコンプレッサ、紙の伸縮や色の安定のために年間を通じて動かす空調、照明、受電設備の変圧器など、多くの設備が電力や燃料を使います。補助金は「どの設備を更新するか」で使う制度と事業区分が変わるため、まず設備ごとに更新の候補を洗い出すことから始めます。
SII「令和7年度補正 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)公募要領(4次公募)」の指定設備区分より作成。
SIIの設備単位型で「印刷機械」が対象になる
経済産業省の省エネ・非化石転換補助金は、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が執行しています。このうち設備単位型は、SIIがエネルギー消費効率などの基準を定めて公表した「指定設備」へ更新する事業が対象です。令和7年度補正予算の指定設備は15区分あり、その14番目が「印刷機械」です。
公募要領の別表では、印刷機械は次の3種別に分かれています。
- 印刷機(有版):版を使う印刷機(オフセット、凸版など)。対象範囲は給紙から排紙までの印刷機本体
- デジタル枚葉印刷機:電子写真方式やインクジェット方式の産業用デジタル印刷機のうち、B2サイズ以上の枚葉機
- 連帳デジタル印刷機:産業用デジタル印刷機のうち、連続した用紙に印刷する連帳機
大判プリンターは原則として対象外ですが、短辺が1,300mm以上の用紙に対応し、UVインク、ソルベントインク、ラテックスインク、昇華インクのいずれかを使うものは対象とされています。
乾燥工程はUV乾燥機能の有無が分かれ目
乾燥工程の扱いは、この区分で特に注意が必要な点です。公募要領の備考では、印刷機(有版)のうちオフセットのBF輪転機、シールラベル印刷輪転機、菊全以上の枚葉印刷機、凸版の輪転機(フレキソ輪転機を除く)は、UV乾燥機能を有するものに限るとされています。
UV乾燥は、紫外線を当ててインキを硬化させる方式です。大型の枚葉機や輪転機を更新する場合は、検討している機種がUV乾燥機能を備え、SIIに型番登録されているかを先に確かめます。指定設備は製品の型番単位でSIIのホームページに公表されるため、印刷機メーカーや販売店に「SIIの指定設備として登録済みか」を問い合わせるのが確実です。
乾燥方式を変えると、インキや用紙の選び方、刷版や後加工の条件も変わることがあります。補助金の要件だけで機種を決めず、品質と生産性への影響も含めて比較してから申請に進みます。
なお、指定設備の「低炭素工業炉」には塗装乾燥炉の区分がありますが、印刷機に付属する乾燥装置がこの区分に当たるかは公募要領からは読み取れません。乾燥装置だけを単独で更新する場合は、SIIに確認するか、次に述べる工場・事業場型での申請を検討します。
補助率・上限と省エネ要件
令和7年度補正の設備単位型(従来枠)は、補助率1/3以内、補助金の上限は1億円、下限は30万円です。補助対象経費は設備費のみで、据付工事費や配線・配管、既存設備の撤去費は対象外です。GX要件を満たしたメーカーの設備を対象とするメーカー強化枠(補助率1/3以内、上限3億円)や、特に性能の高い設備を対象とするトップ性能枠(更新は補助率1/2以内、上限3億円)もあります。
省エネ効果は、原油換算で次のいずれかを満たす必要があります。
- 省エネ率10%以上
- 省エネ量1kl以上
- 経費あたりの省エネ量1kl/千万円以上
省エネ法の定期報告義務がない事業者は、SIIの様式でエネルギーの合理化に関する中長期計画を作成して提出することも求められます。
設備単位型
- 指定設備への更新
- 印刷機・空調・LEDなど
- 設備費のみ・1/3以内
工場・事業場型
- 工程や工場全体の改修
- 設計費・工事費も対象
- 中小企業者等は1/2以内
電化・脱炭素燃転型
- 燃料のボイラ等から電化
- ヒートポンプなど
- 更新は1/2以内
いずれも令和7年度補正。補助率は区分・企業規模・投資回収年数で変わります。
空調・照明・コンプレッサも同じ制度で
印刷工場の空調は、品質管理のために稼働時間が長くなりがちです。設備単位型の指定設備には高効率空調(業務・産業用エアコン等)、制御機能付きLED照明器具、変圧器、産業用モータが含まれており、印刷機と同じ申請でまとめて更新を計画できます。空調の進め方は空調更新に使える補助金、コンプレッサはコンプレッサー・生産設備の省エネ更新と補助金で詳しく解説しています。
乾燥工程の排熱回収や、工場全体の空調・圧縮空気系統の見直しなど、指定設備に当てはまらない改修は、設計費・工事費も対象になる工場・事業場型が候補です。
申請までの流れ
- 現状の把握既存機の稼働時間と使用電力を整理
- 型番の確認候補機種がSIIの指定設備か確認
- 3者見積同等仕様で価格を比べる
- 交付申請省エネ量を計算して申請
- 交付決定後に発注決定前の契約は対象外
- 完了・報告原則2027年1月31日までに完了
令和7年度補正の設備単位型は、4次公募が2026年10月5日から10月30日まで行われています。交付決定は12月下旬の予定で、事業は原則2027年1月31日までに完了させる必要があります。印刷機の納期が長い場合は、複数年度事業の要件も確認しておきます。制度の条件は年度ごとに変わるため、申請前に最新の公募要領を必ず確認してください。制度全体は省エネ補助金「設備単位型」をご覧ください。
タンソーマンGXでは、印刷工場の設備ごとの制度選定から省エネ量の計算、申請書類の作成、実績報告までを支援しています。詳しくは補助金支援のページをご覧ください。
参考資料
- 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)公募要領(4次公募)|環境共創イニシアチブ
- 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)4次公募の概要|環境共創イニシアチブ
- 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(工場・事業場型)公募要領(4次公募)|環境共創イニシアチブ
- 省エネ・非化石転換補助金 特設サイト(事業区分)|環境共創イニシアチブ
本記事の内容は2026年10月22日時点で公表されている資料に基づきます。最新の条件は各事務局の公募要領をご確認ください。



